2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト化マウス薬剤評価系を用いた新規エイズ治療薬の開発とHAARTの改善・強化
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23590481
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
大隈 和 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 室長 (80315085)
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Keywords | ヒト免疫不全ウイルス1型 / エイズ / 新規治療薬 / ヒト化マウス / 感染実験動物モデル |
Research Abstract |
昨年度から、エイズ/ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の標準的な治療法であるHAART (Highly active anti-retroviral therapy)を補完あるいは必要に応じて代替する新規治療薬の開発を目的に、ヒト免疫機構を構築したヒト化マウスのHIV-1感染モデルを用いて、本研究を進めている。具体的には、重度免疫不全マウスにヒト造血幹細胞を移植してヒト化マウスを構築した後、HIV-1を感染させて感染モデルを作製し、その生体内で新規エイズ医薬品候補がHIV-1感染を効果的に制御しうるかどうか検討している。 本年度は、新規医薬品候補として、ゲノム中のG遺伝子を欠損させ、その代わりにHIV-1受容体であるヒトCD4、CXCR4、及びCCR5をコードする3遺伝子を組み込んで発現させた組換え水疱性口内炎ウイルス(VSV)を創製した。この組換えウイルスは、in vitroにおいて、HIV-1実験室適応野生株のX4株或いはR5株のエンベロープ蛋白を発現させた細胞のどちらにも特異的に感染することが分かった。 また、ヒト臍帯血由来の造血幹細胞を重度免疫不全マウスであるNOGマウスに移植し、ヒト化NOGマウスを構築する方法の最適化を検討した。特に、ヒト臍帯血からの造血幹細胞の精製方法や、NOGマウスに細胞を移植する前の放射線照射の必要性の有無について検討した。その結果、造血幹細胞に混在する赤血球を効率良く除去し、造血幹細胞の回収率や精製度を向上させることができた。また放射線照射の必要性については、放射線照射により造血幹細胞のマウスへの生着率はやや向上するようであるが、長期的な観察には適していない場合があり、必ずしも必要ではないことが分かった。今後は、この最適化された方法でヒト化マウスを作製していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで、ヒト臍帯血由来の造血幹細胞をNOGマウスに移植してヒト化NOGマウスを構築し、このヒト化マウスにHIV-1実験室適応株(X4株、R5株)を感染させて感染モデルを作製してきた。このモデルマウスに、新規医薬品候補として、ゲノム中のG遺伝子を欠損させ、その代わりにヒトCD4、CXCR4或いはCCR5、及びOX40Lをコードする遺伝子を組み込んで発現させた組換えVSVを接種し、この新規医薬品候補のHIV-1感染抑制効果を明らかにすることができた。HIV-1感染モデルとしては、HIV-1の実験室適応株だけでなく、臨床分離株(薬剤耐性株を含む)を感染させたヒト化マウスモデルも作製していきたいが、まだこの感染モデルの作製ができていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヒト化マウスにHIV-1臨床分離株を感染させたモデルマウスも作製し、この感染モデルマウスに新規治療薬候補(組換えVSV)を投与してその有効性を検討していく。また、臨床的に大きな問題となっているHIV-1薬剤耐性株を用いて同様に感染モデルマウスを作製し、その感染に対する組換えVSVの治療効果を評価していきたい。このことにより、HAARTでは治療困難なHIV-1感染症に対しても有効な新規治療薬の開発を推し進めていく。さらに、HAART薬剤だけでは感染したHIV-1を完全に体内から排除することは非常に困難であるため、組換えVSVとHAART薬剤との併用により、生体内からHIV-1を完全に排除しうるような新規治療法の確立も検討していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も、本研究費から、動物感染実験、ウイルス定量実験、細胞培養実験、遺伝子組換え・発現実験などに必要な一般的な消耗品の費用を執行する予定である。特に、動物感染実験の際の動物購入、ウイルス調製やサンプル処理・解析に多くの消耗品が必要であるため、その費用の執行を計画している。 また、研究成果の準備・発表や情報収集のための費用が必要であるため、その費用を執行の予定である。具体的には、研究成果の準備・発表の際の一般的な事務作業などに係る諸費用や、学術集会・研究会などに参加するための交通費と旅費の執行を計画している。
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Research Products
(1 results)