2012 Fiscal Year Research-status Report
子宮内膜症の病変形成に関わる内膜細胞生存メカニズム
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23590476
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
田村 和広 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (70281409)
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Keywords | 子宮内膜症 / モデルマウス / 出血 / アンチトリプシン |
Research Abstract |
片側卵巣摘出を行ったヌードマウス(出血群)の腹腔内に不死化ヒト子宮内膜間質細胞並びに腺上皮細胞のマトリゲル浮遊混合液を移植すると、数日後に顕著なゲル塊が卵巣摘出部位に出現する。この形成されたゲル塊(病変様組織)の構成細胞で発現する機能タンパク質のなかで、発現レベルが著しく変化する因子(非卵巣摘出動物で形成される卵巣周辺に浮遊したゲル塊との比較)を探索した。すなわち、卵巣摘出あり(OVX出血群)と摘出なし(Control群)において形成されたゲル塊(病変様組織)を回収した。この2群の各細胞ライセートの二次元電気泳動を行い、LC-MS/MSまたはMALDI-TOF MSを組み合わせたプロファイリング比較解析を行った。OVX出血群の病変では、α1アンチトリプシン(AAT)レベルが低下していた。このAATの生物活性をみるため、培養子宮内膜細胞に対するプロテアーゼ活性化受容体(PAR)アゴニスト刺激による炎症性サイトカインの亢進作用に及ぼすAATの作用を検討した。間質細胞にAATを処置するとmTOR及びその下流のS6キナーゼのリン酸化レベルは低下した。 この時、PARアゴニストで刺激されるIL-8とIL-6の発現は抑制された。病変様組織は主に間質細胞から構成されており、mTORとNFκBシグナルが活性化されていることが分かった。従って、AATは、 異所性内膜細胞の炎症性サイトカインや生存シグナル系の抑制に関わる可能性が示唆された。ヒト子宮内膜症の病変組織では、月経血中に存在する遺伝的素因をもつ内膜細胞が形質転換を起こし炎症様反応を示す。この病態の進展におけるAAT発現低下の関与が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していたよりも、プロテオーム解析とRNA解析に費用がかかり、年度後半での検討標的としたシグナル伝達蛋白質の抗体や解析ゲルが入手できず、実験が進行しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
膵島移植モデルにおいて、AAT処置は炎症を抑えて膵島の生存を高めることが最近報告された。そこで、本モデル病変におけるAAT低下が炎症進展と細胞生存に関わるのかについて直接的な証拠を得たい。このAATノックダウンが炎症サイトカイン発現上昇を引き起こすのか、また、そのシグナル伝達を中心に検討する。さらに、病変組織像の詳細な解析とAATの発現、すでに調製されている内膜症患者および正所性子宮内膜組織標本におけるAATの発現も検討する。加えて、逆に、発現が上昇していた他の同定因子の機能についても解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
in vivo モデルを用いて病変組織の解析や病変に及ぼすAATの活性を評価するため、引き続き動物や免疫組織化学染色に必要な試薬の購入が不可欠である。また、in vitro 実験ではAAT発現を変動させるためのトランスフェクション試薬やsiRNAなどが必要である。細胞培養に必要なプラスチック器具、酵素活性測定、細胞内シグナル伝達因子の抗体も購入する。
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