2011 Fiscal Year Research-status Report
地域における薬剤耐性菌の蔓延状況と急性期病院持ち込みに関する疫学研究
Project/Area Number |
23590604
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
安岡 彰 長崎大学, 大学病院, 教授 (80242113)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 病院感染 / 疥癬 / 2次感染 |
Research Abstract |
初年度は、疥癬の院内伝播事例が発生し感染伝播経路追跡の指標となるため、この伝播経路について調査研究を行った。発端者はA介護施設に入所していたが、脳血管障害・心不全を発症し、B病院へ入院した。状態が改善しないため当大学病院へ紹介転院となった。入院から4週間後には発赤疹と、特に夜間に強いかゆみを訴えていたが湿疹と診断され副腎皮質ステロイドホルモン外用が使用されていた。入院から8週が経過した段階で、発疹は強い落屑を伴う角化型となり、この時点で疥癬(角化型=ノルウェー疥癬)と診断され治療開始となった。 この時点で14名の患者が同室歴があり、46名の医療スタッフ(看護師、ヘルパー、クラーク、理学療法士)の接触歴があった。同室歴のある患者のうち6名が2ヶ月後までに疥癬と診断され治療を受けた。このうち、5名は退院後に自宅または他の医療機関2施設で発症し、他医療機関で疥癬と診断された。そのうち1名から家族1名にも感染した。また同室歴はないものの入院期間が重なった2名の患者が疥癬(またはその疑い)と診断された。 スタッフでは、病変部から疥癬虫が検出され確定診断となったものはみられなかったが、発疹から疥癬の疑いと考えられたのは、入院していた病棟の看護スタッフ15名であった。 最終的に発端者からの3次感染まで発生し、入院から9ヶ月後に終息と判断された。この事例では、介護施設で感染したと思われる疥癬が、病院を介して当院へ伝播し、当院で拡大して2次、3次感染者が他院および患者自宅への拡大を示した。病院単独ではこのような感染拡大は阻止できず、地域での感染対策の重要性と、拡大ルートについて示唆に富む事例であり、感染ルートの検証方法を確立することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
病院感染の拡大事例を解析し、その解析手法を確立することができた。東日本大震災の影響で、本年度整備されるはずであった実験室の整備が遅れ、実験室診断については十分行えなかったが、手法の確立と伝播経路を示唆する事例の解析についてはおおむね予定通りの研究進行となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
MRSAなどこれ以外の病院感染についても解析を開始しており、今後は地域病院の協力も依頼して研究を行っていきたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
MRSAの伝播状況の解析のための情報解析ソフトウエア、情報保管のための電子媒体、現況調査のための旅費、必要に応じて、菌の解析のための培地や試薬類。
|