2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590457
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
旦部 幸博 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50283560)
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Keywords | 癌抑制遺伝子 / エネルギー代謝 |
Research Abstract |
a) 野生型MEFとDrs ノックアウト(KO) MEFを通常条件で培養したときのエネルギー代謝系の主要代謝産物の変化について、経時的にメタボローム解析を行った。その結果、培地pH等の変化がほとんど見られない培養後1日目の段階で既に、両細胞では細胞内代謝産物の量に違いが認められた。KO MEFでは解糖系およびペントースリン酸経路の多くの代謝産物が増加していたが、TCA回路の代謝産物には差が認められなかった。この結果からDrs KO MEFではミトコンドリア機能にはほとんど異常がないが、解糖系が有意に亢進しており、ワールブルグ効果様の代謝シフトが生じていることが示唆された。この現象はLCT1癌細胞でも同様であった。またKO MEFにdrs遺伝子を再導入すると、この代謝シフトの変化が消失したことから、Drsが細胞のエネルギー代謝を調節していることが明らかになった。 b) Drsによる代謝調節のメカニズムを明らかにするため、グルコース代謝経路の調節分子の変化を解析した。その結果、解糖系の調節に関与する乳酸脱水素酵素LDH-A、LDH-B、ならびにPDKの発現がKO MEFで亢進していた。特にLDH-A、Bはそれぞれ培養1日目と、培地pHに顕著な差が現れる培養3日目に亢進しており、KO MEFにDrs遺伝子を再導入するとLDHの発現が抑制されたことからエネルギー代謝調節に重要な働きを担っていることが示唆された。さらにこのLDHの発現調節がpost-translationalに生じていることを見いだした。 c) メタボローム解析の結果から新たに、Drsがグルタチオン経路を調節している可能性を見いだした。KO MEFはH2O2による細胞死に対する感受性が亢進しており、Drsが酸化ストレスを抑制することが示唆された。この機構はHIFやNrf2-Keap1経路とは独立であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究は、Drs遺伝子の代謝シフト調節機構について、(a) 現象の解明、(b)分子機構の解明、(c)病理的意義の解明を行うことを目的とする。このうち現在までに、(a) 現象の解明を達成しており、(b)分子機構の解明も順調に進展している。さらに、新たにグルタチオン経路や酸化ストレス応答の調節にDrs遺伝子が関与することを見いだした。近年、構造化学な解析からDrsがペルオキシレドキシン様の構造を持つことが報告され、グルタチオンの還元サイクルの調節に関与する可能性が示唆されている。(c)病理的意義について、現在この新しい知見を踏まえた上で実験系を検討し、進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、Drs遺伝子の代謝シフト調節機構について (b)分子機構の解明 をさらに進展させる。特にDrsによるLDH-A, Bのpost-translationalな発現調節の分子機構について解析を行うとともに、LDH発現と代謝シフト調節のメカニズムを明らかにする。またグルコース代謝疾患を想定して、(c)病理的意義の解明についても検討する。新たに見いだしたDrsのグルタチオン経路調節機構についても、(b)分子機構、(c)病理的意義の解明と関連して、解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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