2013 Fiscal Year Annual Research Report
慢性感染成立に寄与する消化管寄生線虫成分と宿主免疫応答
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23590497
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
石渡 賢治 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (00241307)
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Keywords | 腸管免疫 / 感染 / 寄生虫 / 蠕虫 / 樹状細胞 / Nippostrongylus / Heligmosomoides / マウス |
Research Abstract |
消化管寄生線虫症のほとんどは慢性に感染している。本研究の目的は、マウス感染モデルを用いて消化管寄生線虫による慢性感染の成立メカニズムを明らかにする事である。このために、急性に感染が終息するNippostrongylus brasiliensis(Nb)感染と、感染経過が慢性に移行するHeligmosomoides polygyrus(Hp)感染における樹状細胞とT細胞の応答を比較し、合わせて関与する寄生虫成分を探索した。 最終年度の実績:1) 抗原特異性の高い虫体の培養上澄中タンパクを質量分析にかけて比較し、両種のESTデータベースで分子同定を進めた。2) Hpの切片を作成し、FlexImaging(Bruker)によって解析した。各m/zの局在パターンから成分をピックアップし、代謝物データベースMETLINを用いて、スペクトルパターンとの検討から代謝物候補の推定を行った。3) 腸管固有層の樹状細胞の解析は寄生虫感染時においては困難であったものの、予備データでは感染による樹状細胞上のMHC class II発現低下は固有層の樹状細胞においては認めない。 成果のまとめとその意義:腸管寄生線虫感染において、その主免疫応答の場である腸間膜リンパ節では適応免疫の主軸であるT細胞への抗原提示の担い手が時系列的にシフトしていることを明らかにした。この応答はT細胞への刺激後、寄生虫の排除に関係なく早い段階で抑制的に働くようになり、その早さと強度および感染部位が慢性感染への移行に影響すると考えられた。解析が未完であるが、これに寄生線虫の代謝産物が関わっていることが他の研究グループからの報告でも支持されてきている。この予想外の成果は、免疫応答の初動と調節に種々の細胞が入れ替わりながら関わっていることを具体的に示したものとして、その理解に大きく貢献した。さらにこれを基に感染の慢性化を破綻させる具体的な方策が見出されてくることが期待される。
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