2011 Fiscal Year Research-status Report
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23590542
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒須 剛 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (70432432)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | デングウイルス / 振興・再興感染症 / マウスモデル / フラビウイルス |
Research Abstract |
本研究では、デングウイルス感染のマウスモデルを開発することを目標としている。これまで2型及び4型デングウイルスprM-Eを含むデングウイルス/日本脳炎キメラマウスの作成に成功した。デングウイルスはマウス細胞ではType I IFNによって増殖を抑制される一方、キメラウイルスは数日間にわたる高いウイルス産生を確認した。マウス由来の初代細胞でもキメラウイルスは高い増殖性を示し、FACS解析から単球・マクロファージが標的細胞であることを確認した。ヒト感染における標的細胞も単球・マクロファージが中心と考えられており、マウスでも同様の細胞を標的にすることを確認する重要な知見と考えられる。しかし、キメラウイルスは野生型マウスでは、現在のところ致死性を示していない。この点は各種KOマウスとの併用により原因を究明する。 よりウイルスが増殖しやすいマウスを作成するため、IFN-a/b/gレセプターKOマウスを作成した。今後ウイルス増殖性の確認を行っていく。さらにデングウイルス感染において重要と考えられる、抑制性FcレセプターKOマウス及び欠損マウスを導入し、繁殖中である。 日本脳炎ウイルス由来非構造タンパク質NS5は、マウス細胞においてデングウイルス産生を増強することをこれまで確認している。デングウイルスNS5と日本脳炎ウイルスNS5を用い、組換えキメラNS5タンパク質発現プラスミドを用い、日本脳炎ウイルスNS5 N末端が重要であることを確認した。さらに日本脳炎ウイルスNS5と結合する宿主因子の探索を行うため免疫沈降を行い、いくつかの宿主因子との相互作用を確認した。今後、機能的な意義について確認を行う。 加えて興味深い観察は、長い経代を経たウイルス実験室株と臨床分離ウイルス株ではマウス細胞におけるIFN誘導能に違いがあったことである。キメラウイルスを用いて解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの2型デングウイルス感染性クローンに加え、約100倍の増殖性を示す4型デングウイルスからも感染性クローンを構築した。これらは今後の研究展開において、かなりのアドバンテージになると考えられる。さらに作成した2株の日本脳炎ウイルスと組み合わせて、感染性キメラウイルスクローンの作成にも成功している。現在までに、さまざまなデザインのキメラウイルスでの増殖性の情報を得ている。デングウイルスが増殖できないマウス培養細胞及びマウス由来単核球で高い増殖性を示すキメラウイルスも得ている。この点に関しては、「マウス細胞で増殖するウイルスを作成する」という初めのステップをクリアーしたと考えられる。 ただしマウス個体における増殖性・病原性は確認中であり、今後、培養細胞とマウス生体での違いを、KOマウスを用いながら解析することで解明できると考えられる。IFNレセプターのダブルノックアウトマウスの作成に成功していて、繁殖も成功してきている。H23年度はマウス生体を用いた解析に多少の遅れが生じたが、KOマウスの準備を整えることに成功したので、今後の研究の展開が飛躍的に進むと考えられる。総合的に考慮すると順調に進行している。 加えて予測していなかったウイルスの臨床分離株と実験室株とのIFN誘導能が異なる現象を確認した。キメラウイルスを用いた解析からある程度の責任部位が判明している。予想外の観察であるが、病態を理解しモデル系を開発するために重要な観察と考えられる。本研究の進行に方向性を与える鍵になる知見を得たと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.マウス培養細胞で良く増殖するキメラマウスを用いて、野生型マウス、各種KOマウスにおける増殖性の違いを確認する。各種臓器からウイルスRNAの量を定量する。さらに色素を用いてデングウイルス感染症の特徴的な症状である出血を伴う出血を確認する。2.デングウイルス実験室株と日本脳炎ウイルスではマウスIFN抑制能が異なることを観察していたが、これらに加えて臨床分離株と臨床分離株由来のキメラウイルスはIFN誘導において日本脳炎ウイルスとは異なっていることを確認した。このことは臨床的な観点からも重要と考えられる。ヒト細胞で同様な現象が観察されるか確認し詳細な機序を解明するため、両者におけるIFN誘導能の差異を規定する要因を明らかにする。このためにE領域のキメラウイルスのシリーズを作成し、ウイルスの細胞局在を確認する。ウイルスRNAによる差異なのか、ウイルスが複製する段階での差異かをreal-time PCR、RNAトランスフェクションで確認する。3.治療効果を試験する系に使用可能か検討する。キメラウイルスは抗デングウイルスエンベロープ(E)遺伝子を含む。抗E抗体を用いて感染増殖が抑えられるかを確認することで、治療法の検討及びワクチン検定に有効な系であるか確認する。4.日本脳炎ウイルスNS5に結合するマウス特異的宿主因子について、免疫沈降法により同定した因子の中から自然免疫に関連する因子を選択し、免疫沈降により相互作用を再確認し、遺伝子ノックダウンを用いて機能解析を行う。この結果は組み換えウイルスの構築及びマウス個体での実験に反映させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
クローニング及び細胞培養、インターフェロン関連試薬を購入するために使用する。H23年度はKOマウスを使用した実験に多少の遅れがあったため、H23年度に一部の研究費を残した。しかし、H24年度はKOマウスの準備が整い、マウス実験のための費用が増大すると考えられる。研究費はマウスを用いた実験に必要な道具類、試薬及び抗体の購入に使用する。特にウイルス検出にリアルタイムPCRを多用するため、H23年度から繰り越した研究費はH24年度の解析費用とする。またマウスを用いた解析では、ウイルス感染の標的細胞を同定するために、フローサイトメトリーによる解析も頻繁に行い、解析のための抗体購入に使用する。 NS5に結合するマウス特異的な因子の解析を続けるため、マススペクトルによる解析、因子の同定のための発現プラスミド作成、抗体及びsiRNAの購入を行う。また研究費は、これまでの成果を発表するための学会及び研究会参加にも使用する。論文を準備中であるため、英文校正及び投稿料にも使用する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Role of platelet apoptosis and apoptotic platelet clearance in thrombocytopenia in secondary dengue virus infections2012
Author(s)
Alonzo MTG, Lacuesta TLV., Dimaano EM., Kurosu T., Suarez LC., Mapua CA., Akeda Y., Matias RR., Kuter DJ., Nagata S., Natividad FF., Oishi K.
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Journal Title
J Infect Dis.
Volume: 205
Pages: 1321-1329
DOI
Peer Reviewed
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