2013 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫性膵炎の発症機序と、細菌が誘導する自然免疫賦活の関与の検討
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23590522
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
春田 郁子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (80221513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 淳二 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70182300)
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Keywords | 自己免疫性膵炎 / 細菌 / 自然免疫 / IgG4-RD(IgG4関連疾患) / 自己抗原 / 分子擬態 / 自己抗体 / メモリーT細胞 |
Research Abstract |
IgG4関連疾患の膵病変である自己免疫性膵炎 (autoimmune pancreatitis:AIP) の病因に、細菌関連物質が関与するという仮説を立てAIPモデルを作製して検討している。C57BL/6 マウス腹腔内にEscherichia coli投与で、膵にAIP様炎症と高γ-glob血症、抗lactoferrin抗体、抗carbonic anhydrase-II抗体の産生を来たす。これらのマウス血清中でヒトIgG4に相当するマウスIgG1が上昇する。この E. coli 投与マウスをドナーとし、その脾細胞を RAG2-/-マウスに移入すると、レシピエントのRAG2-/-マウス膵にAIP様炎症が生じ、浸潤細胞はCD3優位でドナー由来細胞であった。このE. coli 投与マウスでは、唾液腺・涙腺・腎臓などにも細胞浸潤を来す個体が出現する。これらに基づきAIPの病因となり得るE. coliの病原因子を調べている。E. coli外膜のlysateを2次元電気泳動し、これをトランスファーしてE. coli又はPBS投与マウスの血清と反応させ、E. coli投与マウスの血清のみと反応したスポットを切り出してTOF/MS で解析した。スポットは複数個検出され、これらに関して病原因子の候補の特定を行った。この菌体外成分に関してリコンビナント蛋白を作成し、マウスに前述と同様の投与実験を行い、AIP様の膵病変と抗体産生をみた。これらのリコンビナント蛋白とヒトAIP、AIP以外の膵疾患、膵臓疾患freeコントロール群の各血清を用いてELISAを行った。AIP 患者血清は、膵癌患者や健常人に比べ優位にE. coli-FliC 蛋白と高反応性を示す傾向が見られた。現在この病原因子候補蛋白の抗体を作製し更なる解析を進めると共に、AIPの新たな診断マーカーになり得る可能性等の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、平成24年度のTOF/MS解析等の結果より明らかとなった細菌の菌体成分由来で病原因子となり得る可能性のある候補である、E. coli由来のFliCの検討を中心に研究を進めていった。具体的には、このFliCに関してN末、C末、hyperviable domainなどのリコンビナント蛋白を作成し、これらのリコンビナント蛋白を用いて、マウスに前述と同様の投与実験を行い、AIP様の膵組織所見と抗体産生が生じるかを検討している。まだ、pathogenic domainを決定するには至っていないが、順次プロセスを検討している。また、これらのリコンビナント蛋白を抗原として倫理委員会で承認を得て、ヒトの臨床検体で検討を行い、AIP 患者血清がこのリコンビナント蛋白と高反応性を示す傾向が見られ、マウスの実験で得られた結果が臨床にフィードバックできる可能性が示唆された。 更に、IgG4-RDでは膵外、多臓器の病変が見られている。本 E. coli 投与モデルにおいても、唾液腺に加え、涙腺、腎臓などに変化を来す可能性が示されており、今後、IgG4-RDに関連した膵外病変に関しても検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成25年度に作成したAIPの病原因子の候補であるFliCの更に細分化したリコンビナント蛋白を作成し、これらのリコンビナント蛋白に関して、膵病変の有無と自己抗体の産生を調べるとともに、自然免疫系の細胞と獲得免疫系の細胞のレギュレーション、サイトカインの産生などの、詳細な免疫学的検討を行っていく。 (2)リコンビナント蛋白を用いて分子擬態の可能性の検討を行い、自己抗原の存在の可能性を調べていく。 (3)新たな診断マーカーの開発の可能性を検討しさらなる臨床へのフィードバックができないか、平成25年度に報告した臨床倦怠を用いた検討に関して更に症例数を増やして詳細に検討していく。 (4)TOF/MS解析にて、E. coliの菌体外成分由来のAIPの病原因子の候補の可能性のある蛋白を少なくとも1つ絞りこむことができた。今後、FliC以外ののスポットに関しても上記(1)から(3)の検討を行い、AIPの病態との関連を調べていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
支払に際し端数が生じ、物品の購入には不足する金額であったため、次年度に繰り越した。 in vivo解析のためのマウスの購入、組織学的検討や細胞表面マーカー解析のための各種モノクローナル抗体の購入、リコンビナント蛋白作製のための消耗品の購入、試薬・培養液の購入に使用する予定である。また、結果の発表、雑誌報告のための経費にも使用する。
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Research Products
(7 results)