2012 Fiscal Year Research-status Report
骨・血管連関と新しいヒスタミンの機能:閉経後の動脈硬化石灰化と骨粗鬆症
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23590467
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
谷本 昭英 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10217151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹栗 靖之 産業医科大学, 医学部, 教授 (60140646)
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Keywords | 動脈硬化 / 骨粗鬆症 / ヒスタミン / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
本年度は感染事故から回復した HDC-KO(ヒスタミンを産生しない)、H1R-KO(ヒスタミン1型受容体欠損)、H2R-KO(ヒスタミン2型受容体欠損)の各遺伝子改変マウスに卵巣摘出を施し、高コレステロール食による骨密度に対する影響を検討した。野生型を含む8週令の雌性各マウスに麻酔下に両卵巣摘出術を施し、回復後にhigh-cholesterol diet (0.1% cholesterol添加) で6週間飼育した。解剖により血液、肝、大腿骨,大動脈などを通常のホルマリン固定・パラフィン切片・HE染色標本を作製し、光学顕微鏡で観察した。血液は ELISA 法により、Estrogen 濃度を測定した。 組織学的にHDC-KO と H2R-KO マウスにおいては、野生型マウスと比較して、海綿骨の狭小化、密度の低下が見られた。成長板を含む軟骨形成部分では差違は確認されなかった。また骨髄に著変はみられない。H1R-KO マウスでは野生型と同等の骨密度であった。肝や大動脈では、我々が従来報告したように、各 KO マウスにおいて脂肪肝や粥状動脈硬化が見られた。ヒスタミン欠損による骨密度の低下はすでに報告されており、今回の結果からヒスタミン2型受容体を介したシグナルが骨密度の維持に関連していることが推定された。卵巣摘出群との差違は確認出来なかったが、今回の実験条件は、卵巣摘出後6週間という比較的短い飼育期間であり、エストロゲン低下の十分な効果が得られなかった可能性も示唆された。血中エストロゲン濃度は、対象とした野生型雄性マウスにおいても検出され、卵巣摘出雌性マウスでの検討が不可能であった。ELISA の特定性に問題があることが考えられた。 次年度は、二重欠損マウスで同様の実験を行い、また high-cholesterol diet での飼育期間の延長を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度(平成24年度)に、マウスの感染事故のため全頭処分を行い(平成24年度報告書に詳細を記載)、飼育施設の閉鎖や清掃などに1年近くを要した。また施設利用が回復された後には、実験に用いる遺伝子改変マウスの繁殖を再開したが、以前よりも繁殖率の低下が見られ(原因は不明)、充分な頭数および遺伝子二重欠損マウスを確保できていないため、研究計画は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、各2遺伝子の二重欠損マウスを順次作製し、実験に供する。また、感染事故に対応するため、他施設でのマウスの維持・繁殖や精子の凍結保存について検討する。 具体的には、動脈硬化石灰化モデルマウスの作製をおこなう。1)ApoE欠損マウスとヒスタミン合成酵素(HDC)欠損マウスを交配し、2重遺伝子欠損マウス(apoE-/-HDC-/-)を作製する。2)apoEとヒスタミン1型受容体(H1R)、apoEとヒスタミン2型受容体(H2R)の2重遺伝子欠損マウス(apoE-/-H1R-/-およびapoE-/-H2R-/-)を作製する。3)各2重ノックアウトマウスとapoE-/-マウスを卵巣摘出後、高コレステロール食(1.25%)で飼育し、粥状動脈硬化の発生を経時的(6-9-12週)に観察する。マウスは全身麻酔下において解剖し、Oil Red-O染色により粥状硬化病変の面積を測定し、各マウスにおいて比較検討する。大動脈をはじめ全身主要臓器のホルマリン固定パラフィン切片を作成し、光学顕微鏡にて観察する。切片はH&E染色、EVG染色、Azan染色に加えて免疫染色を行う。免疫染色では、組織球、平滑筋を染め分けてこれらの細胞の分布、数量の相違を観察する。apoE-/-H1R-/-およびapoE-/-H2R-/-マウスでは、ヒスタミン合成酵素とヒスタミンの局在も免疫染色で観察する。大動脈動脈硬化病変の石灰化の有無はvon Kossa染色で検討する。また、骨粗鬆症の程度を組織学的に検索する。 生化学的検索として、粥状硬化病変からtotal RNAを抽出し、RANKL、RANK、OPG、HDC、H1R、H2R のmRNA発現量をRT-PCR法を用いて定量し比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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