2011 Fiscal Year Research-status Report
IL-23によるNotchシグナルを介した新しい免疫制御機構
Project/Area Number |
23590475
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
徐 明利 東京医科大学, 医学部, ポストドクター (80597964)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
善本 隆之 東京医科大学, 医学部, 教授 (80202406)
須藤 カツ子 東京医科大学, 医学部, 講師 (50126091)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | IL-23 / IL-22 / Notch |
Research Abstract |
本研究では、IL-23によるNotchシグナルを介した病態形成の制御に関する検討を行うことを目的とする。IL-23はIL-22のみならずIL-17も産生誘導するので、本年度は、まず、肝炎誘導におけるそれぞれのサイトカインを介したIL-23の役割や作用機構について検討を行った。野生型マウスでは、コンカナバリン(Con)A投与後、血清中の種々のサイトカイン産生の上昇が見られ肝炎が誘導される。しかし、IL-23p19欠損マウスでは、血清中のIL-22およびIL-17産生の低下と共に、肝炎の増悪化が見られ、一方IL-17欠損マウスでは、肝炎の軽減化が見られた。そこで、IL-23p19欠損マウスにIL-22を投与すると肝炎が抑制され、IL-23を投与すると血清中のIL-22の上昇のみならず、IL-17も上昇し、肝炎は抑制されなかった。これは、IL-23により、IL-17のみならず他の炎症性サイトカインなどの産生も増強されたためと考えられる。最後に、野生型とSTAT3およびSTAT4欠損マウスの肝臓由来の単核球をin vitroでCon AとIL-23で刺激し、Notchおよび芳香族炭化水素受容体(AHR)の阻害剤を用いてIL-22とIL-17産生への影響を調べたところ、いずれのサイトカイン産生にも、STAT3、STAT4、Notchのシグナルは必要であったが、 AHRシグナルはIL-22産生のみに重要であった。以上より、内在性のIL-23は、IL-22産生を介し肝炎の抑制に重要であるが、外来性のIL-23は、IL-22のみならずIL-17などの他の炎症性サイトカインも産生誘導するため肝炎抑制効果は殆ど見られないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、当初の申請書の計画通り進み、「研究実績の概要」に記載したように、目的を全て達成できたと思う。さらに、IL-22投与が肝炎抑制効果を示す際、血清中のTNF-aやIFN-g、IL-6などの炎症性サイトカイン産生の低下が見られたことより、IL-22が肝臓に直接作用し、これらのサイトカイン産生を抑制する新たな機構が存在することが示唆されたなど、新たに興味深い付随的発見もあり、これらの点は次年度へも継続して検討して行きたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、予期していなかった新たな発見に繋がる可能性を示唆する結果も得たので、次年度はそれについても検討し、それに伴い、当初の申請書の計画の一部を縮小または先送りにする。次年度は、腫瘍モデルを用いたIL-23によるNotch3発現抑制を介した抗腫瘍効果の誘導とその作用機構や治療効果について検討を行う。(1) IL-22による肝細胞からの炎症性サイトカインの産生および機能の抑制:IL-22が直接肝細胞に作用し、肝炎誘導を抑制する機構を明らかにする。IL-22欠損マウスやヒト肝細胞株(HepG2)などを用いて、炎症性サイトカインの産生および機能の抑制について検討する。(2) p19遺伝子欠損マウスでの腫瘍増殖:移植腫瘍の肺転移モデルであるB16F10メラノーマ細胞またはMC38大腸癌細胞を尾静脈より静注し肺に転移するモデルを用いて、野生型およびp19遺伝子欠損マウスでの腫瘍内のNotch3発現と転移腫瘍数を比較し、内在性のIL-23とNotch3発現、腫瘍増殖の関係を明らかにする。(3) IL-23投与による腫瘍増殖抑制効果:上記の肺転移モデルを用いて、腫瘍投与後、IL-23蛋白または発現ベクターを頻回投与し、肺転移数と肺組織でのNotch3発現を調べ、IL-23投与により肺転移腫瘍の増殖抑制効果を示す作用機序の1つとして、IL-23による肺でのNotch3発現の抑制が関与しているか明らかにする。(4) IL-23によるin vitro腫瘍細胞でのNotch3発現抑制: IL-23の腫瘍細胞への直接の効果を明らかにするため、Notchシグナルに感受性を示すヒト卵巣癌細胞株(MCF7など)を用いて、IL-23と培養後経時的にNotch3発現と死細胞の割合を調べる。IL-23によりNotch3発現の低下が見られれば、その作用機序やシグナル伝達機構についても明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度未使用額31,629円は、最終的に交付金額と同額に端数を合わせることが難しいための、次年度への繰り越し金とした。これと次年度の交付金額を合わせた全ての経費は、上述の実験遂行に必要なマウスや抗体、試薬、培養器具などの消耗品代に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)