2012 Fiscal Year Research-status Report
ナショナルデータベースを活用した予防・医療の平均余命・医療費への効果測定
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23590633
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
岡本 悦司 国立保健医療科学院, 医療・福祉サービス研究部, 上席主任研究官 (90247974)
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Keywords | レセプト / コホート分析 / 沖縄 / 平均余命 / 肝がん / インフルエンザ / 医療費 / プロペンシティスコア |
Research Abstract |
2011年度より研究利用が解禁されたナショナルデータベースへの申出を予定していたが,2011~12年度は試行期間とされデータ提供は厳しく制限され,たとえばプロペンシティスコア(傾向得点)法等の使用は認められなかった。ナショナルデータベースの研究利用の阻害要因である法的側面について統計法と行政機関個人情報保護法の視点から検証し薬剤疫学誌に掲載した。 そのようなため2年目においては市町村ならびに健康保険組合のデータを用いて糖尿病の疾病管理状況や特定保健指導の医療費への効果を測定した。糖尿病の疾病管理についてはレセプトを電子カルテのように表示させるレセプトカルテを開発した。またプロペンシティスコア(傾向得点)を用いて特定保健指導の介入の医療費への効果を評価する手法を健康保険組合の3年間のデータを用いて確立し,次年度中に学術誌に掲載見通しである。 生命表による平均余命の評価については,沖縄県男性の戦後の平均余命の延長の要因について,過去の人口動態統計を用いて検証し,1980年代にみられた沖縄県男性の平均余命の延長は大戦中の「選択的淘汰」による「見かけ」上の延長であることを明らかにした。 2009年の新型インフルエンザ流行による医療費膨張効果を全国健康保険協会のレセプトデータを用いて評価した。ただインフルエンザは平均余命への影響は小さく,将来的な年金財政等への影響は少ないと考えられた。 昭和ヒトケタ世代の寿命に大きく影響した肝がんについて,その罹患率と死亡率をコホート別にロジスティック曲線をあてはめることによって将来予測を行った。肝がんは罹患率でも死亡率でもコホートが下がるごとに急減しており,胃がんとともに将来の年金財政への影響大と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目に予定していた「糖尿病コントロールと合併症発生状況」について,千葉県東金市国民健康保険課の協力を得て,レセプトを個人単位に時系列的にあたかも電子カルテのように表示させるシステムをExcelパワーピボットを用いて構築した。これにより国保被保険者の中で糖尿病で治療中であるにもかかわらずコントロール不良(HbA1c>7%)者の割合,さらにそのうち合併症をすでに有している者,まだの者を可視化することが可能となった。これにより保険者は,どの患者に重点的に疾病管理を行うべきか,あたかも電子カルテを操作するように把握することができ,また合併発生の予防効果を測定できるようになった。 本成果は7月千葉市での日本糖尿病情報学会で報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
糖尿病情報学会での報告は同学会の学術雑誌に投稿する。 本研究で当初予定していたナショナルデータベースの研究利用は,リンケージが認められない,プロペンシティスコア(傾向得点)法が認められない等の制約のため当初2年間の試行研究期間中は利用が認められなかった。一方,国保データベース(KDB)が2013年10月より全国市町村に配備される予定であり,サンプルサイズは小さくても本研究課題の目的に活用可能性があることから,KDBを活用する可能性を検討してゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ入力委託費がやや見込みより少なくてすみ,1510円次年度に繰り越した。次年度でもデータ入力委託を予定しているが,入力データ量を適切に見積もることによりできるだけ支出予定額に合わせるように配慮する。
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Research Products
(6 results)