2011 Fiscal Year Research-status Report
骨・血管連関と新しいヒスタミンの機能:閉経後の動脈硬化石灰化と骨粗鬆症
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23590467
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
谷本 昭英 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10217151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹栗 靖之 産業医科大学, 医学部, 教授 (60140646)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / 骨粗鬆症 / ヒスタミン / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
粥状動脈硬化病変に浸潤する組織球はヒスタミンを産生し、ヒスタミンは動脈硬化巣での炎症性サイトカイン、細胞外マトリックス分解酵素、酸化LDL受容体等の動脈硬化を促進する遺伝子の発現を制御している。ヒスタミン欠損マウスを用いた動脈硬化モデルでは、ヒスタミン欠損により粥状硬化病変が減少する。同マウスでは卵巣摘出後の骨粗鬆症が抑制されることも報告されており、ヒスタミンが骨病変と血管病変の両方に関連する可能性が示唆される。閉経後の低エストロゲン状態では、骨粗鬆症と動脈硬化が促進することが知られており、骨・血管連関として共通のメカニズムが想定されている。 今回、ヒスタミン欠損マウスを用いた動脈硬化モデルに卵巣摘出を行い、閉経後における骨・血管連関の病態メカニズムとヒスタミンの関わりを解明したい。骨組織と血管組織の発生学的共通性とヒスタミン作用の類似性から、血管壁においてもヒスタミンがRANKLを介して、血管構成細胞の骨芽細胞様あるいは破骨細胞様細胞への分化を誘導することにより、石灰化を制御している可能性を考えた。つまり、ヒスタミンによる、動脈硬化の石灰化と骨粗鬆症に共通する病態メカニズムが存在すると推定している。 粥状動脈硬化を自然発症する apolipoprotein E (apoE)ノックアウトマウスにHDCあるいはヒスタミン受容体の遺伝子欠損を導入した2重ノックアウトマウスを作製後、卵巣摘出による低エストロゲン状態を再現して、粥状動脈硬化病変の石灰化メカニズムと骨粗鬆症との関連を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ApoE欠損マウスとヒスタミン合成酵素(HDC)欠損マウスを交配し、2重遺伝子欠損マウス(apoE-/-HDC-/-)を作製し、維持繁殖中であったが、動物の感染事故により全頭処分をしたため研究が大幅におくれている。同様に、apoEとヒスタミン1型受容体(H1R)、apoEとヒスタミン2型受容体(H2R)の2重遺伝子欠損マウス(apoE-/-H1R-/-およびapoE-/-H2R-/-)についても親マウスを全頭処分したため、現在は保存精子からの再生産を開始し、順調に繁殖中であるが、未だ本来の研究には着手できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2重ノックアウトマウスの回復と作製を早急に行い、本来の研究に着手する。1)ApoE欠損マウスとヒスタミン合成酵素(HDC)欠損マウスを交配し、2重遺伝子欠損マウス(apoE-/-HDC-/-)を作製する。2)apoEとヒスタミン1型受容体(H1R)、apoEとヒスタミン2型受容体(H2R)の2重遺伝子欠損マウス(apoE-/-H1R-/-およびapoE-/-H2R-/-)を作製する。3)各2重ノックアウトマウスとapoE-/-マウスを卵巣摘出後、高コレステロール食(1.25%)で飼育し、粥状動脈硬化の発生を経時的(6-9-12週)に観察する。4)経時的にマウスの全身麻酔下において屠殺する。新鮮な大動脈を取り出しOil Red-O染色により粥状硬化病変を染色し、粥腫病変の面積をapoE-/-マウスと各2重ノックアウトマウスで比較検討する。5)大動脈をはじめ全身主要臓器のホルマリン固定パラフィン切片を作成する。切片は通常のH&E染色、EVG染色、Azan染色に加えて免疫染色を行う。デキストランポリマー法による免疫染色により、粥状硬化病変での組織球(Mac3陽性)、平滑筋(alpha-smooth muscle actin陽性)を染め分けてこれらの細胞の分布、数量の相違を観察する。apoE-/-H1R-/-およびapoE-/-H2R-/-マウスでは、ヒスタミン合成酵素(HDC)とヒスタミンの局在も免疫染色で観察する。6)大動脈動脈硬化病変の石灰化の有無をvon Kossa染色で検討する。7)骨粗鬆症の程度を組織学的に検索する。石灰化線をテトラサイクリンで標識し、骨の石灰化を画像解析する。ヒスタミン合成酵素(HDC)とヒスタミンの局在を免疫染色で観察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ノックアウトマウスの作製と維持、繁殖に関わる経費が大部分と予想される。順調にマウスの作製が回復し、実験が進行すれば組織学的検索のための消耗品費が生じる。動物飼育:約100万円 遺伝子確認ための分子生物試薬:薬10万円標本作製:約50万円 免疫染色試薬:薬10万円合計:薬170万円
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