2012 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞増殖因子による虚血疾患でのトール様受容体機能阻害を介した自然免疫制御機構
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23590458
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水野 信哉 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10219644)
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Keywords | 肝細胞増殖因子 / HGF / c-Met / 虚血性疾患 / 自然免疫 / トール様受容体 / TLR4 / HMGB1 |
Research Abstract |
腎虚血等の様々な虚血性疾患病態において、肝細胞増殖因子(HGF)の産生が高まる。私たちはHGFの体外的補充は虚血性疾患の発症をブロックする事を明らかにして来た。前年度に引き続き、自然免疫を司るTLR4とそのリガンド分子であるHMGB1に着目し、HGFの機能解析を行った。 1、虚血腎マウスモデルを用いて、腎虚血後、血中HMGB1が上昇する事を確認した。このモデルにHGFを投与すると、血中HMGB1の上昇が抑制される事を見いだした。これに一致して、血中尿素窒素の上昇で見た腎機能不全がHGF投与により改善された。組織学的にも、尿細管萎縮、アポトーシスなどの傷害性病変はHGF投与により改善する事が明らかとなった。 2、エンドトキシンショック→急性腎不全モデルマウスにおいても血中HMGB1の上昇が見られた。この意義を問うべく、HMGB1中和抗体を投与すると、血栓形成が抑制されるとともに虚血状態が改善される事が判明した。このモデルにリコンビナントHMGB1を投与すると、腎虚血が増悪した。以上の結果より虚血時に誘導されるHMGB1が腎不全病態での悪性因子である事が実証された。 3、エンドトキシンモデルにHGFを投与すると、HMGB1発現上昇が強く抑制された。以上に一致して虚血改善→上皮再生がHGFにより加速され、腎不全病態からの離脱が可能となる事が判明した。 4、培養マクロファージを用いて、死細胞貪食の際に放出されるHMGB1の発現とHGFの影響を調べた。薬剤およびエンドトキシンでアポトーシスを惹起したマクロファージを非処理マクロファージに添加したところ、HMGB1の産生が数倍に高まった。この系にHGFを添加すると、HMGB1の産生が強く抑制された。HGFによるこの作用は主にNF―kappaB活性化経路の抑制ならびにカスパーゼ3活性化阻害に依存する事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HMGB1はTLR4を介して、虚血疾患の病態を増悪させる新規分子として注目を集めている。しかしながら、In vivoでのHGFによる自然免疫に対する効果はよくわかっていなかった。今回、虚血性疾患のうち、腎虚血マウスを用いて、HGFによるHMGB1発現抑制を明らかに出来た点は有益であった。またその作用点として、細胞死に対するマクロファージの貪食系にHGFが機能している事をin vitroの系を用いて突き止める事ができた。以上、In vivoおよびIn vitroの両方において、HGFが虚血時のkey regulatorであるHMGB1の発現を抑制することが明らかとなり、次年度以降の分子機構解析に向けた足場を固める事が出来たのは有意義である。
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Strategy for Future Research Activity |
In vitro培養系を用いた解析: マクロファージを用いて、HMGB1-TLR4経路による炎症性サイトカイン放出に対するHGFの機能を解析してゆく予定である。特にTNF-alphaなどの虚血を促す血栓誘導因子に対する、HGFの阻害効果の可能性を多面的に解析してゆく。以上と平行して、TLR4下流シグナル(とりわけNF-kB活性化に至る経路)について、生化学的・分子生物学的手法を駆使して詳細に検討してゆく予定である。 In vivo系を用いた検証: 肝虚血マウスにおける低酸素状態に対するHGFの効果を、ピモニダゾールなどの虚血マーカーを指標に詳細に解析してゆく。肝臓をはじめ、各臓器でのHMGB1の産生放出などについてもreal-time PCRやELISAなどの定量的解析を加えてゆく予定である。一方でマクロファージ特異的c-Metノックアウトマウスの作成に取りかかり、HGFによる臓器保護効果がマクロファージでの自然免疫活性系阻害に依存する可能性を健闘する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の7割程度は実験消耗品などの物品に費やされる予定である。残りは研究成果の発表(印刷代など)および学会発表・研究打ち合わせなどの旅費に費やされる予定である。
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Research Products
(16 results)