Project/Area Number |
23590423
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
吉岡 年明 秋田大学, 医学部, 助教 (80302264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 泰文 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90323138)
山本 洋平 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70400512)
榎本 克彦 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20151988)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 肝転移 / Heregulin / 肺転移 / 分子標的療法 |
Research Abstract |
大腸癌において重要な予後因子である肝転移のメカニズムの解明は, その治療法を探る上で重要である. 本研究では, 我々が報告した, SCIDマウスを用いた実験的大腸癌肝転移の際に肝細胞が産生するheregulin(HRG)に着目して, 以下の3点を明らかにすることを目的とする. 1) 大腸癌肝転移において, 肝細胞がHRGを産生するメカニズムについて解明する. 2) 大腸癌肝転移巣に対して(HRGのレセプターである)erbB3やerbB2を介した分子標的療法の検討を行う. 3) 大腸癌における肝転移および肺転移特異的遺伝子・分子を同定し, そのメカニズムについて解明する. 今年度は主に目的1)に対して研究を進展させた. ヒトでのHRG産生を確認するために, 2002年から2012年までに当院で肝転移巣を切除された37例の手術検体を用いて, 肝転移巣周囲の肝細胞におけるHRGの発現を免疫組織化学染色にて調べ, 31例(84 %)に発現を確認し, ヒトでもマウスと同様に, HRGが肝転移に関わっている可能性があることを示した (第100回日本病理学会総会にて発表). また肝転移した癌細胞が, 周囲の肝細胞に傷害をおこしてHRGを産生させている可能性を検討するために,ラットにジメチルニトロソアミンを投与して肝傷害を引き起こし, HRG発現をmRNAの定量性RT-PCRにて, また免疫組織化学染色にて調べ, 傷害を受けた肝細胞の周囲の肝細胞に, HRG産生が有意に上昇することを確認した (第70回日本癌学会総会にて発表). これらの結果から, 大腸癌肝転移の際に, 転移した癌細胞が何らかの傷害を転移巣周囲の肝細胞に引き起こし, 傷害を受けた肝細胞の周囲の肝細胞からHRGが産生されること. 転移した癌細胞はこのHRGを利用して転移巣で進展している可能性があることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の目的1)大腸癌肝転移において, 肝細胞がHRGを産生するメカニズムについて解明することに関しては, ヒトの肝転移巣の免疫染組織化学染色やラットの傷害肝の実験から, 肝転移した癌細胞が, 何らかの傷害を転移巣周囲の肝細胞に引き起こし, 傷害を受けた肝細胞の周囲の肝細胞からHRGが産生されることが判明し, HRG産生のメカニズムの一端が明らかになった. これらの新たな知見は, 2度の全国学会で報告することができた. 今年度に実施を予定していた高肝転移大腸癌細胞と親株細胞のDNAマイクロアレイでの検討は, 次年度に延期して行なうことになった. この点以外では, 平成23年度に予定されていた目的1)のための実験計画はほぼ達成したと考える. 研究の目的2) 大腸癌肝転移巣に対して(HRGのレセプターである)erbB3やerbB2を介した分子標的療法の検討を行うことに関しては, 現在分子標的薬が入手するのを待機中であり, 大きな進展はない. 研究の目的3) 大腸癌における肝転移および肺転移特異的遺伝子・分子を同定し, そのメカニズムについて解明することに関しては, 遺伝子・分子の検索に必要な, 高肺転移細胞を作製する実験を継続中であり, 予定通り平成24年度中の細胞樹立をめざしている. 以上の結果からは, 研究の目的の達成度はやや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基に以下の検討を行う. 研究の目的1)の解明のため施行したラット肝傷害モデルでの実験結果から, HRGが予定していた時期よりも早く産生されていることが判明したため, 実験計画の変更が必要になり約3ヶ月の追加実験を要した. そのため, 今年度に予定していた高肝転移大腸癌細胞と親株細胞のDNAマイクロアレイでの検討は, 次年度に延期され, 使用する予算も繰り越された. 次年度では, この検討と解析を進め, HRG産生に関る可能性のある遺伝子に関しては, 分子・蛋白レベルまで検討する. マウス初代培養肝細胞を用いて, 候補の遺伝子・分子については, cDNAを導入し高発現させ, またshRNAにより発現を抑制させて, HRG産生への影響を確かめる. また傷害肝モデルや部分肝切除モデルを用いた検討も引き続き行なう. 研究の目的2)については, 分子標的薬を入手しだい, 高肝転移細胞LS-LM6に対する効果をin vitroで確かめ, 効果が確認された場合は, SCIDマウスを用いて, in vivoにおける肝転移抑制効果とそのメカニズムを検討する. 研究の目的3)に関しては, 高肺転移ヒト大腸癌細胞の作製を今年度より継続して行い, 次年度中の細胞の樹立をはかる. また樹立した細胞と親株細胞を用いて, DNAマイクロアレイにより遺伝子レベルでの発現の違いを検索し, 大腸癌の肺転移に特異的な遺伝子・分子の候補を検討する. 高肝転移細胞と親株細胞とのDNAマイクロアレイの結果も参考にして, 大腸癌の肝転移および肺転移に特異的な遺伝子・分子の候補を探る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の目的1)のための実験に関して, 次年度に延期した高肝転移大腸癌細胞と親株細胞のDNAマイクロアレイでの検討と解析は, 繰り越された予算をあてて行なう. HRG産生に関わる可能性のある分子については, マウス初代培養肝細胞に対して, 遺伝子導入により強制発現させ, またshRNAにより発現を抑制し, HRG産生への影響を確かめる. そのため, マウス購入費用とともに, cDNA作製またshRNA作製のための費用が必要である. またラット傷害肝モデルや部分肝切除モデルを行なうためのラット購入費用も必要である. 研究の目的2)のため, はじめにin vitroで実験を行い, 効果が確認された場合は, SCIDマウスを用いて, in vivoにおける肝転移抑制効果とそのメカニズムを検討するため, SCIDマウス購入の費用が必要である. 研究の目的3)のため, SCIDマウスを用いた高肺転移ヒト大腸癌細胞の作製を今年度より継続して行い, 次年度中の細胞の樹立をはかる. また樹立した高肺転移細胞と親株細胞を用いてDNAマイクロアレイを行い, 大腸癌の肺転移に特異的な遺伝子・分子の候補を検討する. そのため, SCIDマウス購入の費用とDNAマイクロアレイを施行し解析するための費用を予定している. また目的1), 2), 3)のための研究を行なう上で必要な, RT-PCR用プライマーや抗体などの分子生物学的実験のための試薬購入の費用も予定している.
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