2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590490
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
新川 武 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (50305190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮田 健 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 研究員 (20448591)
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Keywords | ワクチン / 免疫 / マラリア / 熱帯感染症 / タイ国 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
三部構成免疫賦活システムは、①ワクチン抗原、②コアモチーフ、③標的リガンドの三部から構成される我々が独自に開発したワクチンプラットフォームである。TIPSは搭載された抗原を標的リガンドによって免疫担当細胞へ運搬できるシステムである。平成23年度には、三日熱マラリア伝搬阻止ワクチン(Pvs25)、5量体コイルドコイル(COMP)、そして、標的リガンドにZドメイン(Protein A由来)を採用したTIPSを構築し(COMP-Z:Pvs25)、その三日熱マラリア伝搬阻止機能を解析した。平成24年度は、このプロトタイプTIPSの機能を向上させる目的で、リガンドをZドメインよりも高いIg結合能をもつSpGB(Protein GのBドメイン)、あるいは、Igのアイソタイプに依存せず幅広いIg結合能をもつPpL(Protein LのBドメイン)に変更し、機能解析を進めた。まず最初に、COMPとこれらのリガンドの融合タンパク質(COMP-SpGB、COMP-PpL)を大腸菌で発現させた。その結果、これらの融合分子はCOMP-Z同様、大腸菌から分泌発現されること、また、各種Igに対する結合能を有することも確認した。次に、これらの融合分子にPvs25を化学融合法を用いて搭載し(COMP-SpGB:Pvs25およびCOMP-PpL:Pvs25)、その免疫原性およびマラリア伝搬阻止機能を解析した。具体的には、BALB/cマウス(雌6週齢)に皮下投与し、Pvs25特異的血清IgG力価を測定した。その結果、全てのTIPS複合体投与群において、Pvs25単独投与群と比較し、有意に抗体価が上昇していた。また、ZよりもSpGBやPpLにリガンドを変更したTIPS複合体の方が高いIgG抗体価を誘導し、伝搬阻止ワクチン機能も有意に向上することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、マラリアに対するタンパク質性のワクチン開発に資する新たな「ワクチンプラットフォーム」を構築することである。申請者独自の技術である「三部構成免疫賦活システム(Tricomponent Immunopotentiating System: TIPS)」は、アジュバント的機能およびデリバリー(標的化)機能をもつ分子であることが示されている。特に、タイ国マヒドン大学の共同研究者らと共に実施しているメンブレンフィード法では、実際のマラリア感染患者の原虫を用いており、TIPSのフィールド原虫株に対する効果が実証されている。 TIPSは、①ワクチン分子、②コアモチーフ、③リガンドの三部から構成される複合体であり、TIPSの各構成部分は目的に応じて換装(入れ換え)可能である。平成24年度は、TIPSの機能を向上させるため、③のリガンドを変更する実験を進めた。その結果、Z分子をリガンドにもつプロトタイプTIPSと比較し、SpGBやPpLをリガンドにもつTIPSは、抗体誘導能ならびにマラリア伝搬阻止機能が向上していることが示された。リガンドの換装がもたらすワクチン機能向上への影響は、当初想像していたレベルよりも高い結果となった。 今年度は、本システムのさらなる高度化を目指す研究を実施した。その結果、研究開始時の目標は十分達成されたと判断し、総合的な自己評価として、「当初の計画以上に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、このTIPS技術基盤の汎用性を示す必要がある。特に、以下の3点を具体的な本システム高度化のための方法として採用することは前年度の報告書内でも述べたとおりである。 (1)自然免疫活性化機構の活用 (2)抗原提示細胞への運搬機能およびその抗原提示機能活性化 (3)抗原の反復整列化による高分子量化技術の活用 平成23-24年度は、モデル抗原として、ピキア酵母発現Pvs25H-A(三日熱マラリア原虫伝搬阻止ワクチン候補抗原)を用いたが、今後は、同じくピキア酵母発現のMSP1-19(ネズミマラリアメロゾイト期の抗原)を用いて機能評価することも計画している。また、マラリアワクチンへの応用だけでなく、他のヒトや動物の感染症へ本技術基盤を活用することを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主な使途は研究用消耗品類の購入である。特に、タンパク質精製用試薬や動物実験用消耗品が主たる品目としてあげられる。よって、使用計画はそのように立てている。
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Research Products
(7 results)