2011 Fiscal Year Research-status Report
熱帯熱マラリア原虫由来非メバロン酸経路酵素群に関する構造機能相関研究
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23590495
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
田中 信忠 昭和大学, 薬学部, 准教授 (00286866)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ドラッグデザイン / 非メバロン酸経路 / マラリア |
Research Abstract |
寄生原虫感染症であるマラリアは、世界中で毎年3億~5億人の感染者、100万~300万人の死者を出している。本研究では抗マラリア薬のリード化合物の創製を志向し、熱帯熱マラリア原虫の非メバロン酸経路を制御する化合物(阻害剤)の合理的開発を行うため、同経路酵素群の網羅的立体構造解析ならびにin vitro再構成系や物理化学的手法を利用した阻害剤探索を行う。 今年度は、主として熱帯熱マラリア原虫非メバロン酸経路第二酵素PfDXRの立体構造解析に取り組み、阻害剤非存在下の3成分(PfDXR/Mn/NADPH)複合体、阻害剤存在下の4成分(PfDXR/Mg/NADPH/inhibitor)複合体2種の立体構造解析に成功した。立体構造解析の結果、阻害剤の結合により2量体の各々のサブユニットの構造がオープン型からクローズド型へと変化することが明らかとなった。また、阻害剤非結合型ではディスオーダーしていた活性部位の10残基程度のループ領域が、阻害剤結合型では安定な構造をとり、活性部位を覆っていることが明らかとなった。2種類の阻害剤複合体の構造比較から、Trp296側鎖の2面角の微調整により、阻害剤の構造に応じて酵素分子に誘導適合が生じていることが明らかとなった(Umeda et al., Sci. Rep. 1(9), 1-8 (2011))。これら研究成果は、高エネルギー加速器研究機構ホームページにおいて、「ハイライト」として紹介された。http://www.kek.jp/ja/NewsRoom/Highlights/20110616131122/また、Nature Japanホームページにおいても、「系列誌の注目の論文」として紹介された。http://www.natureasia.com/japan/srep/highlights/srep00009.php
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の対象である熱帯熱マラリア原虫非メバロン酸経路酵素群の中で、PfDXRは、その阻害剤fosmidomycinがclindamycinとの併用により第二相臨床試験に進んでいるという観点から、最も重要な研究標的である。そのPfDXRに関し、fosmidomycinとの複合体だけでなく、より強力な阻害剤であるFR900098との複合体の立体構造解析にも成功したことは、当初の計画以上に進展していると考えている。一方、他の酵素群に関しては、組換え体の大量発現条件の検討に悪戦苦闘している状況である。従って、研究計画全体としては、おおむね順調な達成度と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
阻害剤複合体の立体構造解析に成功したPfDXRに関しては、fosmidomycin誘導体との複合体の立体構造解析を進める。近年、nMオーダーの阻害活性を有するfosmidomycin誘導体の合成が続々と報告されており、それらの化合物を入手し、結晶化・構造解析を行う。他の酵素群に関しては、大量発現条件の検討を継続する。また、PfDXRに関し、現在のアッセイ系で多くの阻害剤スクリーニングを実施するには、大量の精製酵素を要する。そこで、より少量の精製酵素で阻害剤アッセイができるようなアッセイ系の開発にも取り組みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主たる用途は、組換え蛋白質の発現系構築に必要な制限酵素やベクター類、精製に必要な各種樹脂類、結晶化に用いる試薬及び器具類等消耗品の購入である。また、2012年12月に開催されるアジア・オセアニア結晶学会において本研究の成果を発表し、国内外の専門家との議論を通じて本研究を発展させたい。
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[Journal Article] Molecular basis of fosmidomycin’s action on the human malaria parasite Plasmodium falciparum.2011
Author(s)
Umeda, T., Tanaka, N., Kusakabe, Y., Nakanishi, M., Kitade, Y., & Nakamura, K.T.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 1(9)
Pages: 1-8
DOI
Peer Reviewed
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