2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590459
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
楢崎 雅司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00467573)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 血管新生 / 血管内皮細胞 / Neuropilin1 |
Research Abstract |
癌組織での増殖過程では血管新生が観察され、血管新生を抑制することにより、癌に対して栄養と酸素の供給源を断ち癌の成育を止めることを目指して、癌の新しい治療戦略として活発な研究がなされている。研究代表者は、血管内皮細胞表面受容体の細胞内内在化の意義の解明とともに、人工的な試薬を用いた内在化を試みるなど、血管内皮細胞を標的にした斬新な研究に取り組んできた。これらの研究を展開し、血管新生阻害に関してふたつの戦略に取り組んでいる。(1)もともと生体内に存在している因子を用いた新規血管新生阻害因子の利用。米国NIH/National Eye InstituteのLee C.らとの共同研究として、サイトカインVEGF-Bによる血管新生阻害の仕組みの解明に取り組んでいる。血管新生に重要なFGF受容体にVEGF-Bが結合し、血管新生因子FGFを阻害する機構を明らかにした。すなわちVEGF-B分子とFGF受容体の結合をdot-blot westernを用いて証明し、2分子間の結合速度と解離速度をBiacoreを用いて測定し結合定数を得た。こうした2分子間の相互作用の生化学的分析は、FGF受容体を阻害する機構に裏付けを与えるものである。これらの結果は現在論文投稿中である。(2)新しい薬理機構での阻害剤「くり込み薬」を用いた血管新生阻害。硫酸多糖類やoligoあるいはpoly guanidineが細胞表面のNeuropilin1(NRP1)を細胞内へくり込ませて細胞表面からNRP1分子を消失させることを示してきた。本来のリガンドであるVEGF-AやSema3AのNRP1への結合が著明に低下し、それらのリガンドの作用を効率よく阻害することをin vitroやin vivoの実験系を用いて証明してきた。さらにこれらの分子と構造が類似する化学物質を現在スクリーニングの最中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時には計画していなかった米国NIH/National Eye InstituteのLee C.らとサイトカインVEGF-Bの血管新生阻害機構に関する共同研究の提案があった。彼らの研究は血管新生を抑制する生理的物質の性状の解析であり、私がこれまで行ってきた血管新生阻害研究の流れに沿うものであったため提案を受け入れ共同研究を実施して行った。その結果、順調な成果を上げることが出来、共著者として論文を投稿し現在レフェリーからの指摘に対応している最中である。予定外の研究課題となったが順調に行われたことを考えると当初の計画以上に進んだと評価できる。なお、交付申請書には結果如何によっては計画の変更があると説明しており今回はそのケースにあたるものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで、硫酸多糖類やオリゴあるいはポリグアニジンが細胞表面のNeuropilin-1(NRP1)を細胞内へくり込ませて細胞表面からNRP1分子を消失させることを示してきた。本来のリガンドであるVEGF-AやSema3AのNRP1への結合が著明に低下し、それらのリガンドの作用を効率よく阻害することをin vitroやin vivoの実験系を用いて証明してきた。さらにこれらの分子と構造が類似する化学物質をスクリーニングしていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初代血管内皮細胞、シャーレ、培養液、ピペットなどの細胞培養に関する費用。研究課題である「くり込み」作用を持つ可能性のある各種試薬。細胞表面蛋白質に対する一次抗体、標識二次抗体などの購入に関する費用。共同研究者との打ち合わせのための旅費。国際学会参加費用。等に支出する予定である。
|