2011 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞の運命決定に働く淘汰圧の自己形成と回避の機構
Project/Area Number |
23590478
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
板野 直樹 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (40257712)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ヒアルロン酸 / 糖鎖 / 癌 / 微小環境 / 幹細胞 / 淘汰圧 / 炎症 |
Research Abstract |
本研究では、「がん細胞自らがその生存に不利な環境をがん組織内に形成することで、細胞の淘汰を促進して、集団として拡大戦略を図る」という淘汰圧の自己形成と回避の機構を提案し、その解明を目指して研究に取り組んだ。今年度は、ヒアルロン酸合成酵素2遺伝子のコンディショナルトランスジェニック(Has2 cTg)マウスを用いて、乳がん特異的にヒアルロン酸を過剰産生するマウス群を得た。これにより、がん組織の経時的解析が可能となった。今後、マウスに発生した乳がん組織を経時的に摘出し、対照乳がん組織と炎症細胞の浸潤や癌細胞死について比較・検討する予定である。また、平成24年度に実施を計画していた内容のうち、がん細胞が炎症や免疫反応を回避する機序について分子生物学的解析を前倒しで実施した。具体的には、がん細胞とマクロファージを共培養し、がん細胞によるマクロファージ活性の抑制について、Has2遺伝子欠損がん細胞と比較した。マクロファージの活性化は、NF-kB応答性にレポーター分子(Secreted Embryonic Alkaline Phosphatase; SEAP)を発現するRAW-Blueマクロファージ細胞株を用いて、レポーター分子の発現と活性を指標に解析した。更に、がん幹細胞の培養上清をマクロファージに添加後、上記レポーター遺伝子の発現と活性を指標に、マクロファージ活性化状態を解析した。以上より、ヒアルロン酸産生が、免疫抑制に与える影響を検討する解析系を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度計画していた研究項目のうち「乳がんにおける淘汰圧の自己形成機構の解明」については、計画通りに実験を進め、乳がん特異的にヒアルロン酸を過剰産生するヒアルロン酸合成酵素2遺伝子のコンディショナルトランスジェニックマウスを確立するなど、当初目標をほぼ達成した。しかし、計画段階では予期していなかった予算成立の遅れと研究補助員の採用が不調に終わったことを受け、当初予定していた実験計画の一部についてその実施を次年度以降に見送った。その対応策として、平成24年度に予定していた研究項目の「耐性がん細胞の免疫回避機構の解析」について、その実施を前倒しし、不測の事態の対応に努めた。以上の理由により、研究計画に若干の遅れが生じている。 今年度、実施を見送った研究内容は、がん組織における炎症細胞動員やがん細胞死の経時的解析であり、平成24年度での実施を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、不測の事態に対応するため研究実施計画の一部順序を変更して実施した。そのため、次年度以降の計画と到達目標を順次変更して効率的な計画実施に努める。 当該年度は、ヒアルロン酸合成酵素2遺伝子を過剰発現する乳癌発症モデルマウスを用いて、がん組織の経時的解析を実施する。即ち、マウスに発生した乳がん組織を経時的に摘出し、対照乳がん組織と炎症細胞の浸潤や癌細胞死、そして癌幹細胞の濃縮について比較・検討する。また、マクロファージなど免疫細胞の活性抑制に働く分子の特定を試みる。同時に、免疫抑制作用を有している因子については、ELISA法を用いて定量解析を行い、これら分子の関与を調べる。今後、実験補助員を採用し、当初計画していた研究体制を速やかに構築した後、今年度未実施の上記研究項目について対応するとともに、当初予定の計画についてもその完遂を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度、実験補助員の採用が不調に終わったことにより、執行を予定していた実験補助員に係る費用が未使用となった。また、研究実施開始時期が遅延し、一部の計画については次年度以降に実施することとした。このため、消耗品費についても一部のみの執行となった。次年度は、未実施の研究計画を当初期間内に完了するため、実験補助員の勤務時間を当初計画より延長し、これに係る費用を増額して対応する。また、実験計画の見直しに伴って、消耗品費の増加が見込まれるため、今年度未使用額を加算した額を計上して対応する。そして、次年度は得られた成果を発表するための経費を計上する。
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Research Products
(4 results)