2012 Fiscal Year Research-status Report
胆管癌における胆管レベルによる発癌・進展機構の違い:胆汁酸受容体と糖代謝に関して
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23590399
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
相島 慎一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70346774)
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Keywords | 肝内胆管癌 / ROBO1 / SLIT / GLUT / transporter / 予後因子 / 浸潤能 |
Research Abstract |
Slit/ROBO1(Round about1)シグナルの肝内胆管癌における役割 ROBO1はSlitシグナルを受け、腫瘍の血管新生や増殖に関わる。肝内胆管癌においてROBO1とSlit2の発現を免疫組織化学的に検討したところ、1)ROBO1発現低下は腫瘍径大、増殖活性高値、Slit2低下と相関し、ROBO1陰性群は予後不良であった。2)またROBO1発現は原発巣よりもリンパ節巣で低下していた。3)肝内胆管癌細胞株RBEにROBO1強制発現させると、増殖能と遊走能が抑制され、Huh28においてROBO1発現抑制するとわずかに増殖能と遊走能が促進された。以上よりROBO1発現減弱は胆管癌の浸潤能に関与する可能性が示唆された。 肝内胆管癌におけるGlucose transporter(GLUT)役割 Glucose transporter(GLUT)は14種類が同定されており、臓器特異的に発現している。食道癌、胃癌、大腸癌、乳癌、肝細胞癌、膵癌、腎癌、卵巣癌、子宮癌などでGLUT-1の発現が増加しており、予後との相関に関する報告もある。肝内胆管癌およびBilIN病変におけるGLUT-1、GLUT-2、HIF-1αの発現評価および臨床病理学的因子や予後との相関の評価を行った。肝内胆管癌症例(149症例)、BilIN症例(40例)に対して、GLUT-1、GLUT-2、HIF-1α免疫染色を行った結果、1) 胆管癌の壊死の程度や浸潤能、分化度など腫瘍の悪性度とGLUT-1の発現に正の相関を認めた。2)またGLUT-1とHIF1-αの発現に正の相関を認め、3)GLUT-1の発現は予後不良因子となりうる可能性が示唆された。GLUT-2発現はBilIN-2/3病変で高く(感度45%、特異度100%)、大型胆管に由来する胆管癌、非腫瘤形成型で高く、神経周囲浸潤とリンパ節転移と相関を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画にあった、発癌における胆汁酸および胆汁酸受容体Farnesoid X Receptor (FXR)の役割については、予測に反する結果であったが、そのほかのテーマであるSLIT-ROBO1シグナルにおけるROBO1発現の低下とGlucose transporterの発現上昇の意義については、研究成果をまとめることができている。前者については論文にまとめ、後者は国内の学会で発表し、現在論文にまとめている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
肝外胆管がん、胆嚢癌におけるNrf2 (Nuclear factor (erythroid-derived 2)-like 2) ,Nqo1 (NAD(P)H:quinone oxidoreductase 1),HO-1(Heme oxygenase-1)の発現と薬剤耐性、生物学的予後の検討 【対象】肝外胆管癌(60例)、胆嚢癌(76例)と診断された症例。前癌病変である原発性硬化性胆管炎(20例) ,胆嚢腺腫(9例), 胆嚢炎(慢性胆嚢炎7例、急性胆嚢炎2例)などの症例。 【方法】対象病変の切除切片において、Nrf2、Nqo1、Ho-1の免疫染色を行い、発癌機序との関連、発現による生命予後との相関関係を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
肝内胆管癌細胞株を用い、Western blot でGLUT-1蛋白発現を確認した後、GLUT1タンパクをSiRNAを用いてノックダウンし、癌細胞の浸潤、運動能の変化を解析する。 肝内胆管癌で得られた知見を胆嚢癌、肝外胆管癌においても確認し、さらに細胞株による検討を加えていく。また膵臓がんと胆管がんとの比較についても計画中である。
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