2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590419
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
岩崎 宏 福岡大学, 医学部, 教授 (90101170)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 骨・軟部腫瘍 / 腫瘍幹細胞 / 肉腫 |
Research Abstract |
ヒト軟部組織には多種類の肉腫が発生するが,起源細胞の同定に関する研究はきわめて不十分である。本研究では軟部肉腫の起源を明らかにし,肉腫の診断・治療法の確立に有用なデータを得ることを目的とする。本年度の研究実績は以下のごとくである。 (1)ヒト軟部肉腫の病理学的検討として、多くの軟部腫瘍の組織標本について,免疫組織化学的に種々の間葉系分化マーカーの発現を検討した。特に分化型脂肪肉腫では,CDK4,MDM2およびP16の発現が診断に有用なマーカーになり得ることを確認した。 (2)ヒト軟部肉腫の培養細胞系の分析に関しては、当研究室で確立された多くの肉腫細胞系について,染色体・遺伝子分析を施行した。その結果,脱分化型脂肪肉腫と一部の悪性線維性組織球腫(MFH)には共通点(複雑な染色体異常とCDK4,MDM2の発現)があり,分化型脂肪肉腫から脱分化型脂肪肉腫が生じ,さらにMFHへと変化する一連の進展の可能性が考えられた。 (3)肉腫発がん実験として、GFP発現グリーンマウスから採取した骨髄細胞を,骨髄抑制したマウス (C57BL/6)の尾静脈から注射して移植し,骨髄が GFP発現細胞で置換された状態の C57BL/6マウスの背部皮下に 3-メチルコラントレン(3-MC)を週1回ずつ,計10回投与すると、投与終了から数週間で局所の肉芽組織の小血管周囲に腫大した間葉系細胞が出現し,さらに16~20週で多形型MFH類似の高悪性度の肉腫が発生した.腫瘍を形成した12匹のマウスのうち,3匹では,腫瘍細胞がGFPを発現したが,残り9匹ではGFPを発現しなかった。これらの結果から,肉腫の発生には骨髄由来間葉系幹細胞(bone marrow-derived MSC)ないし前駆細胞が腫瘍化する経路と局所の間葉系細胞 (resident MSC) が腫瘍化する経路の二つの可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究に関しては、上記のごとく,(1)ヒト軟部肉腫の病理学的検討,(2)ヒト軟部肉腫の培養細胞系の分析,および (3)肉腫発がん実験について,当初の計画はおおむね達成されている。 これらの研究結果から,一部の肉腫の発生には骨髄由来間葉系幹細胞(bone marrow-derived MSC)の関与が考えられたが,局所の間葉系細胞 (resident MSC) が腫瘍化する経路も存在する可能性もあると思われる。また,脱分化型脂肪肉腫と一部の悪性線維性組織球腫(MFH)には共通点(複雑な染色体異常とCDK4,MDM2の発現)があり,分化型脂肪肉腫から脱分化型脂肪肉腫が生じ,さらにMFHへと変化する一連の進展の可能性が考えられた。本研究では,従来不明であったMFHの組織起源を明らかにする上で,有用なデータが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)肉腫の起源をさらに明らかにするために,骨髄由来間葉系幹細胞の in vitro発がん実験として,グリーンマウスから骨髄細胞を採取し,培養フラスコ壁面に接着する間葉系幹細胞( MSC)を回収し, 3-MCに 1週間暴露した後,さらに培養をつづけてトランスフォームした細胞を得る。この細胞を通常培地で培養し,増殖曲線を計測して,増殖能を調べ、また軟寒天培地で培養し,コロニー形成能を算定し,トランスフォームを確認する。幹細胞マーカーの発現の有無をトランスフォームした細胞について,免疫染色で確認する。コントロールとして,正常の骨髄細胞およびトランスフォーム前の骨髄由来間葉系幹細胞についても同様の検索を行う。トランスフォームした細胞をヌードマウスの皮下へ移植し,細胞の生着および増殖能について検討する。 (2)ヒト軟部肉腫の病理学的検討について,さらに例数を増やして免疫組織化学的検索を行う。 (3)ヒト軟部肉腫の培養細胞系の分析については,G-バンド法とともにfluorescence in situ hybridization (FISH)およびmulticolor FISH (M-FISH)を施行し,染色体異常を詳しく分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究経費は主として消耗品費に当てられる。ヒト軟部腫瘍の病理学的検討のためには,組織標本作製,免疫組織化学的検索に必要な試薬や抗体を必要とする。 細胞培養のためには培地等の試薬とウシ胎児血清を要する。幹細胞マーカーおよび間葉系細胞マーカーの発現を検索のための免疫組織化学用の抗体・試薬を要する。遺伝子分析にはRT-PCR, FISH, 染色体分析用試薬を必要とする。GFP発現グリーンマウスの骨髄細胞移植と発がん実験のためには,グリーンマウス,通常マウス(C57BL/6),骨髄抑制のための5-FUおよび3-メチルコラントレン等の試薬を要する。 またこれらの実験のためにガラス器具を要する.その他,研究成果の発表のための論文投稿料や別刷印刷代等を要する。 このように経費の大部分は,実際の実験に必要な消耗品費に当てられており,積算根拠は妥当なものである。
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Research Products
(9 results)