2011 Fiscal Year Research-status Report
TLR5活性化におけるLRRCTドメイン2量体化の役割の解明
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23590572
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
魚住 尚紀 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (70313096)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 免疫学 / 炎症 / 自然免疫受容体 |
Research Abstract |
1.LRRCTドメイン構造機能相関 マウスTLR5、TLR4/5キメラ受容体のホ乳類細胞一過性発現系を構築し、リガンド応答、ならびに自発的活性化を検出する実験系を構築した。TLR5一過性発現系を、LRRCTドメインに対する点変異体に対して適応し、アラニン置換体V597A, Y627Aについて、リガンド結合変異体であるD293A, E365Aと同等の用量反応曲線右方変位を示すことを見いだした。近傍アミノ酸残基N599, M626の変異体はリガンド反応特性に影響がなく、V597とY627の部位特異性が示された。この知見は、TLR5 LRRCTドメイン中の特定アミノ酸残基がマウスTLR5において、機能上重要であることを示唆している。種間保存性や、他のTLRとの比較を元に、V597, Y627の組み合わせ点変異体の系統的構築をすすめ、側鎖構造と受容体機能の連関を解析する準備をととのえた。2.P751H変異体、TLR4/5キメラ受容体を利用した分子間相互作用解析 マウスTLR5 P751H点変異体は、マウスTLR4 P712H変異と同様ドミナントネガティブ形質を持ち、この形質は、LRRCTドメインを必要とする。これは、マウスTLR5においてLRRCTドメインが受容体分子間相互作用に関与することを示唆する知見である。人工分子であるLRRドメイン欠失キメラ受容体の自発的活性化能を利用した測定系を構築し、細胞レベルでの分子間相互作用解析を実施した。その結果、マウスTLR5 LRRCTドメインによる2量体化は、マウスTLR4のTIRドメイン自発的活性可能を抑制する方向に働くことが示唆された。TLR5のTIRドメインが自発的活性可能を示さないことも明らかになった。これらの知見は、TLR4とTLR5の受容体機能制御において、LRRCTドメインが異なる分子機能をもつ可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画に記した1.LRRCTドメイン構造機能相関、2.P751H変異体、TLR4/5キメラ受容体を利用した分子間相互作用解析に関しては、精力的に実験を実施した結果、本研究課題「TLR5活性化におけるLRRCTドメイン2量体化の役割の解明」を遂行するための計画におおむね合致した進展を遂げることができた。さらに、マウスTLR4が、TIRドメイン自発的活性化能を有し、その制御はTLR5の活性化と異なる機序によることを示唆する予備的データも得られており、本研究課題が発展的にTLR4活性化機序の解明に展開する手がかりとなることが示されつつある。この点で、おおむね順調な伸展であると判断される。 平成24年1月より埼玉医科大学医学部生化学教室に異動したため、実験系の再セットアップをおこなうことが必要となった。実験に一時中断時期があり、また、実験系の移築に労力を取られたが、年度末までに細胞生物学的測定をおこなえる用意が整い、これまでの実験と一貫性のある結果が得られる状況にあることを確認することができた。引き続いて研究を進展させてゆくことができる状況にある。平成23年度終盤に組換えLRRCTドメインタンパク質の小・中規模発現実験に着手する予定であったが、異動に伴う諸手続等により、次年度前半に時期をずらせて実施することとした。この発現実験は、当初より、年度の終盤に実施する予定で実験計画をたてており、研究の達成度として遅延と判断される状況にはないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.LRRCTドメイン組換えタンパク質を用いた生化学的解析 組換えLRRCTドメインタンパク質は、生化学的結合解析のみならず、細胞レベル、個体レベルでの実験での使用も視野に入れている。LRRCTドメインは2組のジスルフィド結合を有し、ホ乳類細胞発現系を用いることを第1選択としている。予備的発現実験を行った後、規模を拡大して培養を実施する計画であり、数十マイクログラム相当の精製品を複数種類、取得する計画にしている。野生型タンパク質のみならず、点変異を導入した組換えタンパク質の作出も、必要に応じて、小・中規模で追加することになると想定している。分子間相互作用の生化学的解析は、96穴プラスチックプレートを用いた、ELISAに準じた方法と、表面プラズモン共鳴による解析(Biacore)を実施する計画である。2.LRRCTドメイン組換えタンパク質を用いた細胞生物学、動物実験 組換えLRRCTドメインタンパク質は、細胞膜上に発現したTLR分子と結合し、TLR分子の2量体化を阻害できる可能性がある。細胞やマウスに投与し、TLRシグナルがどのように影響されるかを検討する。まず、培養細胞系や、腹腔マクロファージなど初代培養細胞を用いた細胞レベルでの実験を積み重ねる。その上で、マウスを用いた炎症モデル実験へと進む計画である。3.LRRCTドメイン結合分子スクリーニング系の構築 LRRCTドメインを実用上の標的にするためには、LRRCTドメインに特異的結合して、TLR 情報伝達を阻害する分子の取得が重要である。キメラ受容体自発的活性化が実施上簡便に検出できることを利して、受容体活性化阻害物質スクリーニング系を構築する。マウス血清、炎症性浸出液等を精製材料とした物質同定、化合物ライブラリーを対象とした検索の準備をととのえる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、in virtoでの生化学・分子生物学的実験や細胞生物学的実験を多用して、遂行される。培養細胞に対するトランスフェクション試薬、細胞の反応量を定量するヒトIL-8 ELISA、研究上必要とされる試薬、細胞培養液、プラスチック製消耗品が主たる支出となる状況は、昨年度と同様である。実験条件・手順の工夫を重ね、節約に努める一方で、実験の品質・分量を確保して本研究を計画通りに達成できるようにする。異動に伴う実験の一時中断により本年度実施できなかった実験のための予算98,331円については、平成24年度に消耗品の予算として使用する計画である。 組換えタンパク質産生においては、予備的な小・中規模発現実験までは、研究室内で実行予定である。動物への投与実験にも使用可能な、高純度組換えタンパク質の調製に当たっては、機械設備導入が不必要な範囲で収量の確保が可能であれば、自前で実行するが、それが困難であると判断される場合には、外部委託生産も検討する。 国内、海外での学会における発表を、情報発信と第一線情報を収集する目的で実施する計画にしている。国内では、生化学会での発表、海外では、Keystone Symposiumでの発表を予定しており、そのための予算計上を考えている。
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