2011 Fiscal Year Research-status Report
細菌感染におけるインフラマソームの活性化機序と役割の解析
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23590504
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土屋 晃介 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50437216)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | インフラマソーム / absent in melanoma 2 / 肺炎球菌 / カスパーゼ1 / 自然免疫 |
Research Abstract |
本研究では、細菌感染におけるインフラマソームの活性化誘導機序および病態形成における役割を解析している。肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は肺炎や中耳炎、髄膜炎、敗血症などの原因菌である。膜傷害毒素であるpneumolysin(PLY)は本菌の重要な病原因子であり、ほぼ全ての臨床分離株がPLY陽性である。PLYはその膜傷害活性を介して肺炎球菌の定着・生存・侵入に関わると考えられている。また、PLYは炎症応答の惹起にも関与しており、病態形成に重要な役割を果たすと考えられる。申請者らは以前、肺炎球菌感染においてカスパーゼ1の活性化とそれに伴う炎症性サイトカイン応答がPLY依存的に誘導されることを報告したが、その機序および感染における意義は不明であった。そこで今回、肺炎球菌に対するカスパーゼ1活性化応答に関わる宿主側因子の同定を試みた。インフラマソームは病原体や内因性リガンドなど様々な刺激に応じて形成され、カスパーゼ1を活性化させる自然免疫機構である。インフラマソーム形成には複数の受容体分子やアダプター分子が関わっていることから、各インフラマソーム構成分子の肺炎球菌感染におけるカスパーゼ1活性化への関与を検討した。遺伝子改変マウス由来のマクロファージやsiRNAを用い、この応答にAIM2-ASCインフラマソームが中心的な役割を果たすことを明らかにした。AIM2は細胞内でDNAを認識する受容体であり、カスパーゼ1活性化にはマクロファージによる菌の貪食が必要であるため、食胞内の菌から遊離したDNAがPLYの膜傷害活性によって細胞質に移行している可能性が考えられる。本研究により、一般的に細胞外病原菌として知られる肺炎球菌が細胞内受容体に認識されて炎症応答を誘導することが明らかになった。これは、肺炎球菌感染の病態形成や宿主防御機構を理解する上で重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の申請時、平成23年度の研究計画で肺炎球菌感染におけるカスパーゼ1活性化がどのインフラマソーム(受容体)を介して誘導されるのか明らかにすることを予定していた。本研究では、研究実績の概要に示す通り、肺炎球菌感染におけるカスパーゼ1活性化にAIM2-ASCインフラマソームが中心的な役割を果たすことが明らかになり、この成果は既に学会や科学雑誌(査読あり)において公表されている。さらに、平成24度に計画していた肺炎球菌のマウス経鼻感染モデルにおけるインフラマソームの役割の解析にも着手を開始しており、本研究はこの目標について当初の計画以上に順調に進展していると判断できる。 また、本研究はリステリア敗血症モデルにおけるASC依存的な致死因子の同定も目的にしており、その有力な候補としてHMGB1を予想し、リステリア感染におけるHMGB1の誘導機序を平成23年度に明らかにする予定であった。しかしながら、本研究においてHMGB1ではなくIL-18が宿主の早期感染死に関わっていることが明らかになり、またその誘導機序としてインフラマソームと好中球由来プロテアーゼが関わることが示唆された。従って、申請時の研究計画とは異なる展開をみせているものの、この目的における本研究の進捗具合はおおむね順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の成果をもとに、肺炎球菌におけるインフラマソームの生体内での役割を解析する。まず、マウスを用いた肺炎球菌肺炎モデルを作製する。これは他の報告に倣って経鼻感染で行う。肺炎球菌肺炎モデルにおけるカスパーゼ1活性化およびカスパーゼ1依存的サイトカインの誘導へのインフラマソームの関与を検討するため、カスパーゼ1欠損マウス、ASC欠損マウスおよびNLRP3欠損マウスを用いる。肺炎球菌を経鼻感染させた各系統のマウスから肺胞洗浄液を回収し、ウエスタンブロットで活性型カスパーゼ1や成熟型IL-1βを検出する。IL-1βおよびIl-18はELISA法でも測定し、分泌量を定量する。各インフラマソーム構成分子の感染抵抗性への関与を調べる目的で各系統のマウスに肺炎球菌を経鼻感染させ、生死を観察して生存曲線を得る。また、肺などの臓器を回収し、CFUカウント法で臓器内菌数を測定する。フローサイトメトリー法や組織切片のHE染色などで肺胞腔への好中球(マクロファージ)の浸潤を解析し、炎症の度合いを評価する。これらの解析で肺炎球菌肺炎モデルにおけるインフラマソームの役割が詳細に解明できると予想される。 前年度にリステリア敗血症モデルにおけるASC依存的な致死因子としてIL-18が同定されたため、本年度はその誘導機序の詳細および作用機序を明らかにする。具体的には、前年度にIL-18の誘導に関わることが明らかになった好中球由来プロテアーゼがなぜASC依存的に誘導されるかを解明する目的でASC欠損マウスにおける好中球の組織浸潤やASC欠損マウスから単離した好中球の機能解析を行う。また、前年度の解析からIL-18の致死因子としての機能を介在する細胞としてNK細胞が予想されたため、NK細胞除去の影響およびASC欠損マウスにおけるNK細胞のFasL発現やIL-10産生を解析し、その致死作用を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウス血清中や肺胞洗浄液中の様々な炎症性サイトカインを測定するため、多種のサイトカイン測定用ELISAキット(または抗体ペアと標準タンパク)を用意する。サイトカイン測定用ELISAキットは高額であるため、研究費全体におけるELISAキット購入費用の比重は高い。本研究ではマウスの感染モデルを用いた実験を主に行うため、多数のマウスを必要とする。野生型マウスのみでなく多くの遺伝子改変マウスも維持しているため飼育費用が嵩むと予想される。野生型マウスの購入費用は1,200円/匹であり、研究計画では100匹ほど使用予定である。また、ウエスタンブロットや蛍光染色、in vitroおよびin vivoでの中和などに用いる消耗試薬として抗体を多種購入予定である。これらおよびこれら以外の消耗品費として50~100万円使用する予定である。 本年度は所属学会(国内3学会)にて研究成果を発表する予定であり、旅費として15万円の予算を計上している。また、論文投稿料(2雑誌に投稿予定)や学会参加費としてその他に35万円の予算を計上している。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Critical roles of ASC inflammasomes in caspase-1 activation and host innate resistance to Streptococcus pneumoniae infection.2011
Author(s)
Fang R, Tsuchiya K, Kawamura I, Shen Y, Hara H, Sakai S, Yamamoto T, Fernandes-Alnemri T, Yang R, Hernandez-Cuellar E, Dewamitta SR, Xu Y, Qu H, Alnemri ES, Mitsuyama M.
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Journal Title
The Journal of Immunology
Volume: 187
Pages: 4890-4899
DOI
Peer Reviewed
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