2011 Fiscal Year Research-status Report
血液脳関門形成血管内皮細胞におけるタイト結合構成分子クローディン5の発現制御解析
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23590447
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
崔 丹 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40346549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 栄二 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30232177)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / 低酸素 / タイト結合 / クローディン5 |
Research Abstract |
神経組織の血管バリアー機能は神経細胞の正常な機能に必須であり、その破綻は種々の神経疾患の原因となる。これまで我々は、血管バリアー機能が、脳血管内皮細胞にあるclaudin-5の発現に依存すること、claudin-5の発現が酸素濃度環境に依存すること、その局在調節にubiquitin-proteasome系とともにMMPなどのmetalloproteinase活性が関与することを示す実験結果を得ている。但し、metalloproteinase遺伝子ファミリーに属する分子は数が多く、claudin-5の発現を制御するファミリーメンバーは特定されていない。本年度は、低酸素下におけるclaudin-5発現・細胞内局在に関わるmetalloproteinase分子の特定を試みた。 実験系としてはマウス脳血管内皮細胞株bEND.3を使用した。まず、bEND.3に発現するmetalloproteinase遺伝子ファミリーメンバーとして9分子を見出し、claudin-5の発現を制御する候補分子とした。そして、それぞれ候補分子のsiRNA (small interfering RNA)を作製し、bEND.3に導入した。siRNAを導入した細胞に遺伝子の抑制効果を確認したうえで、claudin-5の発現を確認した。結果として、候補分子中の2分子がclaudin-5発現を酸素濃度依存性制御することが明らかになった。さらに、bEND.3 細胞層の電気抵抗を測定した結果、低酸素刺激による血管バリアー機能の破綻がこれらの分子に対するsiRNA導入により抑制されることがわかった。 血管内皮細胞におけるclaudin-5発現調節機構を解析することは、神経系血管バリアー機能の制御機構の一端を解明することにつながる。本実験にて得られた成果をもとに、神経系疾患の病態解明、新規治療法の開発を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画通り、血管内皮細胞の細胞膜へのclaudin-5発現・局在調節に関与するmetalloproteinaseの特定を行い、次のような新たな結果を得た。1.血管内皮細胞株bEND.3において、metalloproteinase遺伝子ファミリーに属する9種類の分子が発現していることが示された。2.この中の2分子が低酸素刺激による細胞膜からのclaudin-5消失及びバリアー機能の破綻に関与することがin vitro系において示された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果を踏まえ、in vitroの実験で特定された2候補分子について、in vivoにおける効果を確認し、成体の神経系血管バリアー機能制御におけるmetalloproteinase活性の重要性につき検索する。 酸素濃度依存性claudin-5 発現制御機構について次の解析を行う。1.低酸素濃度下に飼育したマウスの網膜組織の低酸素代謝状態の解析:マウスを正常酸素濃度下あるいは低酸素濃度(酸素濃度:7-9%)下に2日間飼育する。その後、Piomonidazole hydrochlorideによるマウスの低酸素状態を評価する。2.血管透過性の評価 FITC-dextran (3kD) 、およびHoechst H33258(534D) をトレーサーとし、網膜血管透過性を評価する。1).マウスを正常酸素濃度下あるいは低酸素濃度下に2日間飼育する。2日後、FITC-dextranおよびHoechst H33258を静脈内投与し、その後、網膜伸展標本を作製する。2).目的のmetalloproteinase siRNAをマウスの眼内に投与後、正常酸素濃度下あるいは低酸素濃度下に2日間飼育する。2日後に1).と同様の解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.生化学・分子生物学用試薬などの消耗品に使用する。 2.マウスの飼育に使用する。 3.研究成果の発表、論文の投稿に使用する。
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