2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590567
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
緒方 正人 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60224094)
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Keywords | 慢性炎症 / MAPキナーゼ / 血液細胞 / 代謝症候群 / p38 / 遺伝子改変マウス |
Research Abstract |
近年慢性炎症は、成人病を含むさまざまな疾患の原因や増悪因子と考えられるようになっている。代謝症候群で重視される肥満は、脂肪組織の慢性炎症を誘導するが、そこにp38alpha MAPキナーゼ(MAPK)経路がどう係るかは明らかでない。 そこでp38alpha遺伝子をTie2-Creトランスジェニックマウスで血球特異的に変異(機能喪失)させたコンディショナルノックアウトマウスを作成・解析してきた。既に肥満時の脂肪組織へのM1様マクロファージ(F4/80+, CD11c+)浸潤と脂肪組織の炎症性サイトカインの遺伝子発現が大きく低下することを見出しているが、今年度は、肥満時に脂肪組織に浸潤したM1様マクロファージをフローサイトメーターで分取し、各種遺伝子発現を検討した。MCP-1, IL-6, IL-1betaなどの炎症性サイトカイン遺伝子発現は大きな変化は見出さなかったが、CCR2やCCR5などのケモカイン受容体遺伝子発現が大きく低下していた。よってp38 alpha MAPK経路は、M1様マクロファージにおいて、主に脂肪組織への集積を介して脂肪組織の慢性炎症を制御していると考えられた。また、p38alphaコンディショナルノックアウトマウスでは、肥満による脂肪肝が軽減されることを見出し、血球系細胞と肝細胞の相互作用も今後さらに検討する。 CD11c陽性細胞の機能解析のためCD11c-Creトランスジェニックマウスを用いたノックアウトマウスを作成し解析を開始した。このマウスに高脂肪食を与えたところ、体重増加が抑制されるという予備的結果を得、今後慢性炎症等に対する影響を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Tie2-Creトランスジェニックマウスを利用して作成した血球系特異的なp38alphaコンディショナルノックアウトマウスに高脂肪食を投与した際、脂肪組織に浸潤したM1様マクロファージ(F4/80+, CD11c+)と炎症性サイトカイン遺伝子発現がともに減少することは既に見出していた。即ち、肥満による脂肪組織の慢性炎症の促進にp38alpha MAPキナーゼ経路が関わることは明らかにできたが、その分子機構は明らかではなかった。今回、M1様マクロファージでケモカイン受容体の遺伝子発現が低下していることを明らかにでき、それがM1様マクロファージの浸潤低下とそれに引き続く炎症の低減につながる可能性を示すことができた。 また、新たに脂肪肝の低減を見出した。この結果は、血球系細胞のp38alpha MAPキナーゼ経路が肝細胞の脂質代謝に影響を及ぼすことを示すものであり、血球系細胞と肝細胞の間に新たな相互作用が存在する可能性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Tie2-Creトランスジェニックマウスを利用して作成した血球特異的なp38alphaコンディショナルノックアウトマウスに高脂肪食を投与した際の浸潤細胞の性質について、ソーティングなどを行い引き続き解析するとともに、CD11c陽性細胞の機能解析のためCD11c-Creトランスジェニックマウスを用いて作成したノックアウトマウスに高脂肪食を与えた際の慢性炎症状態や耐糖能の変化などをを検討する。 Tie2-Creマウスでは広汎な血球系細胞と血管内皮において遺伝子変異を生じるが、CD11c-Creマウスの場合は遺伝子変異がCD11c陽性細胞に限定されるため、両者を比較することで代謝症候群に関わる細胞集団の機能的差異などをより詳細に解析可能となる。 さらに、血球系細胞でp38alpha遺伝子をコンディショナルノックアウトすることにより血球系細胞以外の脂肪細胞や肝細胞にも変化(アディポネクチン産生量や脂肪肝)が生じることを見出しており、血球系細胞とこれらの細胞との相互作用についても検討する。手始めとして、脂肪細胞や肝に特異的な遺伝子発現変化や、肝の脂質代謝関連遺伝子発現を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費 1,000,000円(実験用試薬、プラスチック器具、マウス等の購入費、マウス飼育経費など) 旅費 100,000円(研究発表および研究打ち合わせ用) 謝金 100,000円(外国語論文の校閲等) その他 100,000円(研究成果投稿料等) 以上、計1,300,000円
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Research Products
(5 results)