2012 Fiscal Year Research-status Report
悪性胸膜中皮腫の進展・浸潤メカニズムの解析:病理診断への応用と新規治療法の開発
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23590438
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
辻村 亨 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20227408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥井 郁子 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (70207661)
佐藤 鮎子 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (20419823)
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Keywords | 悪性胸膜中皮腫 / Polycomb遺伝子群 / EZH2 |
Research Abstract |
Polycomb 遺伝子群(PcG)はクロマチン構造を変化させ、遺伝子の発現を抑制する遺伝子群であり、polycomb repressive complex (PRC)を形成して機能する。PRC2の構成分子であるenhancer of zeste homolog(EZH2)は、ヒストンH3のメチル化を促進して様々な遺伝子の発現を抑制する。前立腺癌では、EZH2の過剰発現が転移・進展に関与することが報告されている。 悪性胸膜中皮腫の発生や進展・浸潤メカニズムを解明する目的で、我々が樹立した悪性中皮腫細胞株や培養中皮細胞を用いて中皮腫細胞と中皮細胞の遺伝子発現プロファイルを比較し、悪性中皮腫におけるPcGの発現について検討した。その結果、多くの中皮腫細胞では中皮細胞に比べて、EZH2の発現が増強していることがわかった。また、病理組織標本を用いて、悪性胸膜中皮腫および反応性中皮におけるEZH2の発現を免疫組織化学で調べると、多くの悪性胸膜中皮腫の症例でEZH2の発現が亢進していた。 EZH2は悪性中皮腫と反応性中皮との鑑別に有用なマーカーになると考えられる。また、EZH2は悪性胸膜中皮腫の発生や進展・浸潤に関与していると考えられ、EZH2を標的にした新規治療法の開発が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度、肉腫型中皮腫では上皮型中皮腫に比べて、E-cadherin (CDH1)の発現が有意に低下し、bHLH型転写因子であるtwist1の発現が増強していることを見出し、悪性中皮腫の組織像(上皮型或いは肉腫型)に上皮間葉転換が関与することを示した。平成24年度、悪性胸膜中皮腫では中皮細胞に比べて、EZH2の発現が亢進していることを見出した。EZH2は、癌抑制遺伝子として機能するp16INK4a遺伝子の転写を抑制することから、EZH2の高発現が悪性胸膜中皮腫の発生や増殖に重要な役割を果たしている可能性がある。また、twist1を過剰発現させるとEZH2の発現が増強することから、肉腫型中皮腫で高発現するtwist1がEZH2を介して細胞増殖を促し、予後を不良にしている可能性がある。このように悪性胸膜中皮腫の発生や進展・浸潤メカニズムを紐解く知見が見出されている。
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Strategy for Future Research Activity |
EZH2を高発現する中皮腫細胞にshRNA(或いはsiRNA)を導入してEZH2の発現をノックダウンし、その細胞における増殖能やアポトーシスを調べる。また、EZH2の下流シグナル伝達経路に存在する分子の発現や活性化、遺伝子の発現(転写)を調べ、EZH2を介した悪性胸膜中皮腫の増殖機構について検討する。twist1を高発現する中皮腫細胞についてもshRNA(或いはsiRNA)を導入してtwist1の発現をノックダウンし、その細胞における増殖能やアポトーシスを調べる。また、twist1ノックダウン細胞におけるEZH2の発現を調べ、twist1とEZH2の分子間作用について検証する。更に、同所移植モデルにEZH2やtwist1のshRNA(或いはsiRNA)を導入して、中皮腫細胞の増殖能および進展・浸潤能について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養のための試薬、遺伝子の発現および機能解析のための試薬、蛋白質の発現および機能解析のための試薬、移植用のマウスなどの購入に使用する。
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Research Products
(5 results)