2011 Fiscal Year Research-status Report
beta-Catenin/Sox2/p63シグナルの肺上皮分化・腫瘍原生制御解析
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23590466
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
橋本 修一 熊本大学, 生命科学研究部, 准教授 (00243931)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | beta-catenin / p63 / Sox2 / Sox9 / Notch / Stem cell / Airway epithelium / Differentiation |
Research Abstract |
[目的] p63発現気管支基底細胞は気道上皮の幹細胞であるが、その維持・分化機構を明らかにすることは先天性肺疾患の病因解明や、肺傷害からの再生医療に重要であると考えられる。我々はWntシグナル系β-cateninがSox2発現を負に制御することにより発達肺気道上皮の分化を制御する重要な因子であることを明らかにしたが、メカニズムの詳細は不明である。本研究ではβ-cateninとp63/Sox2/Sox9/Notch発現を中心にその気道上皮分化制御機構を明らかにすることを目的とする。[方法] 当該平成23年度は、p63発現ヒト株化気管支基底細胞(VA10)を用い、BIO(GSK-3阻害剤でβ-catenin分解を抑制)の非処理、処理(0.5μM, 1.0μM)下にRNAを抽出、cDNAを作成し、LightCycler Nano (Roche、当該年度予算で購入)を用いReal Time-qPCR法で各遺伝子発現の解析を行った。[結果] BIO処理下でβ-catenin破砕複合体Axin2、および、核内転写複合体Lef1の遺伝子発現が有意に亢進し、Wnt/β-cateninシグナル系の活性化を確認した。このBIO処理、Wnt/β-cateninシグナル活性下で幹細胞マーカー、p63、Sox2、Notch1遺伝子発現は有意に減少し、逆に、Sox9遺伝子発現は亢進した。誘導β-catenin発現がこれら遺伝子発現変位を誘導することからVA10の幹細胞としての分化を制御している可能性を示した。[展開] 次平成24年度は、VA10三次元培養法を用い、Wnt/β-cateninシグナル活性下でVA10の分化傾向を解析するとともに、ChIPアッセイ法によりβ-cateninと各因子の直接的結合性の検討と結合領域の解析を行い、β-cateninの気道上皮分化制御機構の詳細を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該平成23年度は、先にVA10細胞を入手できたためこの細胞を使ったWnt/β-cateninシグナル活性化による関連遺伝子発現のReal Time-qPCR解析を中心に行った。よってトランスジェニックマウスを使った解析を後に回すこととなり当初の計画と違って順番が入れ替わったが、遺伝子解析自体は順調に行え、有益な結果が得られた。また、当該年度予算で購入したReal Time-qPCR解析用の機器であるLightCycler Nanoも目的通りに有効に活用できた。以上の理由により判定は、(2)おおむね順調に進展している、と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のごとくVA10細胞を先に入手し遺伝子解析から研究を開始することとしたため、まず当該年度にReal Time-qPCR機器のLightCycler Nano (Roche)を先に購入する必要性が生じ予算の大半をこの機器の購入に充てた。その関連上、次にVA10細胞への変異β-cateninの遺伝子導入による関連遺伝子解析と三次元培養による分化誘導の解析が必要となり、遺伝子導入機器であるNeonシステム(Invitrogen)の購入も当該年度予算からの購入で検討したが枠を超えるためこの機器は次年度に購入する必要性が生じた。また、当該年度未使用額を次年度に繰り入れればNeonシステムを購入可能と判断した。これらの経過より次年度は、Neonシステムを用いたVA10への変異β-catenin遺伝子導入による関連遺伝子発現解析と分化誘導の解析を中心に行い、次々平成25年度にマウス組織を使った免疫染色の解析を中心に行うとともに研究の総括を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の理由により当該平成23年度未使用額として次年度に繰り入れるための当該研究費が生じる状況となった。よって、当該年度研究費の一部を未使用額として次年度に繰り入れた次平成24年度の総枠内で当初予定の遺伝子導入機器Neonシステムの購入を検討する。また、研究を遂行するに必要な備品の購入は残りの予算の範囲内で可能であると推定される。
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