2011 Fiscal Year Research-status Report
家族性前頭側頭型認知症におけるエンドソーム関連蛋白CHMP2B機能異常の研究
Project/Area Number |
23590390
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
豊島 靖子 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (20334675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池内 健 新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (20372469)
高橋 均 新潟大学, 脳研究所, 教授 (90206839)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 前頭側頭型認知症 / ユビキチン陽性封入体 / CHMP2B |
Research Abstract |
本年度の計画1:CHMP2Bの遺伝子異常の検索について。CHMP2B のエクソン1~6まで、splicing junction を含む形でプライマーを設定し、同意のもと採取した血液より抽出したDNAを用いてダイレクトシークエンスをおこなった結果、ゲノムレベルの変異は認められなかった。そこで脳組織からm-RNAを抽出して解析したところ、スプライシングバリアントの存在が明らかになった。このバリアントはコントロールにも微量ながら存在するので、これが病的な意味を持つのかを、このバリアントに対する抗体を作製して検討した。Western blottingでは、コントロールと本例では明らかにバンドパターンが異なっており、何らかの病的意義をもつことが考えられる。計画2:CHMP2Bの翻訳後修飾の検討:先行して行ったCHMP2Bに対するWestern blottingでは、sarcosil-不溶分画102kDの特異的バンドを認めた。このバンドはCHMP2Bの理論値(27kD)よりもはるかに大きく、凝集する際に重合していることや、翻訳後に糖鎖の付加などの修飾を受けている可能性を検討した。このバンドは糖鎖に対する抗体では認識されず、検体を脱リン酸化後にWestern blottingを行ったても認識されないため、このような修飾は受けていたいないことが考えられた計画3:病理組織学的検討:デンマークの家系の検索では海馬歯状回の顆粒神経細胞の胞体にユビキチン陽性の封入体が多数出現し、大脳皮質では前頭葉と側頭葉の皮質浅層の神経細胞に球形の封入体を多く認めたと記載がある。我々の症例では、前頭葉に非常に強い変性が認められ、皮質深層の錐体神経細胞にユビキチン陽性の封入体が認められた。これらはTDP-43抗体では認識されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画1:CHMP2Bの遺伝子異常の検索について。CHMP2B のエクソン1~6まで、splicing junction を含む形でプライマーを設定し、同意のもと採取した血液より抽出したDNAを用いてダイレクトシークエンスをおこなった結果、ゲノムレベルの変異は認められなかった。そこで脳組織からm-RNAを抽出して解析したところ、スプライシングバリアントの存在が明らかになった。この点は新しい知見なので、達成度は十分と考える。計画2:CHMP2Bの翻訳後修飾の検討:先行して行ったCHMP2Bに対するWestern blottingでは、sarcosil-不溶分画102kDの特異的バンドを認めた。このバンドは糖鎖に対する抗体では認識されず、検体を脱リン酸化後にWestern blottingを行ったても認識されないため、このような修飾は受けていたいないことが考えられた。この結果から、当初の計画は達成されていると考える。計画3:病理組織学的検討:デンマークの家系の検索では海馬歯状回の顆粒神経細胞の胞体にユビキチン陽性の封入体が多数出現し、大脳皮質では前頭葉と側頭葉の皮質浅層の神経細胞に球形の封入体を多く認めたと記載がある。我々の症例では、前頭葉に非常に強い変性が認められ、皮質深層の錐体神経細胞にユビキチン陽性の封入体が認められた。これらはTDP-43抗体では認識されなかった。病理組織学的に他の診断がついていない症例を調べる必要があるが、この点がまだ達成されていないので、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
CHMP2Bのスプライシングバリアントに対する抗体で組織の免疫染色を行い、封入体が染色されるかどうかについて検討する。このバリアントは通常のCHMP2Bの機能とは異なる働きをもつことが考えられるため、バリアントCHMP2Bを株化細胞へ導入して機能を調べる。バリアントCHMP2Bと野生株CHMP2Bをクローニングする。双方のN-末側にc-myc tagを付加してベクターpLNCX2 (BD Bioscience)に導入し、construct DNAを作製する。神経系の細胞での発現を調べるため、PC12 細胞にtransfection する。発現した細胞に凝集体の形成などが起こるかを観察する。また、細胞死が起こるかを経時的に観察する。本症例では、エンドソーム移送機構関連蛋白の機能異常により、エンドソーム自体が不要蛋白として処理される途上にあることが考えられる。本症例で認められた封入体がLC3などのオートファジー関連蛋白に対する抗体で認識されるかを検討する。また、バリアントCHMP2B蛋白を発現する細胞を飢餓状態に置き、オートファジーが正常に行われるかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に必要な分子生物学的手法に使用する試薬、機材、キット類などの消耗品を購入する。
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