2011 Fiscal Year Research-status Report
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23590561
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Research Institution | Central Institute for Experimental Animals |
Principal Investigator |
高橋 武司 公益財団法人実験動物中央研究所, 実験動物研究部, 研究員 (80335215)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ヒト化マウス / HLA-DR / IgG |
Research Abstract |
超免疫不全NOGマウス生体内にヒト機能的免疫系を再構築するために、ヒトクラスII HLA-DR0405遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを作製した。さらにマウスクラスII I-Ab遺伝子を欠損させ、HLA-DR4 I-AKO NOG(NOG/DR4/I-AKO)を樹立した。ヒトHLA-DRの発現分布はマウスクラスII分子と一致しており、胸腺上皮においても発現が検出できた。このマウスにHLAハプロタイプ適合、不適合の血液幹細胞を移植してヒト化し、マウス内に構築されたヒト免疫系の特性を解析した。ハプロタイプ一致マウスでは不一致マウスに対してCD4+T細胞の数が移植早期において優位に増加しており、時間とともにエフェクターメモリー様のCD4+ T細胞が急速に増加していた。 すなわち、CD4+T細胞のホメオスタシスがハプロタイプ適合、不適合群間では異なる制御を受けていることが明らかになった。CD8+T細胞の数、また、B細胞の数および分化程度はハプロタイプ適合、不適合で優位差はなかった。ハプロタイプ適合ヒト化マウスを外来抗原で免疫したところ、血清中に有意な抗原特異的IgGの産生が認められ、ハプロタイプ不適合群では抗原特異的IgGの産生は認められなかった。これらのことからHLA-DRの導入によりヒトT細胞にHLA拘束性が賦与され、機能的獲得免疫系が部分的に再構築可能であることが明らかとなった。今後このトランスジェニックマウスを利用したヒト化マウスを用いてヒトT細胞機能の研究、治療薬の開発が進展すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はHLA-DR/I-AbKO/NOGマウスを作製し、HLA-DRハプロタイプが適合した血液幹細胞を移植することにより、マウス生体内で機能的なヒト液性免疫反応を惹起させることである。本ヒト化マウスを外来抗原で免疫することによりIgG産生の誘導に成功したことから、免疫系ヒト化マウスプロジェクトにおける大きな目標の一つであった、ヒト機能的獲得免疫系の再構築を果たしたと言える。したがって研究目的は順調に達成していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
HLA-DRtg NOGの結果をもとに以下の課題に取り組む1)GM-CSF/IL-3tgNOGと交配しダブルトランスジェニックマウスを作製する。GM/IL-3tg NOGのヒト化マウスではヒトミエロイド系細胞の発生が亢進し、マスト細胞から実験的にヒスタミン放出反応を惹起できる。HLA-DRtgとの交配により得られるダブルtgマウスを用い、抗原特異的IgE産生を惹起し、ヒトアレルギー反応の再現に取り組みたい。2)HLA-DR0405拘束性ヒトT細胞クローン(βラクトグロブリンペプチド特異的)からTCRを単離し、レンチウイルスベクターを用いて血液幹細胞に導入し、これをHLA-DRtgNOGマウスに移植する。トランスジェニックTCRを発現するT細胞の分化の後、βラクトグロブリンで免疫しヒトT細胞の基本的な免疫特性(活性化能、分裂能、サイトカイン産生能など)を検討する。3)NOGマウスは胸腺の発達が極めて悪く、ヒトT細胞のホメオスタシスに悪影響を与えている可能性がある。胸腺上皮でサイクリンD1を発現するtgマウスは胸腺上皮が過形成を起こすことから胸腺T細胞の数が増加する。このTgマウスをNOG背景に戻し(CyD1tgNOG)、ヒトT細胞産生の亢進、ホメオスタシス改善が可能か検討する。4)ヒト化マウスではB細胞濾胞構造が認められず、B細胞の分化も停滞している。ヒトB細胞とマウス濾胞樹状細胞(FDC)間の相互作用が不十分である可能性を考え、ヒトB細胞に依らずマウスFDCが発達するような遺伝子改変NOGマウスを作製し、B細胞の分化、B細胞反応への影響を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
HLA-DRtgマウスを用いた実験に必要な試薬が年度を超えた発注になるために次年度に繰り越して使用することにした。次年度研究費と合わせて1)~4)までの研究課題に取り組む予定で主に計画1)~3)に中心的に取り組む予定である。
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Research Products
(3 results)