2012 Fiscal Year Annual Research Report
地域における薬剤耐性菌の蔓延状況と急性期病院持ち込みに関する疫学研究
Project/Area Number |
23590604
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
安岡 彰 長崎大学, 大学病院, 教授 (80242113)
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Keywords | 病院感染 / 地域内伝播 / 薬剤耐性菌 / MRSA |
Research Abstract |
薬剤耐性菌の地域での伝播連携状況を知るために、本院で検出されたMRSA(Methicillin resistant Staphylococcus aureus )がどのようにして陽性化したのか、その患者の医療施設間の紹介状況と菌陽性の有無を検討した。2012年に本院でMRSAが検出された患者は279例で、そのうち入院中に検出されたのは209例(74.9%)で、この入院中検出症例で医療施設間の連携状況を調査した。 連携先となっていた医療施設は90施設に上り、地域のほとんどの病院とMRSAが陽性化した患者の紹介関係が発生していた。このうち紹介元の病院からMRSAが持ち込まれたと考えられた(持込)のは87例(41.6%)で、入院後の院内伝播と判定されたのが122例であった。MRSA陽性化した患者のうち死亡例が24例(死亡率11.5%)であった。退院した患者のうちMRSAの陰性化が確認または推定されたのは59例(退院患者の31.9%)のみで、持続陽性(保菌)のままとなったのが65例、菌陰性化不明が61例であった。菌陰性化が確認できない126例のうち、当院で菌が陽性となった(院内感染例)が66例、持込例のうち紹介元に戻らなかったのが21例で、当院を介してMRSAがさらに拡散された可能性が否定できないのは合計87例(MRSA陰性不確認例の69.0%、MRSA陽性入院例の41.6%)であった。特定の医療施設から多数のMRSA陽性例が紹介されるといった傾向は認められず、多くの医療施設間でMRSA陽性患者が相互に紹介されている状況が明らかとなった。 MRSAなどの耐性菌の制御には、特定医療施設の努力だけでは困難であり、今後危惧されるMDRP,VRE,MDRAなどの地域内拡大防止のためには、地域内での感染防止対策の病院間連携がきわめて重要であると考えられた。
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