2011 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス感染に対する生体防御機構およびアポトーシス誘導機構の解明
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23590559
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮崎 忠昭 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (60272431)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ウイルス / アポトーシス / インターフェロン / TNF / CLIPR-59 / SIVA1 |
Research Abstract |
我々は、マウスに致死性のインフルエンザAウイルスを感染させると、肺胞上皮細胞に著しくアポトーシスが誘導されること、また、アポトーシス誘導シグナルにDAP3(Nat.Immunol.2001,JBC 2004,FASEB J.2007)が重要であることを明らかにした。さらに、ウイルス感染後のインターフェロン誘導に重要なIPS-1 にDAP3が会合し、アポトーシス誘導に重要であることを示した(Cell Death and Differ.2009)。その後、インフルエンザウイルスのポリメラーゼPB2がIPS-1に会合しインターフェロン産生経路を特異的に阻害することを発見した(JBC 2010)。 最近、我々は、ウイルスのPB2に会合する宿主因子としてSIVA1を同定し、ウイルス感染後のアポトーシス誘導に重要であることを明らかにした(JGV 2011)。また、RIG-Iに会合しインターフェロン誘導に関わる新規分子ZAPSを同定し、ウイルス増殖抑制に重要であることを明らかにした(Nat.Immunol.2011)。 今回、我々は、CLIPR-59という分子がTNFRに会合することを発見し、TNFa刺激後、この分子はTNFRから離脱しComplex IIの形成に関わり、ユビキチン化制御分子CYLDと会合することを見出した(Cell Death and Disease 2012)。さらに、CLIPR-59はRIP1のユビキチン化制御によりCaspase-8を活性化し、TNFaによるアポトーシス誘導を促進することを明らかにした。 以上、インフルエンザウイルス感染後、肺細胞にアポトーシスを誘導する分子を明らかにし、これらの分子が病態形成に関与していることを示した。今後、これらシグナル分子の阻害剤はウイルス感染後の病態の重篤化を抑制し、効果的なインフルエンザ治療へ応用されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、現在までに、マウスにインフルエンザウイルスを感染させ、肺細胞で発現が誘導される遺伝子を探索した結果、TNFaを含むいくつかのアポトーシス誘導関連分子を同定し、これらの遺伝子発現がウイルス感染後の病態形成および症状の重篤化に重要であることを明らかにした。TNFRを含むデスレセプターのシグナルを阻害するとウイルス感染後のマウス生存率を上昇させることも示した(特許出願済み)。 これまでに、TNFaによるアポトーシス誘導には細胞内シグナル分子DAP3が重要な働きをすることが示されているが、DAP3はTNFRには会合せず、現在のところ、TNFRに会合してシグナルを伝達する分子はTRADD以外報告されていない。 そこで、我々は、TNFRに直接会合しTNFaのアポトーシスシグナルを伝達する分子をyeast two hybrid法により探索した。その結果、CLIPR-59という分子がTNFRに会合することを発見したため、その機能と役割を解析した。CLIPR-59は、TNFa刺激後、TNFRから離脱しComplex IIの形成に関わり、ユビキチン化を制御する分子CYLDと会合することを見出した(Cell Death and Disease 2012)。 さらに、CLIPR-59はこれらの分子と会合することによりRIP1のユビキチン化を制御すること、また、これらのComplexを形成することにより、Caspase-8を活性化し、TNFaによるアポトーシス誘導を促進することを示した。これらの分子のユビキチン-プロテアソーム経路を介したタンパク質レベルでの発現制御がCLIPR-59の機能制御に重要であると考えられる。これらの成果より、CLIPR-59はTNFaの新たなアポトーシス誘導分子であることが示され、その分子標的阻害剤はインフルエンザ治療に応用できる可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、インフルエンザウイルス感染後の病態形成に関わるアポトーシス制御分子の機能と役割を解明し、インフルエンザの効果的な予防・治療への応用に役立てる。また、ウイルス感染によるインターフェロンの産生誘導機構と産生されたインターフェロンによるアポトーシス誘導分子の制御機構を明らかにする。最初に、ウイルス感染後に発現変化が認められたアポトーシス制御遺伝子のノックアウトマウスあるいは遺伝子変異マウスを用いて、ウイルス感染後の生存率変化および病態を解析し、それらの分子の重要性と機能および役割を調べる。次に、インフルエンザウイルスの感染後、産生されたインターフェロンによる肺細胞でのアポトーシス制御分子の発現機構および免疫細胞の機能制御機構を解析する。ウイルス感染により産生されるインターフェロンがウイルス増殖抑制のみならず、免疫細胞の機能制御や病態形成にどのように機能するかを明らかにする。そのために、インターフェロンのシグナル伝達経路が阻害された遺伝子ノックアウトマウスを用いて、ウイルス感染後の免疫細胞の機能制御機構、ウイルス増殖抑制機構および病態形成における制御分子の機能と役割を調べる。また、これまでにインフルエンザウイルスのポリメラーゼPB2に会合する分子として、抗体アレイ法により同定したアポトーシス誘導分子SIVA1の機能と役割を調べるために、SIVA1がTNFRなどデスレセプターを含めどのようなアポトーシス誘導シグナルを制御するかを調べる。さらに、SIVA1の細胞内会合分子を同定し、caspase3,7,8,9やNF-kBを含めた下流のシグナル伝達系の制御機構を明らかにする。SIVA1に対するsiRNAを用いて肺細胞や免疫系細胞で発現を抑制し、どのようなシグナル伝達経路に影響を与えるかを評価し、SIVA1によるウイルス感染後のアポトーシス制御機構を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
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Research Products
(21 results)