2012 Fiscal Year Research-status Report
甲状腺乳頭癌の細胞異型および組織構築の形成にはチューブリンが主役となる
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23590412
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
村田 晋一 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20229991)
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Keywords | 甲状腺 / 乳頭癌 / 偽核内封入体 / 核溝 / tubulin / 核膜 |
Research Abstract |
我々は,悪性腫瘍における細胞異型や構造異型が形成される分子病理学的背景について研究を行ってきた.本研究では,甲状腺乳頭癌の核異型の特徴である核溝や核内封入体の形成において,チューブリン(tubulin)が主たる役割を担っていることを明らかにすることを目的としている. 24年度の研究では,23年度の研究結果を踏まえ,甲状腺乳頭癌由来培養細胞(KTC-1)に対して,siRNA法で様々核膜蛋白の発現抑制し,核溝・核内封入体形成がどのように変化するかを観察した.その結果,核膜蛋白の中で,Emerinの抑制が核溝・核内封入体の形成を抑制した.よって,KTC-1の培養細胞では,核溝や核内封入体の形成に,γ-tubulin-α/βtubulin-Emerinの接合性が関係することが示唆された.次に,この現象が実際のヒト甲状腺乳頭癌で起こっているかを検討した.残念ながら,組織検体ではα/βtubulinが,細胞質内にびまん性に染色され,線維構造を観察することが出来なかった.一方,γ-tubulinは核膜からやや離れた細胞質内に1つのドット(点)構造物として観察することができた.乳頭癌組織から得た単離細胞の一部には核内封入体内にγ-tubulinを認めた.さらに,乳頭癌組織におけるEmerin,Lamina-associated polypeptide 2 (LAP2),Barrier-to-autointegration factor (BAF)などの核膜関連蛋白の解析では,核膜上での不均等発現や一部の細胞で発現の消失が認められた. 以上の結果は,核溝・核内封入体の形成機序は,培養細胞とヒト甲状腺乳頭癌組織の間で,若干の違いがあるものの,γ-tubulin-α/βtubulin-Emerinの接合性が関与している可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
24年2月に埼玉医科大学より和歌山県立医科大学に移籍となり,機材のみならず,ソフト面や人材面での整備に時間が必要であったため,研究の進行に遅れが生じている.幸い,機材の新たな購入も順調に進み,ようやく環境が整いつつある.また,学内の中央研究室や共同研究を行う講座からの協力を得ており,研究の遅れを取り戻したいと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,甲状腺乳頭癌由来培養細胞を用いた基礎的研究とヒト甲状腺乳頭癌組織を用いた臨床病理的研究から成り立っている.基礎的研究では,核溝・核内封入体形成にγ-tubulin-α/βtubulin-Emerinの接合性が関係することが示唆された.近年,α/βtubulinとEmerinが結合するという報告があり,我々の研究結果をサポートするものと考えられる.一方,臨床病理的研究では,ヒト乳頭癌組織における核溝・核内封入体とγ-tubulinとの位置関係には,培養細胞にみられたような関係が全ての細胞において必ずしも認められるわけではなく,培養細胞とヒト乳頭癌組織における核溝・核内封入体の形成機序に違いがある可能性がある.しかしながら,ヒト乳頭癌組織におけるγ-tubulinの細胞内位置は濾胞性病変と明らかなに異なっており,γ-tubulinが核溝・核内封入体の形成に関与している可能性が高い.今後,培養細胞を用いた基礎的研究およびヒト甲状腺組織を用いた臨床病理的研究を比較検討しつつ,研究を詰甲状腺乳頭癌の核溝・核内封入体の形成機序にγ-tubulin-α/βtubulin-Emerinの接合性が関与していることを明らかにしたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述したように24年に埼玉医科大学より和歌山県立医科大学に移籍となったため,研究の遅れがあり,24年度に予定され,未完了の研究を追加する.具体的には,以下の過程に従う. 1) ヒト甲状腺癌手術材料を使った臨床病理的研究を完了させる. ①甲状腺の濾胞性腫瘍と乳頭癌におけるγ-tubulinの発現,特に発現部位の違いを検討する.②甲状腺の濾胞性病変と乳頭癌におけるEmerin, LAP2,BAFなどの核膜関連蛋白の発現の違いを検討する. 2) 基礎的研究および臨床病理的研究を総括し,不足する研究を行う. 3) 本研究を論文とし,英文誌に投稿する. というステップで本研究を完結させたいと考えている.
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