2012 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫性膵炎の発症機序と、細菌が誘導する自然免疫賦活の関与の検討
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23590522
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
春田 郁子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (80221513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 淳二 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70182300)
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Keywords | 自己免疫性膵炎 / 細菌 / 自然免疫 / 慢性炎症 / 自己抗原 / 分子擬態 / 自己抗体 |
Research Abstract |
IgG4関連疾患として注目されている自己免疫性膵炎 (autoimmune pancreatitis:AIP) の病因に、細菌関連物質が関与するという仮説のもとAIPモデルを作製し検討を行った。C57BL/6 マウス腹腔内に、不活化Escherichia coliを投与し、マウス膵臓に、AIP様の、膵管周囲を中心とした高度の線維化を伴う限局性の炎症と高γ-glob血症、抗lactoferrin抗体、抗carbonic anhydrase-II抗体の産生を来たすことを見出した。この E. coli投与マウスをドナーとし、その脾細胞をnaïve RAG2-/-マウスに投与すると、レシピエントのRAG2-/-マウス膵臓にAIP様の膵臓の炎症が再現でき、膵臓の浸潤細胞はCD3優位でドナー由来細胞であった。これらの事実に基づき、AIPの病因となり得るE. coliの病原因子の特定を進めている。E. coli外膜のlysateを2次元電気泳動し、これをトランスファーしてE. coli又はPBS投与マウスの血清と反応させE. coli投与マウスの血清と反応したスポットを切り出して解析した。このうち候補を絞りE. coliの菌体外成分の特定を行った。この菌体外成分に関してwild type とhyperviable domain部のリコンビナント蛋白を作成し、マウスに前述と同様の投与実験を行い、AIP様の膵組織所見と抗体産生をみた。これらのリコンビナント蛋白を抗原としてヒトAIP、AIP以外の膵疾患、膵臓疾患freeコントロール群の血清を用いてELISAを行った。AIP 患者血清はhyperviable domain部の蛋白と高反応性を示す傾向が見られた。現在この蛋白の抗体を作製し更なる解析を進めると共に、AIPの新たな診断マーカーになり得る可能性がないか等の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、平成23年度に確立したAIPマウスモデルより、細菌の菌体成分由来の病原因子となり得る候補を抽出し精査していくことを第一の目標に研究を進めていった。その結果、TOF/MS解析にて、E. coliの菌体外成分由来のAIPの病原因子の候補の可能性のある蛋白を少なくとも1つ絞りこむことができた。更に、この成分に関してリコンビナント蛋白を作成することができた。加えて、このリコンビナント蛋白を用いて、マウスに前述と同様の投与実験を行い、AIP様の膵組織所見と抗体産生が生じることが確認された。 また、これらのリコンビナント蛋白を抗原として倫理委員会で承認を得て、ヒトの臨床検体で検討を行い、AIP 患者血清がこのリコンビナント蛋白と高反応性を示す傾向が見られ、マウスの実験で得られた結果が臨床にフィードバックできる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成24年度に絞り込まれたAIPの病原因子の候補に関して、膵病変と自己抗体の産生だけではなく、自然免疫系の細胞と獲得免疫系の細胞のレギュレーション、サイトカインの産生など、詳細な免疫学的検討を行っていく。 (2)分子擬態の可能性の検討を行い、自己抗原の可能性を調べていく。 (3)新たな診断マーカーの開発の可能性を検討しさらなる臨床へのフィードバックができないか検討していく。 (4)TOF/MS解析にて、E. coliの菌体外成分由来のAIPの病原因子の候補の可能性のある蛋白を少なくとも1つ絞りこむことができた。今後、他のスポットに関しても上記(1)から(3)の検討を行い、AIPの病態との関連を調べていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用予定は、疾患モデル作製ならびにin vivo解析のためのマウスの購入、病理組織学的検討やFACSによる細胞表面マーカー解析のための各種モノクローナル抗体の購入、リコンビナント蛋白作製のための消耗品の購入、抗体作製に関連した、試薬・培養液の購入に使用する予定である。また、結果を国際会議などで発表し、国際学会雑誌に報告するための経費などにも使用していく予定である。 AIPモデルの作製に際して、各種 strain のマウスを購入する。また、細菌/菌体成分の解析・リコンビナント蛋白の作製に培養液・試薬、フラスコ、プラスチック製品等を購入する。AIPモデルの免疫組織検討に各種抗体、試薬、ガラス製品を用い、血清サイトカインなどの測定にキットを購入する。また、細胞表面マーカーの解析に各種抗体を購入する。病原因子の解析、候補ペプチドなどを用いてin vitroでの反応も合わせて検討していくため細胞培養に培養液、牛胎児血清を使用する。更に、TLR4, MyDD88などの免疫応答への関与を調べる予定であり、各々のノックアウトマウス等も購入予定である。血清中の自己抗体ELISA、ウエスタンブロットなどで行い、免疫原性蛋白の解析をTOF/MSなどで行うため、抗体、プラスチック製品、メンブレン、試薬などを使用する。また、病原因子のpathogenicなepitopeの同定のため、deletion mutantなども適宜作製していく予定であり、このmolecularな解析のために各種酵素の購入なども予算に計上した。また候補因子のペプチドの合成やプライマーの合成も含めて使用する予定である。 研究成果は国内・国際学会で発表し、英文で論文発表していく。英文論文投稿に際してプロフェッショナルな英文校正を発注する予定でありこの経費の予算を計上した。また、論文掲載のための印刷代を予算に計上した。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Involvement of commensal bacteria may lead to dysregulated inflammatory and autoimmune responses in a mouse model for chronic nonsuppurative destructive cholangitis2012
Author(s)
HARUTA Ikuko, KIKUCHI Ken, NAKAMURA Minoru, HIROTA Katsuhiko, KATO Hidehito, MIYAKAWA Hiroshi, SHIBATA Noriyuki, MIYAKE Yoichiro, HASHIMOTO Etsuko, SHIRATORI Keiko, YAGI Junji
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Journal Title
Journal of clinical immunology
Volume: 32(5)
Pages: 1026-1037
DOI
Peer Reviewed
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