2012 Fiscal Year Research-status Report
医学部におけるコミュニケーション教育の有効性と実施上の問題点に関する研究
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23590609
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
後藤 英司 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30153753)
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Keywords | 医学教育 / コミュニケーション |
Research Abstract |
医学部におけるコミュニケーション教育は多様なカリキュラムにより実施されている。しかし、どのような学習方略や評価(効果測定)が適切かは明らかではない。そこで、24年度は、学習目標に応じた学習方略や評価法等のモデルを探るために、コミュニケーションのモデルプログラムとして文部科学省のGP事業に採択された全国の医学部・医科大学のコミュニケーション教育の実施状況に関する調査(資料調査と聞き取り調査)を行った。 23年度の実績に基づき、学習目標は以下7つに分類し、各大学の実態に則した形式に調査票を修正した。(1)患者(家族を含む)医師関係、(2)医師集団におけるコミュニケーション、(3)職種連携、(4)医療現場に限定しないチームワーク、(5)患者に限定しない対人関係、(6)地域との人的交流、(7)医学・医療に関するサイエンスコミュニケーター育成。これらの学習目標に基づいたコミュニケーション教育の実態は、資料から把握するのは難しいため、聞き取り調査を行った。聞き取り調査は、文部科学省GPに採択された取組みうち採択数の多い大学の各取組の事業推進責任者および担当者を対象に行い、8大学19プログラムの聞き取りを行うことができた。 聞き取り調査の結果、GP事業として採択されたコミュニケーション教育プログラムの特徴として、(1)体験や経験を重視した学習方略を採用していること、また(2)各GP事業は学習方略の工夫、教材の開発、教育支援体制の構築、評価方法の模索等などの点おいて、わが国のコミュニケーション教育のモデルとなるような取組を行っているが、他大学の医学部に波及していない状況で成果が共有財として活用されていないことなどの実態が明らかとなった。以上の結果から、今後の調査の上で、重要な成果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は、医学部における多様なコミュニケーション教育を学習目標や方略や評価方法の観点から類型化し、各取組のメリット・デメリット、促進因子、阻害因子を明らかにすることである。 2年目にあたる24年度おいては、23年度の調査結果に基づいた調査票の修正および、聞き取り調査の実施に関する目標を達成することができた。また、8大学を対象とした聞き取り調査の実施により、当該目標である、類型化に向けての特徴を抽出することができた。 研究実施計画では、聞き取り調査に関して当初10~20大学を予定していたが、聞き取り調査の実施は8大学となった。聞き取りが実施できなかった大学に関しては、担当者の交代、退職等により適切な聞き取り対象者がいなかったことが原因である。 しかし、1校あたりのプログラム数(2~3)が多い大学を中心に聞き取りを行い、19プログラムの実態を明らかにすることができた。また資料調査の段階では明らかではなかった同様の文部科学省コミュニケーション教育プログラム(GP)の情報が得られる成果があった。今後の聞き取り調査の円滑な遂行という観点に立てば、24年度の聞き取り調査の意義は大きいと考えられ、本研究は「研究目的」の達成に向けて概ね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、24年度に引き続き、全国10~20大学の聞き取り調査(すでに調査を終えた10大学を除く)を実施する。この聞き取り調査により、資料から得ることができなかった具体的な情報を入手し、医学部におけるコミュニケーション教育カリキュラムの類型化データベースの確度の向上をめざす。 また、新規の聞き取り調査から優れたコミュニケーション教育の実践につながる外因(設置者の違い、実施体制、事務局の支援体制など)の検討、モデルとされるコミュニケーション教育のカリキュラムの探索、データベースの精緻化、学習目標による類型毎にコミュニケーション教育の促進因子、阻害因子に関する分析を進める。 加えて、本研究の成果を広く公表するために、第45回日本医学教育学会においてこれまでの研究成果を発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は、24年度に作成したデータベースの欠損部分を補完するために、コミュニケーション教育プログラムを実施している全国の医学部への聞き取り調査を進める。 このため、研究費の主たる使途は調査担当者の旅費および聞き取り対象者への謝金となる。 また聞き取り調査を効率よく実施するために、連携研究者に加えて研究協力者l名を聞き取り調査に参加させる。これに人件費が必要となる。 24年度は予定していた聞き取り調査の一部が実施できなかったため、聞き取り調査にかかる費用(協力者への謝金、調査にあたっての旅費、研究協力者の雇用等)を繰り越した。繰越金については、引き続き調査の費用に充て、また、24年度、25年度の聞き取り調査の結果を併せて分析するためにテープ起こし、および、聞き取り調査、資料分析のため人件費に使用する。 これに加えて、本申請内容の学会発表(第45回日本医学教育学会)の旅費および参加費にも充てる予定である。
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Research Products
(8 results)