2012 Fiscal Year Research-status Report
GISに組み込んだシステム・ダイナミクスによる医療環境の予測と可視化
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23590579
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小笠原 克彦 北海道大学, 大学院保健科学研究院, 教授 (90322859)
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Keywords | 医療環境 |
Research Abstract |
本研究は、地域毎の効率的な医療連携と医療資源の配置を検討するための基礎資料として、地図情報システムに制御工学・経営学で用いられているシステム・ダイナミクス(System Dynamics:SD)を組み込み、地域の医療環境に適応させた医師数など医療従事者数の将来予測を行い、患者および政策の観点から医療環境の変化に伴う疾患毎の患者動態・医療機関配置の可視化を地図上で試みるものである。 昨年度は、一昨年度の研究を発展させ、SDおよびジニ係数により、(1)日本全国での医師絶対数、(2)北海道内での地域偏在、(3)北海道内での診療科偏在について、将来の医師数を予測し、地図情報システム(GIS)により可視化を行った。 日本全体での医師絶対数を分析した研究では、全臨床医師数は2026年に充足し、各診療科における充足状態を予測した。その結果、絶対数の充足に対しては医学部定員増員が、診療科間の偏在是正に対しては診療科選択率の影響を明らかにした。北海道の二次医療圏毎の将来の絶対数・地域間偏在の評価を行った結果では、北海道全域においては2019年に医師絶対数が充足し、時間と共に地域偏在が改善される可能性があるが、2030年度においても地域偏在が解消されないことを示唆した。続いて、北海道の周産期医療体制・小児医療体制の医師確保体制に関する研究では、産科では2023年に絶対数が充足するが、長期において地域偏在が拡大することを予測した。また、小児科では2022年で絶対数が充足し地域偏在も改善傾向であるが、偏在の解消には至らないことを予測した。 この研究の結果、周産期医療・小児医療体制における医師の確保のためには、産科・小児科における地域偏在の解消が必要であるが、産科・小児科における現状の医師供給体制では医師絶対数が充足しても地域偏在は解消できないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(1)地図情報システムによる医療資源の可視化、(2)システムダイナミクスにより医療資源の予測、(3)地図情報システムとシステムダイナミクスの融合による予測モデルの構築、(4)構築した予測モデルによる医療資源の可視化、に分類される。 本年度は、一昨年度の研究結果(1)および(2)を発展させ、(3)を実施した。その研究結果は、一昨年度の研究結果に関して口演発表2件、和文論文(採択)1件、昨年度の研究結果として口演発表1件、英文論文(投稿中)1件であり、研究はおおむね順調に進展している考えられれる。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの達成度】に記載したとおり、本研究は、(1)地図情報システムによる医療資源の可視化、(2)システムダイナミクスにより医療資源の予測、(3)地図情報システムとシステムダイナミクスの融合による予測モデルの構築、(4)構築した予測モデルによ る医療資源の可視化、に分類される。 本年度は、最終年度として一昨年度の研究である「北海道における小児の医療施設へのアクセスの不平等性評価の試み」を発展させ、「北海道におけるベイズ補正標準化死亡比の可視化」など、医療環境の可視化を試みる予定である。更に、昨年度実施した(3)地図情報システムとシステムダイナミクスの融合による予測モデルの構築について、更に、発展させる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は地図データおよび医療環境に関するデータの購入等環境整備を行ったが、整備が順調に進んだため人件費等に未使用額が生じた。今年度は、平成24年度の未使用額を含め、地図情報システムの医療資源データの整備、および、成果発表のための旅費を中心に使用する予定である。
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