2012 Fiscal Year Research-status Report
膀胱尿路上皮癌におけるDNA修復酵素hABHファミリーの分子病理学的解析
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23590471
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
島田 啓司 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (90336850)
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Keywords | 膀胱癌 / ALKBH3 / Tweak / Fn14 / 活性酸素種 |
Research Abstract |
これまでに、ALKBH3はNADPH oxidase2の安定化を介して癌細胞内活性酸素種(ROS)生成とその安定化をもたらすとともに、血管増生因子であるTweakとその受容体であるFn14ならびにTweak/Fn14に依存したVEGF発現を促進することで、尿路上皮癌細胞の進展に関与することを発見した。以上の結果を受けて、平成24年度にはALKBH3が膀胱癌治療における新規分子標的となるか否か、マウスを用いた膀胱同所性移植実験を行い解析した。膀胱に尿路上皮癌細胞株を移植し、ALKBH3 siRNAをatelocollagen とともに経尿道的に膀胱内に注入すると膀胱に生着した腫瘍体積が有意に縮小し、癌細胞におけるALKBH3発現の低下に伴って、Tweak, Fn14, VEGF発現が抑制されることを免疫組織化学的に確認し、。興味深いことに、癌胞巣内あるいはその周囲に増生する毛細血管内皮細胞ではFn14が広範に発現し腫瘍の血管新生に大きく寄与するが、ALKBH3、Tweakのノックダウンによって内皮細胞におけるFn14発現が強く減弱することが分かった。さらに、ヒト膀胱癌手術検体(経尿道的膀胱腫瘍切除術や膀胱全摘出術標本)を用いて、免疫組織化学的、統計学的に解析したところ、ALKBH3, Tweak, Fn14発現陽性率と病理組織学的深達度、異型度など病理組織学的因子との間に相関性を認めた。ALKBH3は膀胱癌治療上の効果的な標的分子であり、膀胱癌の悪性度・予後を予測する因子となることが示唆された(Shimada et al. Clin Cancer Res, 2012)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度において培養細胞を用いたin vitro実験系でのALKBH3機能解析を行い、平成24年度にはマウス同所性移植実験によるin vivoでの機能解析を予定していたが、平成24年度終了時点で、これら計画に加え、膀胱癌手術検体を用いた臨床病理学的解析を行ってその意義を明確にし、結果を主要な癌論文紙上に発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
膀胱癌細胞におけるALKBH3やその関連分子群発現(陽性率)の臨床的意義をより明確にするため、ヒト膀胱癌手術治療検体(経尿道的膀胱腫瘍切除術や膀胱全摘出術標本)を用いて、ALKBH3, Tweak, Fn14発現を免疫組織化学的に解析して、各種臨床病理学的parameter(非浸潤癌から浸潤癌への進展や他臓器への転移等)との関連性を統計学的に解析する。 また、ALKBH familyとROS安定化に着目し、そのメインとなる分子群を、膀胱癌細胞株を用いて、網羅的に解析し、癌細胞の生存・浸潤・血管新生・転移にかかわるより重要性の高い決定的な分子の特定を行う。これにはDNA /protein microarray解析を適宜導入する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
過去約10年間のヒト膀胱癌手術治療検体(経尿道的膀胱腫瘍切除術や膀胱全摘出術標本)の収集、特に非浸潤癌20例、筋層非浸潤癌20例、筋層浸潤癌20例、上皮内癌20例、遠隔臓器への転移症例10例を目安として収集し、未染色標本の作製、抗ヒトALKBH3, Tweak, Fn14抗体の購入ののち、免疫組織化学的解析を行う(抗体購入費用:約200,000円)。主要な臨床情報(再発回数、原発病巣数、再発までの期間や転移臓器数、survival等)の収集、整理と、免疫組織化学的解析結果との関連性を統計学的に解析する(泌尿器科医師の協力、統計ソフトの購入と解析:約100,000円)。また、ALKBH3遺伝子をノックダウンあるいは強発現した細胞株と通常の野生型株とを比較し、細胞内ROS安定化にかかわる分子群、中でも還元系酵素群やユビキチン・プロテアゾーム系構成分子群に着眼してALKBH familyの最重要下流分子群の特定を行う。特定が困難な場合は、DNA /protein microarray解析を行う(約150,000円)。可能であれば、その臨床病理学的意義を免疫組織化学的に解析する(約90,000円)。
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