2011 Fiscal Year Research-status Report
BCRとBAFF-RからのB細胞生存シグナルによる成熟B細胞分化決定機構の解明
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23590575
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐々木 義輝 独立行政法人理化学研究所, 幹細胞研究グループ, 研究員 (80323004)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | B細胞 / シグナル伝達 / 遺伝子改変マウス |
Research Abstract |
成熟B細胞の生存はBAFF-RとBCRという2種類の受容体からNF-κB経路とPI3キナーゼ経路という異なった2種類の経路によって制御されている。しかしこれらの経路は、B2, B1, MZ B細胞という3種類存在する成熟B細胞への分化の方向決定にも重要な役割を担っている。そこで本研究課題 ではBCRとBAFF-Rからの生存シグナルの成熟B細胞の分化決定における役割を解析した。PI3キナーゼ下流のどの分子がB細胞の分化決定に重要な役割を担っているか明らかにするために、活性化型PI3キナーゼ及びPI3キナーゼの下流において活性化される分子Akt、MEK1の活性化型変異体を誘導的に発現可能なトランスジェニックマウスの作製を行った。CD19はBCR刺激によるPI3キナーゼの活性化に関与するBCRの共受容体のであり、そのノックアウトマウスにおいてはMZ B細胞、B1細胞共に欠損している。そこでこれらのトランスジェニックマウスをCD19ノックアウトマウスと交配し、どのPI3キナーゼ下流分子の活性化がCD19欠損マウスにおいてMZ B細胞やB1細胞発生を回復できるか検討を行った。予想通り、CD19欠損B細胞においてPI3キナーゼそのものを活性化させた場合にはMZ B細胞、B1細胞両方ともその発生の回復が認められた。一方PI3キナーゼ下流分子については、MEK1の活性化ではCD19を欠損するMZ B細胞、B1細胞共に回復が認められなかったが、Akt1の活性化ではCD19を欠損するB1細胞のみ回復が認められた。これらの結果はPI3キナーゼの下流においてB1細胞の発生にはAkt1の活性化が重要であり、MZ B細胞の発生にはAkt1では無い他の経路が重要であるかもしくはAkt1に加えて別の分子の活性化も必要である可能性を意味している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題 ではBCRとBAFF-Rからの生存シグナルの成熟B細胞の分化決定における役割の解明を目的としているが、平成23年度においては、BCRからの生存シグナルとして機能するPI3キナーゼ経路の分子の中でAktがB1細胞の分化に重要であることを発見した。このように初年度においてすでに成熟B細胞の分化方向の決定に重要な経路を同定したことから研究をおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度においてはBCRからの生存シグナルとして機能するPI3キナーゼ経路の分子の中でAktがB1細胞の分化に重要であることを発見した。平成24年度においてはMZ B細胞の発生に重要なPI3キナーゼ下流の分子の同定を試みる。さらにMZ B細胞の発生にはBAFF-Rからのシグナルも重要であり、非古典的NF-κB経路がその機能を担っていることが知られている。そこでMZ B細胞の発生に重要な機能を持つ非古典的NF-κB経路の標的遺伝子の同定を行う。方法としてはすでに作製済みであるB細胞特異的なp52NF-κB2トランスジェニックマウス(B-p52NF-κB2 Tgマウス)からMZ B細胞を精製後、抗p52抗体を用いてChIP on Chipを行いMZ B細胞においてp52NF-κB2が結合する染色体領域を同定する。また、野生型マウス及びB-p52NF-κB2 Tgマウス由来のMZ B細胞からRNAを調整後DNA arrayによってその発現を比較することでp52NF-κB2 の発現によって変化の見られる遺伝子を検索する。ChIP on Chipで結合が認められ、DNA arrayにおいて発現に差が見られた遺伝子をMZ B細胞におけるp52NF-κB2 の直接の標的と考え、その機能を解析することでMZ B細胞の発生に重要な機能を持つ非古典的NF-κB経路の標的遺伝子の同定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度においては、研究室にすでに存在していた試薬等を使用すること等の工夫により1,332,709円を次年度以降に繰り越すことが出来た。平成24年度に請求する1,200,000円と合わせた合計は2,532,709円となるが以下のような使用計画を立てている。物品費:2,097,079円、旅費:28,630円、その他407,000円
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Research Products
(1 results)