2012 Fiscal Year Research-status Report
高病原性腸管出血性大腸菌を用いた病原性遺伝子群の発現制御の普遍性と特異性の解析
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23590528
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
伊豫田 淳 国立感染症研究所, 細菌第一部, 主任研究官 (70300928)
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Keywords | 腸管出血性大腸菌 / LEE / 発現制御 |
Research Abstract |
腸管出血性大腸菌として国内で最も分離頻度の高い血清型であるO157:H7のうち、1999-2012年までに分離された300株以上のHUS発症者由来株をPFGEで型別を行い、271株の異なるPFGE型のHUS由来株を抽出した。これらの株を無症状由来の異なるPFGE型を持つ388株と比較したところ、HUS由来株に有意にクレード8(近年、高病原性のO157:H7として着目されている系統)株の多いことが明らかとなり、これらの解析結果は統計学的にも有意となった。今後、我々の研究から明らかとなってきた病原性遺伝子について、これらの高病原性株における発現レベルの解析を行う予定である。 大腸菌実験室株(K-12株)とO157:H7 Sakai株のゲノム配列のin sillico解析から、Sakai株に特異的に存在する非翻訳RNAをいくつか同定した。このうちのうちの1つ(srRNA #41)を構成的に発現させると、LEEの発現が顕著に低下する一方、べん毛の発現が著しく上昇することが明らかとなった。今年度はLEE側の標的遺伝子の解析を行い、LEEの発現制御因子をコードするlerの転写がsrRNA #41の構成的な発現によって低下することを明らかにした。一方、べん毛側の標的遺伝子としてはsrRNA #41の構成的な発現によってべん毛のマスターオペロンであるflhDの転写が上昇するが、その下流のクラス2べん毛遺伝子群の転写発現への影響がより顕著であったことから、標的遺伝子について再度検討する必要性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
O157:H7の高病原性系統株(クレード8)が国内のHUS発症者由来株(2012年の株を含む)に有意に多いことを明らかに出来たが、これらの株における新規病原性遺伝子の同定に向けて必要な情報となる、病原性遺伝子群の発現制御機構の解明には未だ多くの未解決点が残されている。 srRNAのLEEの発現制御に関しては標的遺伝子を特定することが出来たが、べん毛発現制御における標的遺伝子については結論が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
高病原性O157:H7の系統と考えられるクレード8において、高病原性の原因を解明するためには、既知の病原性関連遺伝子群の発現レベルを解析することと、既知の発現制御下にある新規病原性関連遺伝子群の同定およびその発現レベル解析が必要である。高病原性株で新規病原性関連遺伝子群の同定を行うためにはゲノム解析が必須であるが、今年度中には達成は困難であると予想される。そこで、ゲノム解析が終了しているO157:H7 Sakai株をモデルとし、これまでに明らかとなっている発現制御因子の制御下に存在する遺伝子の網羅的解析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マイクロアレイによる発現解析:約150万円 成果発表(論文、学会):約15万円 その他(書籍代、印刷代等):約9万円 消耗品:約150万円
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