2012 Fiscal Year Research-status Report
蠕虫嫌気的ミトコンドリアキノールーフマル酸還元酵素の細菌発現系の開発
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23590484
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
坂元 君年 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (50361465)
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Keywords | 蠕虫 / ミトコンドリア呼吸鎖 |
Research Abstract |
低酸素に適応した蠕虫ミトコンドリアに特有の嫌気的呼吸鎖の要であるキノール-フマル酸還元酵素(QFR)は好気的ミトコンドリア複合体IIの逆反応を効率よく触媒することで特徴付けられる。この反応を可能にする酵素学的特性を解明するに当たり、部位特異的変 異体の特性解析から得られる情報は大きい。そこで、現在は確立されていない細菌での蠕虫QFRの発現系を構築し、活性評価、阻害剤応答、X線結晶構造解析を通じて反応機構の解明を目的とする。本研究計画については特にエキノコックスQFRについて機能的発現系の開発を目指している。 エキノコックスQFR遺伝子をバクテリアで発現するに当たり、異なるバクテリア間でどの程度の範囲まで異種生物間での複合体IIの発現が可能であるかを確認するために、複合体IIを欠損したRhodobacter capsulatusにおいてRhodospirillum rubrum複合体IIをプラスミドにより導入したところ、機能的に発現することが確認できた。プロモーター領域についてはR. capsulatus由来、R. rubrum由来の2種類を検討した結果、R. capsulatusプロモーターによりわずかに高い発現が得られたが、プロモーター近傍の同義置換である塩基置換が発現の可否に影響したことから、最終的にはコドンの最適化が必要である可能性が示された。 複合体形成に関与すると考えられるsdhaf1,2それぞれの作用点を明らかにするには複合体IIの4つの構成サブユニットの一つか二つを外来生物のものと置換する手法が考えられるため、親水性サブユニットの二つはR. rubrum由来、膜貫通サブユニットの二つはR. capsulatus由来となるようにしたところ、これも機能的発現を確認できた。エキノコックスについても同様の手法で段階的に導入することで問題点の絞り込みが容易になると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定ではR. rubrumの複合体II欠損株が作製済みである時期だが、遺伝子欠損導入のためのプラスミドの選定が不適切であったことが判明し、目的の欠損株が得られなかった。また、R. rubrumでの同義置換が発現に影響することが分かるまでの間、プロモーターの検討に導入困難な野生型配列を使用していた事により予定よりも時間を要した。これらの結果からR. rubrumでの異種生物複合体II発現にはR. capsulatusでの手法とは異なる方法を選択すべきであることが分かり、今後のR. rubrumでの実験がより確実に進行することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
第一にR. rubrumの複合体II欠損株作製を速やかに終わらせる。エキノコックス複合体IIのサブユニット導入にはR. capsulatus、R. rubrumの両方で検討し、まずは機能的発現が可能なキメラ型について検討する。これは単に発現可能なパターンを闇雲に探すという発想ではなく、エキノコックス複合体II遺伝子のコドンがどの程度これらの細菌に許容されるかを検討するとともに、sdhaf1および2がどの段階で作用するかを明らかにすることにつながる。 一方で、エキノコックスとR. rubrumに共通して見られるフマル酸還元活性に影響すると考えられるアミノ酸配列をR. capsulatusに導入し、その影響を観察する。さらにR. rubrumでこのアミノ酸をR. capsulatusと同じアミノ酸に置換することでその影響を双方向から明らかにする。 さらに、R. capsulatusで発現させたR. rubrumの複合体IIがロドキノンの有無によりその性質に変化があるかどうか、さらにキメラ酵素についても生化学的、反応速度論的に解析することにより、複合体全体の性質にそれぞれのサブユニットがどのように、またどの程度貢献しているかを明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
酵素の性質を調べるために、分光光度計での活性測定に加えて、酸素消費測定が必要になってくるため、酸素消費モニターを購入する。 消耗品としては遺伝子操作に必要な酵素、キット、細菌培養試薬等。タンパク質実験に使う一般試薬、酵素活性測定に必要な一般試薬、基質、阻害剤等を購入する。また、成果発表、関連研究の情報収集に旅費が必要となる。
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[Journal Article] Cloning and characterization of hypoxia-inducible factor-1 subunits from Ascaris suum - a parasitic nematode highly adapted to changes of oxygen conditions during its life cycle2013
Author(s)
Goto, M., Amino, H., Nakajima, M., Tsuji, N., Sakamoto, K., Kita, K.
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Journal Title
Gene
Volume: 516
Pages: 39-47
DOI
Peer Reviewed
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