2013 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹細胞移植により腫瘍部の免疫寛容を根本的に打破する免疫療法の開発
Project/Area Number |
23590384
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
青木 一教 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (60270675)
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Keywords | 免疫抑制性環境 / 制御性T細胞 / 造血幹細胞移植 / 低酸素 / 遺伝子導入 / プロモーター |
Research Abstract |
我々は、自家造血幹細胞移植による新鮮な免疫系の再構築により、抗腫瘍効果を発揮できることを明らかとしてきた。しかし、腫瘍の免疫抑制環境により、抗腫瘍効果はやがて減弱する。そこで、本研究では、造血幹細胞を遺伝子工学的に改変することにより、腫瘍部のみで免疫抑制性環境を根本的に打破し、強力な腫瘍免疫を誘導する新規免疫治療戦略の開発を、次の3ステップで行った。 まず、①H23年度は、造血幹細胞移植後の腫瘍部における制御性T細胞(Treg)の動態を解析した。造血幹細胞移植後に、腫瘍内で特徴的にTregが減少することにより腫瘍抑制環境を解除できること、再びTregが集簇して免疫抑制環境を形成することを明らかとした。②H24年度は低酸素状態などの腫瘍に特徴的な環境下で、Treg特異的に遺伝子を発現することのできる低酸素誘導Treg特異的遺伝子発現システムを開発した。具体的には、Treg特異的な転写因子であるFoxp3プロモーターの上流に低酸素応答配列(Hypoxia responsive element)を配置し、さらに正常酸素下で遺伝子発現を抑制する配列(Hypoxia-regulated silencer element)を組み込んだ新たなプロモーターを構築した。③H25年度には、本プロモーターをFoxp3発現陽性EL4細胞に導入すると、正常酸素状態では外来遺伝子を発現しないが、低酸素状態になるとFoxp3依存的に遺伝子の発現を誘導することを確認した。CT26などのFoxp3非発現細胞においては、遺伝子の発現は認められなかった。ついで、本プロモーターをレトロウイルスベクターにより造血幹細胞に遺伝子導入し、マウスに移入することにより、生体内で導入細胞から制御性T細胞が分化することを確かめた。本研究により、腫瘍部のみでTreg特異的を除去し腫瘍免疫を誘導する新たな治療法の基盤を確立した。
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