2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590477
|
Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
内藤 善哉 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20237184)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 癌幹細胞 / 膵癌 / 前癌病変 / 癌幹細胞マーカー |
Research Abstract |
今回の研究では、ヒト膵癌組織での各種癌幹細胞(Cancer Stem Cells: CSCs)マーカーの比較検討を行ない、特異性の高い癌幹細胞マーカーを明らかにし、ヒト膵癌組織から癌幹細胞を選択的に抽出することを目的としている。癌幹細胞(CSCs)は細胞増殖、浸潤、転移や再発に関与する可能性があることから、各種癌組織や培養癌細胞を用い、解析が行われており、癌治療の標的細胞として注目されつつある。 膵癌においては、膵臟で最も多い組織型である浸潤性膵管癌(PDAC)の癌幹細胞の特異的マーカーとしてCD133,CD24,CD44,CXCR4,ESAおよびnestinなどが報告されている。今年度は、これらのCSCマーカーの臨床上の意義や役割を検討するため、浸潤性膵管癌(PDAC)とその前癌病変であるPanIN病変、および正常膵組織を用い、これらCSCマーカーの発現レベルを解析した。 その結果、CD133以外のCSCマーカー陽性細胞は、正常膵管<低グレードPanIN<高グレードPanIN<PDACの順に増加した。CD133発現率は悪性度に比例しなかった。CD133を除くCSCマーカーの発現率は、PanINのグレード上昇に伴い増加した。また、CD133発現率は静脈侵襲に正の相関を示し、ESAおよびCXCR4発現率については、高分化型PDACと正の相関を示した。 さらに腺扁平上皮癌においてはESAとCD133は腺癌成分優位に、CD44は扁平上皮癌成分に優位に発現が見られた。未分化癌においてはESA、CD24は腺癌成分優位に、CD44およびnestinは未分化癌成分に優位に発現が見られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ヒト膵癌組織における各種の癌幹細胞マーカーの発現レベルを解析し、現時点での経過報告を米国癌学会(2012年4月開催)に演題投稿し採択されるなど、おおむね順調に進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は研究の対象となるヒト膵癌の症例数と組織型を増やし、さらに検討を重ねる。膵癌の新たな早期診断や治療標的の開発のために、癌の進行の各段階ごとにCSCマーカーの発現を解析し、結果をまとめていく。また、各種癌細胞マーカーの局在について、増殖能や分化度などを組織内で比較検討し、上皮性腫瘍成分や腫瘍性病変周囲の間質における癌幹細胞マーカーの発現や種々の癌幹細胞維持に働く可能性のある間質成分の性質を検討する。これらの検討により有用な新規膵癌幹細胞マーカーや癌幹細胞維持に働く可能性のある間質成分を決定する。膵癌幹細胞マーカーや膵癌幹細胞の維持に関わる有力な間質成分の候補を絞りこみ、このマーカーにより癌幹細胞、間質成分や間質細胞をヒト膵癌組織から選択的に採取する。これらの癌幹細胞ならびに間質成分や間質細胞を抽出し、特異的な遺伝子発現の解析やタンパク質の発現を解析し、今まで報告されていない新規の癌幹細胞、間質成分や間質細胞のマーカーの検出や癌幹細胞としての生物学的な特徴維持に関わる種々のタンパク質や遺伝子発現調節機構を解明してゆく。これらの検討により癌幹細胞の生物学的な役割や遺伝子発現調節機構の制御を解析し、癌幹細胞に対する新たな分子標的治療薬の可能性について検討を行なう。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に引き続き、ヒト膵癌の癌幹細胞マーカーの発現につき、症例や組織型を追加し癌病変、前癌病変や非腫瘍性組織での免疫染色で検討する。また、組織から病変部や腫瘍性病変周囲の間質をマイクロダイゼクションで抽出し、MS/MS解析によるタンパク質の発現解析、Quantitative real-time PCRや DNA arrayの手法を使って、特異的な遺伝子発現調節機構やタンパク質の発現機能を検討してゆく。 具体的には、ヒト膵癌病変の症例数と組織型を増やすとともに、浸潤性膵管癌の前癌病変とされるPanINや膵管内乳頭粘液腫瘍に含まれる前癌病変や非腫瘍性組織を用いて、上皮性腫瘍成分や腫瘍性病変周囲の間質における癌幹細胞マーカーの発現や種々の癌幹細胞維持に働く可能性のある間質成分の性質を免疫染色で検討する。また、それぞれの上皮性腫瘍成分病変における粘液型発現や間質細胞の相違や増殖能の検討を行う。さらに組織から病変部や病変部周囲をマイクロダイゼクションで抽出し、MS/MS解析によるタンパク質の発現解析やDNA arrayの手法を使って、病変遺伝子発現調節機構やタンパク質の機能を検討し、組織での発現の相違についても解析する。これらの検討により有用な新規膵癌幹細胞マーカーや癌幹細胞維持に働く可能性のある間質成分を決定する。さらに、ヒト膵癌培養細胞株を用い新規膵癌幹細胞マーカーの解析や癌間質-癌幹細胞周囲環境成分の細胞機能における役割を検討する。
|