2011 Fiscal Year Research-status Report
膀胱尿路上皮癌におけるDNA修復酵素hABHファミリーの分子病理学的解析
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23590471
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
島田 啓司 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (90336850)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ALKBH3 / NADPH oxidase / Reactive oxygen species / Tweak / Fn14 / Urothelial carcinoma |
Research Abstract |
我々は、ALKBH分子ファミリーALKBH8が細胞内活性酸素種(ROS)の産生とこれに関連した癌進展メカニズムに深く関与することを見い出した(Cancer Res, 2009)。また、この知見をもとに、活性酸素種を蛍光標識して尿中に剥離した陽性細胞を検出し形態的診断を加味して尿細胞診における膀胱癌の診断精度を高めることができた(BMC Urol., 2011)。以上の結果を受けて本研究ではALKBH3の尿路上皮癌細胞における機能をROSに着目して解析した。siRNAを用いたALKBH3ノックダウンにより、癌細胞はNOX2の発現低下を介して細胞内ROS産生量が減弱し、cell cycle arrestを来した。また、in vivo chorioallantoic membrane assayにより、ALKBH3遺伝子ノックダウンが尿路上皮癌細胞における血管増生因子であるTweakとその受容体であるFn14ならびにTweak/Fn14に依存したVEGF発現を抑えて癌の血管新生や浸潤能を有意に阻害することを確認した。興味深いことに、癌細胞より産生されるTweakは血管内皮細胞におけるTweak/Fn14発現の安定化にも寄与することが判明した。以上から、ALKBH3は細胞増殖ならびに血管新生を促進することで、尿路上皮癌を進展させると考えられ、有効な分子標的になると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ALKBH3の膀胱癌進展に及ぼす影響やその分子メカニズムについて、細胞内活性酸素種産生を介した細胞生存シグナルやTweak/Fn14を介する血管新生があげられることがin vitroとin vivoの実験にて判明した。平成23年度研究の目標は、ALKBH3の注目すべき機能をある程度明確にすることであったので、研究はおおむね順調に進んでいると解され、平成24年度以降の実験計画を実現可能な範囲で立案できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は、ALKBH3が膀胱癌治療における有効な標的分子となるか否かを明確にすることを目的とする。まず、nude mouseを用いた膀胱癌同所性移植実験を行い、ALKBH3に対するsiRNAをatelocollagenとともに膀胱内に注入し、control RNA投与群との間で腫瘍体積に及ぼす影響を比較、検討する。また、膀胱尿路上皮癌手術検体と我々が精製した抗ALKBH3抗体を用いて免疫組織化学的解析を行いALKBH3の発現陽性率がgradeや深達度などの病理組織学的parameterと有意に相関するか否か検討し、悪性度や予後予測因子としての有用性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
nude mouse、精製されたsiRNA、atelocollagen、nude mouseから摘出した組織やヒト膀胱癌組織の処理ならびに免疫組織化学的解析に必要な消耗品、データ収集と解析関係(必要により解析シフトを入手する)等に研究費を使用する予定である。
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