2013 Fiscal Year Research-status Report
細菌感染におけるインフラマソームの活性化機序と役割の解析
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23590504
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土屋 晃介 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50437216)
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Keywords | インフラマソーム / 肺炎球菌 / 肺粘膜 / 粘膜免疫 / ASC / NLRP3 |
Research Abstract |
本研究の目的は感染モデルにおけるインフラマソーム活性化機序およびその役割の解析を通じて細菌感染における宿主防御機構や炎症による病態悪化について理解を深めることである。 インフラマソームは様々な刺激によって形成が誘導される細胞内タンパク複合体であり、カスパーゼ1活性化を介して炎症性サイトカインの産生や細胞死などの細胞応答の誘導に関わると信じられている。肺炎球菌もカスパーゼ1活性化を誘導するが、我々はこれまで、遺伝子改変マウス由来のマクロファージやsiRNAを用いてAIM2インフラマソーム(AIM2、ASC、非活性型カスパーゼ1で構成される)が肺炎球菌に対するカスパーゼ1活性化応答に中心的な役割を果たすことを明らかにしてきた。さらに、各インフラマソーム構成分子を欠損するマウスに肺炎球菌を経鼻感染させ、菌の臓器内増殖や生存曲線を調べることで感染抵抗性を比較したところ、生体の肺ではNLRP3とASCがカスパーゼ1非依存的に肺炎球菌感染に対する宿主防御を担うことが明らかになった。この機序を解明すべく肺内の遺伝子発現解析を行ったところ、複数の粘膜防御因子がNLRP3-ASCに依存して発現することが明らかになった。カスパーゼ1はこれらの粘膜防御因子の発現には関与しておらず、これがインフラマソーム非依存的な発現であることがわかった。さらに、これら粘膜防御因子の一つが肺炎球菌に対して防御的に働くことが示唆された。さらに解析を進めたところ、NLRP3-ASCの下流で粘膜防御因子の発現を制御する転写因子の有力な候補を同定できた。 以上の結果から、インフラマソーム構成タンパクであるNLRP3とASCは粘膜自然免疫の亢進というインフラマソームと異なる機序で細菌感染に対する宿主防御に貢献することが世界で初めて明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的はおおむね達成されている。NLRP3とASCが細菌感染に対する宿主防御をカスパーゼ1非依存的に担うことがわかり、その機序について多くのことが明らかになった。これらの知見は”インフラマソームはカスパーゼ1活性化とIL-1ファミリーサイトカインの成熟化を介して宿主防御に貢献する”というこれまでの常識と異なるものであり、当該研究分野に大きなインパクトを与えると予想される。しかし、このNLRP3-ASCを介した新規宿主防御経路を完全に理解するためには更なる解析が必要であり、また、今回の発見は未だ論文として未発表である。今後、これらを進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、生体の肺においてNLRP3とASCが肺炎球菌感染に対する宿主防御をカスパーゼ1非依存的に担うことが明らかになった。さらに、複数の粘膜防御因子の発現がNLRP3-ASCに依存することが明らかになり、この新しい粘膜自然免疫機構に関わる転写因子の有力な候補を同定した。 今後、この候補転写因子が肺の上皮細胞において実際に粘膜防御因子の発現を制御するか確かめる必要がある。気道上皮細胞株や生体の気道においてこの転写因子を強制発現させる、またはその発現を抑制し、粘膜防御因子の発現に起こる変化を解析する。さらに、この転写因子が肺炎球菌感染への抵抗性に関わるかを同様の手段で検討する。この新規粘膜自然免疫機構の機序をさらに明らかにするため、NLRP3とASCがこの転写因子の発現をどのような機序で制御するかを明らかにする。この転写因子は特定のサイトカインで発現が誘導されることが知られており、NLRP3とASCが肺炎球菌感染においてこれらのサイトカインの産生に関わるか、関わるならばどのような機序であるかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本課題では実験をほぼ計画通りに遂行できたが、予定よりも実験期間が若干長引き、論文としての発表が遅れている。現在、本課題に関する2報の論文を投稿中であり、さらに1報を投稿する予定である。これらの論文の審査において審査員から追加実験を求められる可能性がある。この際に物品を購入する必要が生じる。また、これらの論文が順調に受理された後、雑誌社から投稿料や手数料、別刷り代などを求められる。 主な未使用額の使途は、論文の投稿料や手数料、別刷り代などである。現在、3報の論文を科学誌から公表する予定であり、これら全てについての費用が30万円から40万円ほどかかると考えられる。さらに、論文の審査において審査員から追加実験を求められることが一般的であるため、追加実験のための物品を購入する可能性が高い。これに10万円から20万円ほど必要であると考えている。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] The RD1 locus in the Mycobacterium tuberculosis genome contributes to the maturation and secretion of IL-1α from infected macrophages through the elevation of cytoplasmic calcium levels and calpain activation.2014
Author(s)
Yang R, Xi C, Sita DR, Sakai S, Tsuchiya K, Hara H, Shen Y, Qu H, Fang R, Mitsuyama M, Kawamura I.
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Journal Title
Pathog Dis.
Volume: 70
Pages: 51-60
DOI
Peer Reviewed
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