2011 Fiscal Year Research-status Report
Inflammasome形成に関わるASCの多面的機能の解析
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23590566
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
谷口 俊一郎 信州大学, 医学系研究科, 教授 (60117166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
肥田 重明 信州大学, 医学系研究科, 准教授 (10345762)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ASC / inflammasome / 細胞死 / がん / 炎症 / 分子相互作用 / 細胞増殖制御 / 免疫監視機構 |
Research Abstract |
ASCと相互作用する標的蛋白質をプロテオミクス手法で予備的に検索同定した。候補分子群のデータを基に、炎症、細胞死などに関連する蛋白質に焦点を合わせ、ASCの多面的機能と分子機構を明らかにする目的で研究を行い、下記の成果を得た。1)ASCを発現しないヒト線維芽細胞HT1080にASCを過剰発現させると、細胞増殖能、コロニー形成能が低下することを観察した。興味深いことに、他分子との相互作用候補部位の変異体を複数作製したところ、ある変異体はASCあるいはそれ以上の細胞増殖抑制、細胞死誘導効果を示した。このことは、ASCがその変異体の有する部位を介した未知の作用機序によって増殖抑制あるいは細胞死誘導機能に関与していることを示唆する。2)上記結果を基に、細胞増殖阻害を示したASC変異体を用いて、この変異体に結合する分子の検索を新たに行い、免疫沈澱、電気泳動、質量分析の手法を用いて、あらたに数個の結合候補分子を得た。3)当初のinflammasome解析でASC結合候補蛋白質について、試験管内での直接の結合を試みたが、直接の結合を示す分子はまだ見出していない。従って免疫沈降で得た結合候補分子は何らかの分子を介してASCと結合していると考えられた。4)当初の解析でASCとの特異的相互作用の再現性が確認されたアクチン結合蛋白質については、そのshRNAによるノックダウンやその分子の過剰発現実験からその分子がIL-1β産生制御に関わることを認めた。その生理的意義や細胞依存性について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に示した計画に対応する実験は下記に示すように着実に進捗した。ただし、論文発表に至っていないという点で概ねの進捗と評価した。(1)ASCとの相互作用を試験管内で候補リコンビナント蛋白質を作製し、ASCとの直接反応を試験管内で観察する。これについては、数種の蛋白質について実際実験を試み、上記実績報告報告にあるように、限られた反応条件下であるが、直接の強い相互作用を見出すことはできないという結論を得ている。(2)タグをつけたASC結合候補蛋白質の発現ベクター、および異なるタグをつけたASC相互作用候補蛋白質の発現ベクターを種々の細胞に強制発現し、免疫沈降にで共沈を認めた。(3)候補蛋白質に対応するsiRNAあるいはshRNAを用いてノックダウンの実験を行い、ASCスペックが形成するか否か,caspase1の活性化が生じるか、IL-1βの産生などに影響が出るか否かを観察したが、候補蛋白質のうちアクチン結合蛋白質は再現性を持って影響をもたらすことを認めた。(4)候補蛋白質のうちアクチン結合蛋白質のひとつは明らかに細胞内でも形成されるASCスペックにおいて共存し、その候補蛋白質の発現の有無はIL-1β産生に影響することを確かめた。(5)相互作用するために必要な部位決定をするためにASC変異体を作製してその機能を観察したところ、カスペース1活性化には直接関係ない部位が細胞増殖に対して極めて強い阻害効果を示した。この点は想定外の興味ある成果として位置付けられるが、まだ論文発表まで至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ASCはinflammasome形成の中心的メディエターであることは国際的に樹立された。現在は、inflammasomeの種々疾病への関与、他機能への関与、シグナル伝達詳細の解析、inflammasome形成を誘導する病原体の受容体特異性決定などに研究の流れはシフトし新たな進展を始めた。新規コンセプトとしてはpyroptosisというカスペース1の活性化後にカスペース7の活性化をもたらし細胞死を誘導するという機構にASCが関与することが注目されている。ASCを発見した我々はASCに焦点を合わせ、その周辺でどの様な分子が相互作用し、どの様な細胞機能に関わるのか、inflammasomeやpyroptosisに着目しつつ、ASC関与の分子機構を解明する姿勢で研究を推進したい。 この際、ASCは炎症、細胞死制御に関与することから、inflammasomeの解析もそうであるが、機能が多面的であることは解析法を困難にする。従って、例えば、発ガンに関する実験は局所、同時に宿主の免疫監視機構と区別できる系で機能解析を行なう必要がある。1)ASCの炎症サイトカイン産生以外でどの様な機能に関わるか、がん細胞におけるASCの過剰発現、ノックダウンでその増殖制御への影響を観察したことを基盤として、分子機構を解明するために、相互作用する分子の検索・同定を続ける。相互作用が間接的である場合も、ASCの変異体を用いるなど、相互作用の責任部位を決めつつ、介在する蛋白質の探索を試みる。2)宿主レベルでASC欠失による大腸がん発生あるいは進展抑制の現象を観察しているが、その抑制の本質が腸上皮にあるのか、免疫監視機構細胞にあるのかを区別して解析するために、コンディショナルノックアウトマウスあるいはASC欠失マウスの骨髄移植実験などの系を用いて詰めの実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在進行中の研究進展として、ASCと間接的に相互作用するアクチン結合蛋白質のサイトカイン産生制御の機序解明と介在する分子の検索・同定、ASCがコンフルエント状態の培養細胞の細胞死を誘導する機序解明とその際ASCと相互作用する相手分子の検索・同定、そしてASC欠失による大腸がん進展の抑制の機序解明が次年度の目的である。そのために必要な費用は、従来に即した消耗品費で研究遂行は可能であり、コンディショナルノックアウトマウスなどの作製には他研究者から共同研究で供与されることになっており費用は発生しない。物品費(消耗品費) 900,000円旅費 (学会参加旅費) 150,000円その他(論文投稿費、動物飼育費等) 150,000円
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Research Products
(5 results)