2012 Fiscal Year Research-status Report
アレルギー感受性を規定するIgE産生B細胞の分子制御機構と細胞動態の解明
Project/Area Number |
23590573
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
小林 隆志 大分大学, 医学部, 教授 (30380520)
|
Keywords | アレルギー / B細胞 / シグナル伝達 / 可視化 / IgE |
Research Abstract |
本研究は、アレルギー感受性を規定するIgE産生B細胞の機能制御を担う分子機構とその細胞動態の解明を目的とする。機能制御に関しては、前年度までの解析によって、サイトカインシグナルの抑制因子であるSOCS1がB細胞で欠損するとマウス個体内でIgE 産生が上昇することがわかった。当該年度では、このモデルマウスのアレルギー感受性をあげるために、マウスの遺伝的背景をC57BL6系統からアレルギー感受性の高いBALB/c系統へ戻し交配によって置換した(N12世代以上)。この遺伝的背景におけるB細胞特異的SOCS1欠損マウスのIgEレベルを測定したところ、C57BL6系統の遺伝的背景よりもさらに高いIgEレベルを認めた。この新たなモデルマウスに抗原感作を行い、アレルギー感受性を検証したところ、鼻炎モデルの実験系において病態の悪化を認めた。従って、BALB/c系統の遺伝的背景でB細胞特異的にSOCS1が欠損すると、よりアレルギー感受性の高いモデルになることが明らかになった。また、SOCS3Tgマウスの戻し交配も完了し(N12世代以上)、遺伝的背景を完全にBALB/cに置換した。一方、IgE産生B細胞の動態解析に関する研究では、前年度に、IgE抗体へのクラススイッチが起きると蛍光・化学発光タンパク質が発現するDNAコンストラクトをES細胞に導入して、PCR検定で陽性を示す候補細胞株を4クローン樹立しているが、当該年度では、相同組換えを検証するために遺伝子配列を解析したところ、少なくとも2クローンは確実に相同組換えを起こしていることが示された。この変異ES細胞を用いてキメラマウスの作製を試みたが、当該年度ではES細胞の寄与率の高いキメラマウスは得られなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、研究機関の異動(慶應義塾大学から大分大学へ研究室を移転)のため、研究開始当初の予定から若干の遅れが生じた。研究室の引越しと新たな研究機関での研究室の立ち上げにかなりの時間を消費してしまった。研究室の引越の際、マウスコロニーも一旦縮小したため、アレルギーの解析実験に用いる遺伝子改変マウスの匹数が不足し、必要数を確保できるようになるまでに時間を要した。しかし、年度の途中から順調にマウスの数が増加し、これまで通り実験ができる体制が整えられた。IgE産生B細胞の動態を可視化する新規レポーターマウスの作製についても、ES細胞寄与率の高いキメラマウスが期待どおりに得られなかったことから、再度キメラマウスを作製する必要が生じた。当該年度で、大分大学に発生工学関連の設備を整えたので、次年度以降のキメラマウス作製が可能になった。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究室移転のため当初の予定より研究が遅れてしまったが、平成24年度に発生工学関連の設備を新たな研究機関に設置し稼働させたので、平成25年度では、Cε遺伝子座の非翻訳領域にIRES-tdTomato-Luciferase2遺伝子をノックインした変異ES細胞を用いて再びキメラマウスの作製に取り組む。得られたキメラマウスのES細胞寄与率が低いようであれば、ES細胞株を変えて新たに遺伝子導入し直すことも視野に入れて実験を進める。ES細胞寄与率の高いキメラマウスが得られれば、それからレポーターマウスを樹立して、実際にIgEへのクラススイッチが起きるとB細胞で蛍光・化学発光タンパク質の発現が起きるのか検証する。そのためにB細胞特異的SOCS1欠損マウスとレポーターマウスをかけ合わせる。また、皮膚に抗原を塗布することによって誘導されるIgE産生をレポーターマウスで可視化できるか検証する。 B細胞の機能制御の解析については、SOCS1欠損によるIgG2cの産生上昇がIL-4によって抑制されるのかどうか検討し、異なるサイトカインによる抗体産生の相互抑制機構にSOCS1が関与しているのか検証する。また、当該年度に樹立したBALB/c系統の遺伝的背景をもつB細胞特異的SOCS1欠損マウスやSOCS3Tgマウスのアレルギー感受性について次年度に気道炎症モデル、皮膚アナフィラキシーモデルおよび鼻炎モデルで検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額の発生は、効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。平成25年度では、レポーターマウス樹立のためのキメラマウス作製で、ES細胞の培養等に用いる培地、血清類に300千円、キメラマウス作製の際に用いる胚盤胞(ブラストシスト)供給用のマウス購入費に300千円使用する予定である。また、プラスチック製品に200千円、液性因子類、抗体類に300千円、その他試薬類に300千円、マウスの飼育や系統維持にかかる経費に300千円使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)