2011 Fiscal Year Research-status Report
環境常在マイコバクテリアによるTh2バイアス誘導の分子機構
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23590503
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松永 勇 京都大学, ウイルス研究所, 准教授 (00254425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 永年 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80326256)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | マイコバクテリア / 脂質 / 免疫応答 |
Research Abstract |
Mycobacterium avium complex(MAC)は水中、塵埃、土壌など自然環境のいたるところに常在する細菌である。MACはそこからヒトに感染し顕性のMAC症を引き起こす他、不顕性の感染も起こすと考えられている。この不顕性感染が、結核のワクチンであるBCGの防御効果を低下させるという報告が相次いだ。我々の検討でもMAC脂質は非常に強いTh2反応をモルモットに引き起こす事を見出している。結核防御にはTh1免疫応答が必須なので、そのカウンターパートであるTh2応答が惹起される事はBCGの効果を低下させる事になろう。この応答はMACによる前感作で増強するので、MAC感染によって宿主の免疫状態が変化することが想定された。また、このTh2応答はMAC脂質を皮内投与した時に、著しい好酸球の浸潤を伴う病理反応として観察される。惹起脂質成分として我々は既にtrehalose-6, 6'-dimycolate(TDM)を見出しているが、興味ある事に丁度TDMを半分にしたような類似脂質、glucose-6-monomycolate(GMM)では全くTh2応答を誘導できなかった。GMMを感作済み個体に接種すると、単核球を中心とする炎症が惹起され、所属リンパ節においてもTDMを用いた時に誘導されるIL-5、IL-10は見られず、反ってIFN-gやTNFの誘導が見られた。ところが、この研究の過程でマイコバクテリアが産生できる、別のミコール酸脂質、glycerol monomycolate(GroMM)は非常に強いTh2応答を誘導できることが明らかになった。GroMMはTDMに匹敵する強度のTh2応答を惹起できたが、TDMとは異なり結核菌標準培地ではほとんど合成されない。しかし最近報告されたGroMM特異的T細胞の存在を考えると、GroMMは生体内環境特異的に産生されている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
応募当初は、モルモットをMACの前感作した上で、TDM投与によるTh2応答の検討を行っていた。しかしこの応答は同量のBCG前感作によっても、程度はずっと低いもののTh2応答がおこる事がわかった。この場合、Th2応答惹起に用いられるTDM量は、MAC前感作の場合に比して数倍から十数倍必要であったことから、MACの方が効率よくTh2応答を起こせるのだろうと考えていた。ところがBCG前感作の場合であっても、普段産生していないGroMMを作らせたBCGを用いると、MAC前感作-TDM惹起に匹敵するTh2応答がみられることがわかった。GroMMは潜伏感染している結核菌に特徴的であるとの報告もある。MACでGroMMの産生が見られるか否かは未だ検討を行っておらず、今年度の反省点になろう。また上述の実験に視点が移行してしまったために、もっと基本的な事柄、例えば前感作に用いる菌量をどこまで下げてもTh2応答を惹起できるのか、といった事柄も検討する必要があった。ただ、TDM以外にもGroMMがTh2バイアスを惹起できること、そして反面GMMはTh2応答を惹起できないことがわかった事は、はじめに想定していた実験計画を、予め意図していたわけではないにしろ前倒しで検討することができた事には意味があったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
達成度の項でも触れたように、これまで感作に用いてきたマイコバクテリア菌量は自然環境からの暴露という観点からは多すぎるとの問題が残されている。そこで前年度では達しえなかった暴露菌量の最少量の検定を行う。この時、これまではTDMしか惹起物質が無かったが、より強力なGroMMが見出されたことで、より少ない菌量でTh2反応が誘導できる可能性がある。GroMMによる応答の感作に用いられたのは、GroMMを発現した菌であった。GroMMはCD1を介して脂質抗原になり得るという報告があることから、菌体でなくとも、GroMM自体が抗原として個体を感作し、Th2型のT細胞を誘導している可能性も考えられる。我々は既にGroMMの精製法を確立している。この精製GroMMを適切なアジュバントと伴にモルモットに投与し、GroMMのブーストによって誘導されてくるT細胞のサイトカインプロファイルをELISA若しくはRT-PCRによって検討する必要がある。本研究は元々MACの感作がTh2バイアスを誘導する、という仮説に基づいている。それ故MACがGroMMを産生かどうかは重要な問題である。もし産生すれば、その機構の解明を目指す。産生しなければ、その他のMAC由来因子を探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は使用する試薬等を安価なものにしたり、できるだけ節約するように努力したため、当初申請した額を使用額が下回ったので、今年度に繰り越している。上の「今後の研究の推進方策」のような研究計画から、応募書類に記載した平成24年度の「設備備品費の明細」及び「消耗品費の明細」に付け加える品名は無い。特に新たに購入を要する設備備品は無い。消耗品の主体は、モルモット等の動物購入費、ELISAキットやアジュバント等の免疫関連試薬やRT-PCRに要する遺伝子操作関連試薬、それとGroMMを中心とした脂質の分離、精製等に必要なクロマトグラフィー試薬等である。「国内旅費」は応募時の計画通り使用する予定である。外国旅費、謝金等およびその他の項目で請求する予定はない。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Glycerol monomycolate, a latent tuberculosis-associated mycobacterial lipid, induces eosinophilic hypersensitivity responses in guinea pigs.2011
Author(s)
Hattori, Y., Matsunaga, I., Komori, T., Urakawa, T., Nakamura, T., Fujiwara, N., Hiromatsu, K., Harashima, H., Sugita, M.
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Journal Title
Biochem. Biophys. Res. Commun.
Volume: 409
Pages: 304 - 307
DOI
Peer Reviewed
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