2011 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞増殖因子による虚血疾患でのトール様受容体機能阻害を介した自然免疫制御機構
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23590458
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水野 信哉 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10219644)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 肝細胞増殖因子 / HGF / c-Met / 虚血性疾患 / 自然免疫 / トール様受容体 / TLR4 / HMGB1 |
Research Abstract |
腎虚血や心筋梗塞等の様々な虚血性疾患病態において、肝細胞増殖因子(HGF)の産生が高まる。虚血性組織傷害に伴い、HGF血中濃度は数倍に増加する。以上の背景のもと、私たちはHGFの体外的補充は虚血性疾患の発症をブロックする事を明らかにして来た。一方、(細菌などの感染を伴わない)様々な虚血性疾患において自然免疫が過剰に働き、病態憎悪を促すことが報告された。本年度は、自然免疫を司るToll-like receptor-4 (TLR4)とそのリガンド分子であるHMGB1に着目し、HGFの機能解析に着手した。(1) 虚血腎マウスモデルを用いて、腎虚血後、血中HMGB1が上昇する事を確認した。このモデルにリコンビナントHGFを初期投与すると、血中HMGB1の上昇が抑制された。これに一致して、血中尿素窒素の上昇で見た腎機能不全がHGF投与により改善された。組織学的にも、尿細管萎縮、アポトーシスなどの傷害性病変はHGF投与により改善する事が明らかとなった。(2) 培養マクロファージを用いて、死細胞貪食の際に放出されるHMGB1の発現とHGFの影響を調べた。カンプトテシンでアポトーシスを惹起したマクロファージを非処理マクロファージに添加したところ、HMGB1の産生が数倍に高まった。この系にHGFを添加すると、HMGB1の産生が抑制される事が判明した。HGFによるこの作用は主にカンプトテシンによるカスパーゼ3活性化の阻害によるアポトーシス発症抑制に起因する事が判明した。(3) 自然免疫を駆動する別のモデルとしてLPS処理マウスを用い、HGFによる腎保護効果を解析した。その結果、LPS処理マウスでは血栓形成により虚血が進行したのに対し、HGFを投与したLPS処理マウスでは虚血が改善される事が判明した。以上の過程で、HGFはポドサイトを直接標的とし、蛋白尿抑制効果を発現する事を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HMGB1はトール様受容体4(TLR4)を介して、虚血疾患の病態を増悪させる新規分子として注目を集めている。しかしながら、In vivoでのHGFによる自然免疫に対する効果はよくわかっていなかった。今回、虚血性疾患のうち、腎虚血マウスを用いて、HGFによるHMGB1発現抑制を明らかに出来た点は有益であった。またその作用点として、細胞死に対するマクロファージの貪食系にHGFが機能している事をin vitroの系を用いて突き止める事ができた。以上、In vivoおよびIn vitroの両方において、HGFが虚血時のkey regulatorであるHMGB1の発現を抑制することが明らかとなり、次年度以降の分子機構解析に向けた足場を固める事が出来たのは大きな成果の1つであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Step-1 (In vitro培養系): マクロファージを用いて、HMGB1-TLR4経路による炎症性サイトカイン放出に対するHGFの機能を解析してゆく予定である。特にTNF-alphaなどの虚血を促す血栓誘導因子に対する、HGFの阻害効果の可能性を多面的に解析してゆく。以上と平行して、TLR4下流シグナル(とりわけNF-kB活性化に至る経路)について、生化学的・分子生物学的手法を駆使して詳細に検討してゆく予定である。Step-2 (In vivo系): 腎虚血マウスにおける低酸素状態に対するHGFの効果を、HIF1やピモニダゾールなどの虚血マーカーを指標に詳細に解析してゆく。腎臓をはじめ、各臓器でのHMGB1の産生放出などについてもreal-time PCRやELISAなどの定量的解析を加えてゆく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マクロファージ特異的ノックアウトマウスを作製するために、MET-flox/floxマウスを導入・繁殖させるため、動物の作成と維持にかかる経費(消耗品を含む)の占める割合が全体の35%程度に増加する見込みである。その他、生化学的分析、培養細胞を用いた細胞生物学的解析、病理組織学的解析などを合わせると、全体の70-80%程度を実験試薬、器具などの消耗品が占める予定である。その他、論文作成にかかる諸経費、学会参加などに費やされる予定である。
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Research Products
(18 results)