2011 Fiscal Year Research-status Report
結核菌感染におけるIL-17A依存性成熟肉芽腫形成の分子メカニズム解析
Project/Area Number |
23590571
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
梅村 正幸 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教 (90359985)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 吾朗 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (30229455)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 結核菌 / IL-17A / TCR γδ T細胞 / 肺 / 肉芽腫 |
Research Abstract |
結核菌が感染した肺ではマクロファージが結核菌を貪食すると同時に、その周囲にそのマクロファージを中心とした初期の肉芽腫の骨格が形成される。その後、結核菌抗原を特異的に認識するTh1細胞が肉芽腫に組み込まれ、IFN-γによるマクロファージの活性化により結核菌増殖を抑制する成熟肉芽腫が形成される。しかし、初期肉芽腫から成熟肉芽腫への分化および成熟・維持メカニズムについては不明な点が多い。近年注目されている炎症性サイトカインであるinterleukin(IL)-17Aが結核菌感染における肉芽腫の成熟と維持に必須であることを見出した。これを手掛かりに、結核菌感染により誘導される成熟肉芽腫の形成及び維持に関与する分子メカニズムの解明を試みた。肉芽腫形成の過程にIL-17Aがどのように関与するのか、結核感染予防に用いられる弱毒生ワクチン株Mycobacterium bovis bcillus Calmette-Guerin (BCG)を感染させた正常マウス及びIL-17A KOマウスの肺組織から経時的に細胞接着分子および単球走化性因子の発現を比較した。その結果、感染早期において、ICAM-1及びLFA-1の発現が正常マウスに比べIL-17A KOマウスで有意に低いことが認められた。これらの発現増強にIL-17A産生TCR γδ型T細胞が直接的に関与しているのか解析したところ、正常マウス由来のTCR γδ型T細胞の混合培養でのみ細胞接着分子の発現増強が認められた。さらに、この細胞接着分子の発現増強にはCD40Lが関与することも明らかにした。以上の結果から、TCR γδ型T細胞から産生されるIL-17Aが細胞表面に発現するCD40Lを介した細胞間相互作用と共同して、細胞接着分子ICAM-1及びLFA-1の発現を誘導し、迅速に感染局所での肉芽腫形成を誘導する役割を担っていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初期肉芽腫から成熟肉芽腫への移行時期の肺組織からRNAを調整し、野生型とIL-17A KOマウス間で遺伝子発現プロファイルを次世代シーケンサーを用いたSOLiD SAGEシステム解析により比較し、SOLiD SAGEシステム解析により両マウス間で発現レベルの異なる遺伝子候補を検索し、そのうち肉芽腫形成に関与する遺伝子については、リアルタイムRT-PCR法を用いて再現実験を試みる予定であったが、SOLiD SAGEシステム解析の再現性がとれず、条件設定を模索していたため、研究の遂行が若干遅延している感じではあるが、挽回可能な遅れと理解している。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、M. bovis BCGおよび結核菌感染肺に分布するIL-17A産生細胞の約半数をTCR γδ型T細胞が占めているが、その他の細胞については詳細な解析がされていない。そこで、すでに肉芽腫が形成される感染28日の感染肺に分布するIL-17A産生細胞の亜集団をフローサイトメトリーで同定する。次いで、上記の検討で明らかとなったIL-17A産生細胞亜集団の肉芽腫内分布を解析することにより、その肉芽腫形成への関与の可能性を検討する。ここでは、免疫組織および共焦点スキャニングレーザー顕微鏡を用いて病理組織学的な解析を中心に検索を行う。 ついで、M. bovis BCG感染により誘導される分子(MCP-1、LFA-1、ICAM-1 など)がIL-17A KOマウスで発現低下することを見出している。IL-17A欠損状態で発現が変化する遺伝子のプロファイルを決定するために、結核菌を肺感染したIL-17A KOマウスと感染野生型マウスの発現する遺伝子の違いをDNAマイクロアレイ解析で検討する。その結果から発現の違いが認められた遺伝子について、real-time RT-PCR法で発現の違いを再確認し、さらにそれらの分子の肉芽腫内の局在を病理組織的に確認する。発現の認められたものは、その分子に対する抗体を入手又は作成し、in vivoでの中和による肉芽腫形成の変化を指標に、肉芽腫形成への関与を確定する。また、Th1型免疫誘導に関与することが機能的に推定される分子については、その分子のIL-17A KOマウスへの投与によるTh1型免疫応答の変動を指標に、あるいはその分子に対する中和抗体を、野生型マウスに投与した際のTh1 型免疫誘導の低下を指標に、Th1型免疫誘導への関与を確定する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、P3レベルのヒト型結核菌を用いる為、結核菌を不活化させた状態でないとP3実験室からの持ち出しが出来ない。ある特定の表現型を示す細胞をPCR 用や培養用にするにはP3実験室内で分離過程を踏まなければならないため、P3実験室専用の磁気細胞分離装置が必要になる。小型で安全キャビネット内に収めることができ、実験従事者への感染防止にも繋がる機器を選定する。消耗品費として、1)マウス(飼育管理費を含む):マウスからの細胞分離・同定、in vivoあるいはin vitro 感染実験、培養アッセイ、免疫実験にマウスは必須である。2)血清・培地類:in vitro 感染、分離細胞の培養、ハイブリドーマや細胞株の培養等に必要である。3)Real-time PCR試薬:Real-time PCR で必要となる逆転写酵素、Taq polymerase、Primer やTaqMan Probe作製費用を積算した。4)各種抗体:in vitroでの中和試験用や磁気細胞分離用、フローサイトメトリー解析用、Western blotting用など様々な免疫実験に必須である。5)組織切片作製試薬類:組織の病態形成や構成細胞の解析、タンパクレベルでのエフェクター分子の発現確認等、パラフィン切片・凍結切片が必要になる。6)ディスポータブル・プラスチック類:本研究はP3レベルの研究であるため、全てディスポータブル製品である必要性がある。7)その他の試薬類:一般試薬の溶液、電気泳動用ゲルなどを作製する際に必要である。HE染色やギムザ染色、Z-N染色、CBB染色等の試薬購入する。旅費として、国内学会での研究成果発表を年間最低2回、海外での研究成果発表を年間1 回と想定した。謝金は、本研究が計画通り、進めば論文を投稿する。その論文校正費にあてる。
|
-
[Journal Article] Interleukin-17A is involved in enhancement of tumor progression in murine intestine.2011
Author(s)
Oshiro, K., Kohama, H., Umemura, M., Uyttenhove, C., Inagaki-Ohara, K., Arakawa, T., Harada, M., Nakae, S., Iwakura, Y., Nishimaki, T. and Matsuzaki, G.
-
Journal Title
Immunobiology
Volume: 217
Pages: 54-60
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-