2014 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫性膵炎の発症機序と、細菌が誘導する自然免疫賦活の関与の検討
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23590522
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
春田 郁子 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (80221513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 淳二 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70182300)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 自己免疫性膵炎(AIP) / 細菌 / 自然免疫 / IgG4関連疾患(IgG4-RD) / 自己抗原 / IgG4関連腎疾患(IgG4-RKD) / 自己抗体 / メモリーT細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
IgG4関連疾患(IgG4-RD)の膵病変である自己免疫性膵炎 (autoimmune pancreatitis:AIP) のモデルを作製し検討を行っている。我々の仮説はIgG4-RD発症に細菌由来物質が関与するというものである。C57BL/6 マウス腹腔内にEscherichia coliを投与するとAIPに近似した高IgG血症、ヒトIgG4に相当するマウスIgG1の上昇、自己抗体の産生などを来し、マウス血清でAIPで高頻度に見られる高IgE血症も観察された。 E. coli 投与マウスをドナーとして脾細胞をnaive RAG2-/-マウスに移入するとRAG2-/-マウス膵にAIP様炎症が生じ、浸潤細胞はCD3陽性ドナー由来細胞であった。このE. coli反復投与マウスの脾細胞から分離したCD4+T細胞をTCRβδ-/-マウスに移入するとレシピエントマウスにAIP様の膵病変を来した。E. coli 投与マウスはAIPと同じく、膵組織でCD4+Foxp3+T細胞の染色性が増し、病態にTregの関与が示唆された。膵の炎症部は高度の線維化を来しコラーゲン、ファイブロネクチン、TGFβなどの染色性が増加した。さらにE. coli 投与マウスで、IgG4-RDで炎症を来すことが報告されている唾液腺・涙腺・腎臓などに高頻度に炎症が生じた。現在AIPの病因となり得るE. coliの病原因子の特定を進めている。E. coli外膜のlysateを2次元電気泳動と、E. coli投与マウス血清を用いたwestern blotよりE. coli投与マウスの血清のみと反応したspotsを切り出してTOF/MS で解析しE. coliのFliCとの反応性を見出した。このFliCのリコンビナント蛋白(rFliC)を作製し前述と同様の投与実験を行い、AIP様の膵病変と自己抗体産生をみた。またAIP患者血清はrFliCに対して高反応性を示した。rFliCに関してN末, C末, hypervariable domainなどのタンパクを作製し病原因子の特定を行っている。並行してAIPにおける線維化の機序の検討を行い、一方、病態にアレルギー介在する可能性の検討、新たな診断システムの開発の可能性なども検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点では、pathogenic domainを確定するには至っていないが、pathogenic domeinの大まかな方向性が明らかになりつつあり、また、マウスで得られた結果に関して、本学の倫理委員会で承認を得て、ヒトの臨床検体で検討を行い、AIP 患者血清の反応性などを確認しつつ検討を進められており、マウスの実験で得られた結果が臨床にフィードバックできるよう検討しながら研究を進めることができている。 更に、IgG4-RDでは膵外、多臓器の病変が見られているが、本課題におけるマウスモデルで、IgG4-RDで病変を来す多臓器の障害も観察されており、かなり臨床像に近い結果が得られつつある。更に、線維化の機序の解明を探るべく予備実験にも着手開始することができ、これらを総合して、本研究はおおむね順調に進められていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成26年度に作成したAIPの病原因子の候補であるFliCのリコンビナント蛋白を更に細かくしたものを作成し、これらのリコンビナント蛋白に関して、膵病変と自己抗体の産生だけではなく、自然免疫系の細胞と獲得免疫系の細胞のレギュレーション、サイトカインの産生など、詳細な免疫学的検討を行っていく。 (2)FliC以外にも数種類のAIP血清で反応するspotsが認められている。これらに関しても、リコンビナント蛋白を作製し、FliCと同様の投与実験を行い、AIPの病態への関与を調べていく。 (3)リコンビナント蛋白を用いて分子擬態の可能性の検討を行い、自己抗原の可能性を調べていく。 (4)新たな診断マーカーの開発の可能性を検討しさらなる臨床へのフィードバックができないか、平成25年度に報告した臨床倦怠を用いた検討に関して更に症例数を増やして詳細に検討していく。
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Causes of Carryover |
IgEの測定などに関して、出費を極力避けるため、既存の市販のアッセイキットの購入を避け、各々単品で抗原、抗体などを購入して教室で、安価に測定可能なアッセイ系を構築した。また、免疫染色に用いる抗体も可能な範囲でサンプルを借りて行い経費を温存し、結果が得られる抗体などを絞っていった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由に記した如く、本年度の経費は可能な範囲でセーブしたが、その中から確立した測定系を用いて、最終年度である平成27年度はワークするアッセイ系で n= を増やして統計処理に値するサンプル数で測定を行い、結果を論文にまとめていく予定である。このため、平成26年度は安価にサンプルでしのいでいたが、本年度は大量のアッセイを行うため必要量を購入して行う予定である。また、線維化など新たな結果が出つつあるので、こちらに関しても、論文報告を目指して、ロジカルな結果が得られるよう、マウスの購入を追加して、in vivo実験を重ねていき、また、新たに抗体やサイトカインの測定に関連した品目を購入していく予定である。
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Research Products
(9 results)