2012 Fiscal Year Research-status Report
カロリ病+先天性肝線維症の新規薬物療法の探索-動物モデルPCKラットを用いて
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23590392
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 保則 金沢大学, 医学系, 講師 (30324073)
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Keywords | 人体病理学 / 肝臓 / 胆管細胞 / 肝線維嚢胞性疾患 |
Research Abstract |
本年度は,カロリ病+先天性肝線維症の新たな薬物療法を見出すことを研究目的とし,その動物モデルとして確立されているpolycystic kidney(PCK)ラットを用いた検討を継続して行った.カロリ病+先天性肝線維症は常染色体劣性多発嚢胞腎の肝胆管病変としても知られているが,多発性嚢胞腎では嚢胞被覆上皮でのPI3K-Akt-mTORを介した細胞内シグナル伝達機構の亢進が病態形成に関与している.カロリ病でみられる肝内胆管の嚢状拡張と多発性嚢胞腎の腎嚢胞形成の機序には共通点が多いことから,今年度はPI3KとmTORC1+C2の阻害剤であるNVP-BEZ235を用い,PCKラットの培養胆管細胞に及ぼす効果を検討した.単層培養の条件下でNVP-BEZ235はPCKラット培養胆管細胞の細胞増殖を濃度依存性に抑制し,ゲルマトリックスを用いた3次元培養の条件下でもNVP-BEZ235は培養胆管細胞の嚢胞(spheroid)形成を有意に抑制した, PCKラット培養胆管細胞ではNVP-BEZ235によりオートファジーが誘導され,逆にアポトーシスは抑制さた.これに関連して,NVP-BEZ235は培養胆管細胞のpAkt, pS6RP, p4E-BP1, cleaved caspase 3の発現を抑制し,Bcl-2の発現を誘導した.LC3 siRNAおよび3-methyladenineは,NVP-BEZ235の培養胆管細胞に対する増殖抑制効果を軽減した.さらにLC3 siRNAは3次元培養条件下でNVP-BEZ235による嚢胞形成抑制効果を軽減した.以上の結果から, NVP-BEZ235によるmulti-targetingな細胞内シグナル伝達の阻害はカロリ病+先天性肝線維症の新たな治療の選択肢の一つとなる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までは,mTORC1の阻害剤としてrapamycinとeverolimus,mTORC1+C2の阻害剤としてPP242を使用し,PCKラットの培養胆管細胞に対する効果を検討した.その結果,mTORC1阻害剤(rapamycin,everolimus)より,mTORC1とmTORC2の両方を阻害する効果を有するPP242がPCKラット培養胆管細胞に対してより強力な増殖抑制効果を示すことが明らかとなった.この結果より,mTORC1+C2に加えてその上流に位置するPI3Kも阻害する効果を有するNVP-BEZ235は,さらに強い増殖抑制効果を示すと仮定して本年度の研究を遂行した.結果としてほぼ期待される成績が得られた.当初の予定はおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
NVP-BEZ235はPCKラット培養胆管細胞にオートファジーを誘導し,アポトーシスは抑制されたが,今後はオートファジー誘導,アポトーシス抑制の細胞内機構をさらに検討したい.また,NVP-BEZ235以外にも細胞増殖抑制効果のある薬剤を見出したい.最終的に,培養系での検討で最も効果の高い薬剤をPCKラットにin vivoで投与し,胆管の嚢状拡張を阻害する効果や肝線維化に対する影響を明らかにし,治療薬としての可能性を検証したいと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は主に細胞培養関連用品や薬剤など消耗品の購入に使用する.特にPCKラットに薬剤をin vivoで投与する場合,大容量が必要となることが予測され,研究費に占める薬剤購入費の割合が増加すると思われる.また,現在,これまでに得られた成績を英文論文として投稿中であるが,論文出版に係る経費も研究費から支出する予定である.
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Research Products
(1 results)