2012 Fiscal Year Research-status Report
結核菌感染におけるIL-17A依存性成熟肉芽腫形成の分子メカニズム解析
Project/Area Number |
23590571
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
梅村 正幸 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (90359985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 吾朗 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (30229455)
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Keywords | 結核菌 / IL-17A / 肺 / 肉芽腫 |
Research Abstract |
これまでにMycobacterium bovis bacillus Calmette‐Guerin (BCG)感染により誘導される分子(MCP-1、LFA-1、ICAM-1 など)がIL-17A遺伝子欠損 (KO) マウスで発現低下することを見出している。IL-17A 欠損状態で発現が変化する遺伝子のプロファイルを決定するために、結核菌を肺感染したIL-17A KO マウスと感染野生型マウスの発現する遺伝子の違いをDNAマイクロアレイ解析で検討し、その結果から発現の違いが認められた遺伝子について、real-time RT-PCR 法で発現の違いを再確認した。IL-17A KOマウスを用いたDNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析の結果より、BCG感染局所へのエフェクター細胞の動員に関与するケモカインレセプターとして、CCR5、CCR8、CCR9、CXCR6などがIL-17A依存的に発現上昇していることを明らかにした。また、エフェクター細胞が局所に速やかに浸潤するには、コラーゲンをはじめとする細胞周辺の細胞外基質の分解が必要であり、それにはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が関与してくる。このMMPの発現を野生型マウスとIL-17A KOマウスのBCG感染後の変動を比較した結果、MMP-2やMMP-9の活性化誘導に関与するするMMP-13の発現レベルの上昇が野生型マウスの感染肺では認められたが、IL-17A KOマウスでは変化がみられなかった。一方、肺組織の組織病理所見の比較では、肉芽腫の形成不全がIL-17A KOマウスで認められた。さらに、エフェクターT細胞の走化性に関与するケモカインとしてCXCL9/MIG、CXCL10/IP10、CXCL11/I-TACなどの発現もIL-17A依存的である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度までに、結核菌を肺感染したIL-17A KO マウスと感染野生型マウスの発現する遺伝子の違いをDNAマイクロアレイ解析で検討し、その結果から発現の違いが認められた遺伝子について、real-time RT-PCR 法で発現の違いを再確認し、さらにそれらの分子の肉芽腫内の局在を病理組織的に確認する予定であった。マイクロアレイによる解析を行い、発現レベルの相違を検討するところまでは比較的予定通りの遂行状況であったが、病理組織学的解析までは手技的に安定せず、再現性が得られていない。また、発現増加の認められたものに関しては、その分子に対する抗体を入手し、in vivo での中和による肉芽腫形成の変化を指標に、肉芽腫形成への関与を確定するところまで進んでおらず、現時点では「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、遅延している研究を早急に進めることが必要である。今年度は、DNAマイクロアレイ解析により結核菌感染させた野生型マウスとIL-17A KOマウスとの間の感染肺で発現レベルの異なる遺伝子候補を詳細に分析し、そのうち肉芽腫形成に関与する遺伝子については再現性を得る。さらに、特にIL-17A依存性成熟肉芽腫形成・維持に関与する分子を同定するため、以下の実験を行う。候補遺伝子産物が細胞表面あるいは分泌タンパクである場合は、それを特異的に認識する中和抗体を結核菌感染した野生型マウスに投与し、経時的に肺組織での肉芽腫形成過程(HE染色)を追跡する。 さらに、今回の解析過程において、IL-17Aと非常にアミノ酸レベルでの相同性の高いIL-17Fの発現およびその局在性に興味深い結果が得られたので、IL-17A KOマウスに加え、IL-17F KOマウスの結核菌肺感染モデルを用いて解析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、P3レベルのヒト型結核菌を用いる為、結核菌を不活化させた状態でないとP3実験室からの持ち出しが出来ない。特に病理組織学的解析するには実験従事者への感染防止を考慮しなければならないため、P3実験室専用の安全キャビネット内に収納できる少額機器および消耗品(試薬を含む)を選定し、購入する予定である。また、DNAマイクロアレイ解析を外部機関に委託すると高額になるため、新たに共同研究体制を組み、自らがCyanine3のラベル化、ハイブリダイゼーション、スキャニングを行うことにより役務費を減らし、DNAマイクロアレイ解析の再現実験用の試薬・消耗品に重点を置こうと考えている。 次年度は本研究の最終年度になるため、研究成果を学会で発表し、論文投稿にまで進める。その際の旅費ならびに論文投稿費(校正費も含む)も予算内で算出する予定である。
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