2011 Fiscal Year Research-status Report
高病原性腸管出血性大腸菌を用いた病原性遺伝子群の発現制御の普遍性と特異性の解析
Project/Area Number |
23590528
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
伊豫田 淳 国立感染症研究所, 細菌第一部, 主任研究官 (70300928)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 腸管出血性大腸菌 / LEE |
Research Abstract |
大腸菌の実験室株(K-12由来株)にも共通に存在する大腸菌のコールドショック蛋白質の一つであるCspEは、低コピープラスミドを用いて構成的に発現させると、腸管出血性大腸菌O157の病原性因子の一つである3型蛋白質分泌装置(locus of enterocyte effacement: LEEにコードされている)の発現が顕著に抑制されることが我々の解析から明らかとなっていた。LEE外部にコードされ、LEE遺伝子発現のマスター・レギュレーターをコードしているpchA,B,Cの転写発現におけるCspEの作用を解析したところ、CspEを低コピープラスミドで構成的に発現させるとpchAの転写が顕著に低下する一方、pchBとpchCの転写はほとんど変動がなかった。次に、cspEの欠失株を構築したところ、野生株と比較してpchAの転写上昇が確認されたことから、CspEはpchAの転写またはその上流に存在する遺伝子を介してLEEの発現を制御していることが明らかとなった。CspE以外のCsp(CspA, C, D, E, G, H)についてマルチコピー効果を同様に解析したところ、少なくともCspCがCspEと同様にLEEの発現制御を行っていることが明らかとなった。 本研究課題と密接に関連した発現制御機構として、LEEの発現に影響を及ぼす制御遺伝子の機能解析を行う必要が生じた。これらの解析から、LEE内部にコードされる発現制御因子Lerと、LEE外部にコードされる発現制御因子LrhAがそれぞれ独立に、LEEと協調的に発現上昇が起こる病原性因子の一つであるエンテロヘモリシンの活性を制御していることが明らかとなった(Iyoda et al., 2011)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
LEEの発現に影響を及ぼす制御遺伝子の機能解析を行う必要が生じた。これらの解析から、LEE内部にコードされる発現制御因子Lerと、LEE外部にコードされる発現制御因子LrhAがそれぞれ独立に、エンテロヘモリシンの活性(LEEと協調的に発現上昇が起こる病原性因子の一つ)を制御していることが明らかとなり、この内容を論文としてまとめることに多くの時間を割いた。従って、当所の計画からはやや遅れているが、計画に収載出来なかった重要な発現制御機構の一端を明らかにすることが出来たと評価出来る。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度論文としてまとめた内容(Iyoda et al., 2011)をさらに発展させた解析を行う予定である。具体的には、LEEの遺伝子発現制御における負のフィードバック制御に関して、現在解析中の内容を優先的に進める予定である。この研究内容は当研究課題に密接に関連したLEEの発現制御の解明に非常に重要であることと、他の研究グループとの激しい競合が予想されていることから、本論文作成に必要なデータの取得を優先させる。その結果、当初の研究計画が予定通り進まない可能性もあるがやむを得ないと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究費は適切に執行済みであり、端数の6,241円のみを次年度へ繰り越すだけである。この額について特に説明はない。この額を足した次年度の研究費のうち、ほとんどは物品費として使用する。その他、研究代表者の国内出張旅費、研究協力者への出張旅費、謝金および振込費等を計上する予定である。
|